|
●笹の海を越え白谷ガ丸、湯ノ沢峠へ
小金沢山の手前になると尾根はやせ、やや薄暗い針葉樹林帯に入る。急ではないが思いのほか長く、小金沢山になかなか着かない。道が斜度を失う頃、ようやく小金沢山頂上(2014m)となる。 東方はガスがかかり始めていて真っ白。それに直射日光が当たり焼けるような頂上だ。大菩薩嶺と同じ2000m峰なのに、日が高くなってしまっては、やはり高度はあまり関係なくなる。 一人、テントを担いだ人が頂上にいた。自分と同じコースで大蔵高丸に幕営する予定とのこと。避難小屋は混むかもしれないから、とテント持参と言うが、この平日にそんなに泊まる人はいるのだろうか。 小金沢山からの下りは思いがけずきれいに笹が刈られている。以前は道が見えないほどの笹原だったと思う。小金沢山の頂上に「秀麗富嶽十二景スタンプラリー」なる大月市の標が立てられていた。その関係で整備が入ったのかもしれない。 歩きよい道もいくたびかアップダウンを重ねるうちに、元の笹深い状態に戻ってきた。こんな日の高い時間になっても、日の当たらない北面は笹の露が服を濡らす。 牛奥ノ雁ガ腹摺山(1990m)・黒岳(1988m)を過ぎると一面がシシウドの群落。樹林帯を越えて白谷ガ丸頂上となる。 ここから先は再び草原状の尾根となり眺めが大きく開ける。雰囲気もガラッと変わりマツムシソウやハクサンフウロ、ノアザミ、マルバダケブキ、ワレモコウなど花の密度が濃くなる。トンボやアゲハも多く飛び交う。蝶の名前はわからないが何枚か写真に収める。
しかし同時にガスが出てくる。青空の下の花畑を撮影したかったのに残念。 鞍部に下るとヤナギランが数本咲いている。東側に踏み跡があり、その先の白ザレの小ピークまで辿ってみる。この付近も高山植物が多い。ヨツバヒヨドリやシシウドがいくつもの群落を作っている。
湯ノ沢峠まで、どんどん高度を落とす。視界がいくぶんよくなり、ガスの間から大蔵高丸のこんもりしたピークも見え出す。 標高1652mの湯ノ沢峠。林道に向かう方向に避難小屋が建っている。外見はみずぼらしいが中は大変きれいで整頓されており、布団も10組くらいある。念のためシュラフを持って来たがやはり必要なかった。特筆すべきは電気が通っていて、蛍光灯があることだ。
水場も1分のところにあり泊まりやすい避難小屋である。ただ残念なのはトイレがないこと。以前は駐車場に簡易トイレがあったような気もするのだが。 テントの人は大蔵高丸に登って行ったらしい。今夜の宿泊者は自分一人となった。 と思ったら、何と夜中の2時頃に1人やって来た。翌朝聞くと、夕方4時に初狩駅を出発し夜通し縦走してきたとのこと。 しかも、初めは避難小屋は休憩するだけのつもりで、そのまま大菩薩嶺まで歩き通そうと思っていたらしい。目の前に布団を見て寝てしまったとのことだ。 この暑いさなかに大菩薩の縦走をしようとする人は、やはりどこか一癖も二癖もあるタイプの登山者なのだなと思う。(自分がそうと言っているわけではないが) |