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●富士山を道連れの南大菩薩縦走路
朝、ちょっと寝坊してしまい5時起床。小屋の寒暖計を見ると15度。爽やかで天気もよさそう。日が高くなる前に南大菩薩の草原を巡ろう。 6時過ぎに大蔵高丸頂上(1781m)に着く。目の前に大きく裾野を広げた富士山が鎮座している。この頂上でぜひ富士山を見てみたかったので、避難小屋泊して大正解だった。 そして甲府盆地は一面の雲海。長い黒壁のような南アルプスも見え、素晴らしい眺めにしばらく魅入る。 さらに破魔射場(ハマイバ)丸(1752m)へ向かう間の、マツムシソウを中心としたお花畑は今年も健在。しかし一昨年初めて見たときの強烈な印象と比べるとややおとなしい感じがしてしまうのは仕方のないところか。
朝が早いので笹に付いた朝露は半端なものではない。ずぶ濡れを通り越して、上半身から下半身までぐちょぐちょになり、まるで着衣のままプールにでも入って来たかのようだ。しかし一度笹原を脱してしばらく日の当たる斜面を歩いているうちに大方乾く。 天下石を過ぎると草原の稜線ともお別れ、樹林帯の行程となる。フシグロセンノウ、レンゲショウマがちらほらと現れる。 大谷ガ丸(1644m)への高度差100mの急登も、それほど長い距離ではなかった。 樹林に囲まれた頂上に着くと、昨日のテントの人がいた。なんでも武甲山を起点として、何ヶ月かかけて東京周辺の山を歩きつないでいるらしい。秩父・奥多摩・大菩薩・道志・丹沢を経て、最後は元旦に大山に登ると言う。 自分はそういう企画めいた登りはしたことはないのだが、そういうのも一度はやってみたいと思う。何といっても、次に行く山をどこにするか、ほとんど悩まなくて済むのがいい。 大谷ガ丸から少し戻って滝子山への道に入る。雑木からカラマツ林の下りとなり、すぐに平坦で歩きよい尾根が続く。先ほどまでの草原の稜線と比べて静かで心休まる道だ。 いったん鞍部に下り小ピークを越すあたりから下草が目立ち始める。道が見えなくなるほどだ。急坂を登るともう滝子山直下、笹子駅への分岐となる。笹子駅の方向は防火帯となっていて、そこはヨツバヒヨドリの大群落だ。下草もぼうぼうでジャングルのよう。 滝子山へは東側の山腹を登り、尾根上に上がってから5分ほどで頂上に着く。2000年1月以来、4年半ぶりの滝子山(1610m)だ。ここも頂上から富士山を見たいのだが、あいにくもやに霞んでいる。しかし今回はここが終着地。達成感に浸り、パンをかじってのんびりする。 富士山の反対側には今歩いてきた大蔵高丸・破魔射場丸・大谷ガ丸の稜線が遠く横たわっている。あんなところから3時間少しで来れるなんて、すごいことだ。
日も高くなり、山上はすでに灼熱の地へと変わっている。初狩駅への下山路を取る。桧平までは急坂が続くが、広葉樹林の美しい道だ。樹林下なのにハクサンフウロがかなり多く見られるのが珍しい。他にシモツケソウなども見られる。 アカマツが現れ、尾根分岐を過ぎるとヒノキ林となる。水場で上半身に水を浴びる。そこから沢沿いの道が暑く、長い。林道出合までまだかまだかと続く。 ようやく林道を過ぎ藤沢集落へ通じる舗装車道に入る。集落の水田には稲穂が鮮やかな緑色をつけている。 中央高速をくぐり、15分ほどの歩きで中央線の初狩駅に着く。線路を越えて八幡荘に入浴しに行く。温泉ではないが静かでゆっくりと昼間の湯に浸かる。入浴料1000円は高い気がするが、宿のご主人にジュースをご馳走になった。 盛夏の一泊山行は近場の山にしたが、存分に楽しめた。初狩駅から各停の中央線で帰路に着く。 |