タイトル
横手駒ヶ岳神社-七丈小屋-甲斐駒ヶ岳-北沢峠
2009年9月13日(日)~9月14日(月)
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●折り重なる岩を越え大展望の頂へ
9/14(月) 七丈小屋~甲斐駒ヶ岳~駒津峰~双児山~北沢峠  晴れ後時々曇り

祠のある九合目付近から
祠のある九合目付近から。甲斐駒頂上までもう少し

翌朝、軽く食べて七丈小屋を出る。すぐ隣りに第二小屋があり、ひと登りしたところはテント設営地だった。一張り張られていた。
青空がいっぱいだが、鳳凰三山や富士山の方角に大きな雲が居座っている。

梯子や鎖が断続して現われる。昨日の続きとなった。昨日に比べれば体が慣れてきたため、順調にこなしていける。
鎖のかかっている場所は急傾斜というか、ほとんど垂直な所もある。昨日前半でなだらかな登りが続いていた分、その遅れを取り戻すかのように、ここへ来て急激に高度を稼ぐようになった。

シャクナゲと潅木の尾根となり、ハイマツが現われる。空がどんどん大きくなって、開けたところが八合目御来迎場(ごらいごうば)である。
写真で見ていたような石造りの鳥居は、今は折れてしまっている。一人の若者が休憩していた。聞くと、今日の夜中1時半、駒ヶ岳神社から登り始めたという。驚異の夜駆け日帰りピストンである。

ご来光
垂直の鎖場
ウラシマツツジ色づく

振り返れば八ヶ岳や鳳凰三山など、パノラマの展望。北岳方面も雲間から顔を出す。来た方向には黒戸尾根の黒々とした姿。そして甲斐駒頂上部はもう目の前。しかしここからもまだ岩場の難路が待っていた。

刀剣が二本突き刺さった岩搭を見て、岩尾根をどんどん斜上する。駒頂上までほぼ一直線の登りを残すのみとなった。斜面にへばりつくウラシマツツジの葉は、赤く色づいている。
稜線に出て砂礫の明るい尾根を行くと、北沢峠からの道が合流。さらに少しの登りで待望の甲斐駒ヶ岳頂上(2967m)に登り着いた。

8年前に立ったときと同様、今日も快晴。そして甲斐駒は、日本の高峰の中でもベスト5に入るであろう好展望の山である。

雲を被る八ヶ岳・奥秩父や富士山。南アルプスは鳳凰三山や北岳、その先に塩見岳の丸い頂。真正面に仙丈ヶ岳、脇に鋸岳の特徴ある山容。中央アルプスの長い壁、遠くに木曾御嶽、白山も見えている。
乗鞍岳から続く北アルプスの山並みが圧巻だ。槍・穂高はもちろん、鹿島槍や白馬まで見通せる。さらにその隣りに、何と火打・妙高の姿を認めた。富士山と火打・妙高、日本中部山岳の南の縁と北の縁にある高峰である。その裏にはそれぞれ、海がある。

どこを向いて座っていいのか、迷う場所である。1時間ほど滞頂するうち、9月の月曜日とは思えないほど多くの登山者がやって来た。もちろんほとんどの人が北沢峠からの登りである。

そのうち、四方から雲が湧き立ってきた。これも8年前と同じだ。白い稜線を歩いて北沢峠への下りに入る。
摩利支天は今回は立ち寄らず、駒津峰(こまつみね)~双児山(ふたごやま)と稜線を歩く。砂礫の道が終わると、駒津峰までは岩尾根となる。


八合目御来迎場

高度感ある岩場

2本の刀剣と鳳凰山

北岳

雲海から富士山も

甲斐駒頂上

槍・穂高

火打・妙高までも

中央アルプスと木曾御嶽

八ヶ岳

砂礫の道

白く明るい甲斐駒

駒津峰から甲斐駒
ハイマツの稜線
仙丈ヶ岳と双児山
苔が美しい道

黒戸尾根ほどではないが、アップダウンが多く、そう簡単に歩かせてはくれない。それでもこちら側には梯子や鎖がまったく見られない。もちろんそういう設備がいらない程度の傾斜であり、道の状態ということだ。
登山者はひっきりなしにやって来る。もしかしたら自分の勘違いで、今日は日曜だったのではないか、と思ってしまうくらいだ。
見ててちょっと危なっかしい歩きをしている単独の若い女性もいる。今年は、女性誌に登山が取り上げられた影響で、女性しかも単独の登山者をよく見かける。甲斐駒などはあまり女性の好みそうな山ではないとは思うが、やはり展望とアプローチのよさが人をひきつけるのだろう。

駒津峰への登り返しはけっこうきつかった。振り返ると甲斐駒の勇姿も、ときどきガスで覆い隠される時間が増えてきたようだ。前回はこのあたりから真っ白になってしまったが、今日はいくぶん持ってくれそうだ。
駒津峰(2752m)からは、鋸岳を正面に見ながらハイマツの稜線を行く。鞍部に下りきるまでハイマツが茂っており、その後樹林帯に入る。双児山への登り返しは、先ほどの下りと同程度の標高なのにハイマツがない。
このあたりは標高的には森林限界ギリギリの所であり、斜面がどちらを向いているかによって植生が全く違うのが面白い。

双児山(2649m)に着くと、甲斐駒はいよいよ分厚いガスに覆われようとしていた。朝方は快晴でも、10時頃にはガスが上がってきてしまう。夏季の南アルプスではおなじみの現象であり、それは9月になってもあまり変わらないらしい。

双児山を後にする。バラエティに富んだ2日間の山旅も、いよいよ最後だ。
鬱蒼とした針葉樹林の下りがどこまでも続く。エアリアマップには駒津峰から双児山・北沢峠まで、1時間30分のコースタイムが書かれているが、これはかなりの健脚タイムだ。実際は双児山から北沢峠の部分だけで、そのくらいかかると見たほうがいい。

歩く距離は長いが南アルプスらしい、静かで落ち着いた森の道である。林床に敷き詰められた苔の緑が美しい。
遊歩道との分岐を示す指導標を見たら、ほどなく長衛荘の屋根が見えてきた。下り立ったところが北沢峠のバス停である。
山荘でビールを調達し、1時間後のバスを待つことにした。仙丈ヶ岳から下山してきた人が、途中で熊を見たと言う。そう、ここにはいるのである。
黒戸尾根ではずっと鈴を鳴らしながら歩いていたが、北沢峠への下りではすっかり忘れていた。熊さんも、ようやく人が少ない時期になったと思って林の中から出てきたが、思惑が違って登山者に目撃されてしまったようだ。

広河原への村営バス、甲府駅までの路線バスとも、座席が全部埋まるほどの混雑であった。
行動時間だけ見れば意外とコンパクトな行程だったが、とても密度が濃い2日間だった。甲斐駒、とりわけ黒戸尾根は「山登り」そのものをじっくり味わうことの出来るコースである。


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