2019年6月8日(土) |
◇ |
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調布IC |
5:17 |
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中央自動車道 |
◇ |
勝沼IC |
6:12 |
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国道20号他 |
6:45 |
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裂石(丸川峠分岐) |
6:50 |
7:00 |
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千石茶屋 |
◇ |
8:30 |
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上日川峠 |
8:50 |
9:12 |
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福ちゃん荘 |
◇ |
10:00 |
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雷岩 |
10:35 |
10:42 |
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大菩薩嶺 |
◇ |
11:40 |
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丸川峠 |
11:55 |
13:20 |
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裂石 |
◇ |
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国道20号他
大菩薩の湯立寄り |
15:30 |
勝沼IC |
◇ |
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中央自動車道 |
16:35 |
高井戸IC |
◇ |
梅雨空だが、山梨県の予報は日差しもあるようなので出かけた。電車・バスを使わずマイカーでの大菩薩嶺である。
今日の予定は、上日川峠から唐松尾根を登って雷岩へ、という一般コース。そのあとは大菩薩峠経由で往路を戻るか、山頂を越えて丸川峠経由か、後で決めることにする。
登路の林道脇から展望が広がる [拡大]
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ブナをじっくり観察したいので、今回も裂石から登る。丸川コースとの分岐点に車を停める。周囲は霧深いが、雲海の下になっているようにも見えるので、早めに高度を上げたい。
千石茶屋を過ぎ登山口へ。いきなり樹林帯のジグザグの登りとなる。ここから登ると山頂までの標高差は1000mを超えるにしては、体力を使う登りではなく不思議と疲れを感じない。上日川峠まですがすがしい広葉樹の森が続く、ということもあるけど、やはり登山道がよく整備され、無理なルート取りがされていないからだろう。
山道とは不思議なもので、大した登りでもないのに疲れきってしまうようなところもあれば、このコースのように逆のパターンもある。昔から峠道として歩き継がれてきた大菩薩周辺の登山道は総じて歩きやすい。
山中はハルゼミの合唱である。途中まではミズナラやイヌブナの多い森で、ブナやトチノキは単独木で時々現れる。林床に花はない。かわいい双葉がいっぱい発芽しているが、ブナではなくイヌブナだろう。展望台では樹林の切れ間から青空がのぞき、やはり上部は晴れているとわかる。果たして雲海の高度はどれくらいか、それによって展望の度合いと、登山中の大気の状態(気温や湿度)が大きく変わってくる。雲海を抜け出せれば気持ちの良い山となる。
標高が1400m近くになるとミズナラもブナも大木が目立ってくる。「大菩薩のブナ林」と書かれたやまなしの森百選の看板も立つが、イヌブナもまだ多い。この登山道はイヌブナとブナが標高で棲み分けしていないように見える。他の山なら、イヌブナはだいたい標高1300mくらいまでで、それより上はブナとなる。
いったん舗装された林道に出て再び登山道へ。イヌブナは標高1500mの上日川峠まで分布していた。
峠で雲海は抜けきれず、まだ霧深い。登山者の車がたくさん停まっていた。やがて路線バスもやってきて峠周辺は結構な賑わいになる。
上日川峠のバス停の裏に盛り上がった部分があり、道がついているようなので少しだけ入ってみる。カラマツが主の変哲もない樹林帯だったが、この先にも尾根通しに踏み跡が続いていた。上日川峠の南側は大菩薩湖への遊歩道があるほか、日川尾根を歩いて源次郎岳へ行けるはずである。20年も歩いているのにまだこのエリアには足を踏み入れていない。そのうち探索してみたい。
峠に戻り、カラマツ林を歩いて福ちゃん荘から唐松尾根の登りに入る。低い笹の明瞭な尾根登りで、ミズナラやコハウチワカエデに混じってダケカンバ、モミなどが現れ、亜高山的な様相を呈してくる。大木ではないがブナもまだ見られる。自分が見たブナの中での最高標高(1720m)とタイ記録だ。
空模様は、思ったほど回復しない。時折り風で雲が流され青空も覗くのだが、まだ雲海を抜けきれていない。トウゴクミツバツツジが咲く。これもオシベが5本と10本の花が同じ木に咲いている。前後に登山者も増えてきた。急坂を経て雷岩へ。雲海の上に立つことはできなかったが、雲間から大菩薩湖や甲府方面の街並みが見下ろせる時間もあった。2000mともなるとさすがに肌寒く、岩棚の上で1枚はおる。
展望が期待できないので、稜線歩きはやめて丸川峠コースで下山することにした。大菩薩嶺の三角点を通過し、北面の黒木の斜面を下っていく。ここのコメツガ林もまた、やまなしの森百選のひとつとなっている。静かでしっとりとしたいい道である。木の枝を透かして緑鮮やかな山稜が見えるが、すぐに雲に隠される。
標高を下げていくと新緑から少し緑濃くなった広葉樹が増えてくる。ここで見られるハウチワカエデはみな葉柄が長のでコハウチワカエデであろう。展開し終わった葉であれば、葉柄が葉の2分の1以上あるならコハウチワに分類されるらしい。葉柄が長いのではなくて、葉そのものが相対的に少し小さいからそう見えるとも言える。しかしヒナウチワカエデという種もあるので、安易に分類はできない。
標高1736mと最高所記録を更新したブナを見つけた、と思ったら、ポツポツと来てしまった。もう丸川峠と目と鼻の先なので、雨具をつけずに一気に下る。しかし雨の降り方が急だったので、丸川峠の小屋に着いた頃はザックも服もかなり濡れてしまった。山で降られたのは久しぶりな気がする。小屋の前の木陰で雨具を着ているうち、雨は上がった。
丸川峠は広くはないものの、気持ち良い草原になっている。花が減ってしまって夏でも殺風景になってしまった気もするが、今日見た丸川峠はきれいに刈られた草原の上に数本の木がシンボリックに立っていて、絵画風なイメージになっていた。これはこれで美しい。雪が降るときれいかもしれない。
下山路に入る。始めのうちは小さい岩のゴロゴロした急坂で、さっきの雨で濡れており油断ならない。しかし、雨がそれまでのよどんだ空気を洗い流したのか、広葉樹の緑が一層鮮やかに見えた。しかもこの丸川峠コースは、登りの上日川コースよりもブナの大木が多く、見ごたえがある。「大菩薩のブナ林」の看板がこちらにあっても不思議ではない。
大菩薩嶺の登山は、上日川峠を起点とした往復または周回が今や当たり前になっているが、その下のやまなしの森百選を省略してしまうのはやはりもったいない。南関東・甲信の登山道の中でも広葉樹が豊かな森なのにもかかわらず、今日出会った登山者は行き帰りとも数人しかいなかった。
雨が降ったり止んだりする中標高を落としていく。沢の音が聞こえ、やがて登り口となる林道に下りる。車を停めた分岐点までは10分ほどだった。
大菩薩の湯に立ち寄っている間、外は土砂降りになった。今年の梅雨は久しぶりに長引きそうである。