2019年7月29日(月) 前夜発 |
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調布IC |
20:30 |
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中央自動車道 双葉SA泊 |
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須玉IC |
4:55 |
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国道141号他 |
5:45 |
駐車スペース |
5:53 |
6:18 |
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杣添尾根登山口 |
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6:50 |
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2100m地点 |
7:00 |
7:30 |
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2300m地点(中間地点) |
7:50 |
8:23 |
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2400m地点(枯木帯) |
◇ |
9:10 |
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横岳三叉峰 |
◇ |
9:25 |
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横岳 |
10:00 |
10:55 |
日ノ岳付近 |
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11:15 |
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横岳三叉峰 |
◇ |
12:12 |
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2400m地点 |
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12:50 |
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2100m地点 |
13:00 |
13:35 |
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杣添尾根登山口 |
◇ |
14:00 |
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横岳登山口 |
14:05 |
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国道141号 たかねの湯立寄り |
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須玉IC |
16:10 |
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中央自動車道 |
◇ |
高井戸IC |
18:35 |
西日本から東海地方まで梅雨明けし、関東甲信も暑い日が続く。
月曜に休みをとって、テントを担いで八ヶ岳でも、と思ったが連日の雷雨予報に尻込みした。夏もすぐそこまでやって来ているのに、今年はどうも盛り上がらない。結局、前日車中泊の日帰り登山となる。
南八ヶ岳の主峰には登りたいので、どこかいい日帰りコースはないかと物色していたところ、杣添(そまぞえ)尾根から横岳に登るルートはまだ歩いていなかった。山中泊することなく南八ツの稜線に立てる効率のよいルートとなる。だが登山道自体は樹林帯の単調な登りが続くので、あまり人気がないようだ。
今回はテント泊し損ねたので、この未踏のルートを歩くことで意義を見い出したい。
シラビソ林が続く杣添尾根 [拡大]
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前の日の夕方、車で出発。この日の午後、中部山岳は軒並み雷雨だったようで、中央自動車道もまだその余波が残っていた。双葉SAで車中泊をしたが気温・湿度ともに高く、半端でなく寝苦しい夜となった。
車中泊は基本的にカーエアコンを切るので、真夏はある程度標高の高いところでないとかなりつらい。最近は車で仮眠していて熱中症になるケースもあるようなので、注意が必要だ。
翌朝、寝不足のまま出発する。昨日の流れを受け継ぎ雲が多く、湿気もまだ相当なもの。しかし須玉ICで高速を下りて八ヶ岳東面の国道を上っていくと、八ヶ岳の形が何となく浮かんでいる。レタス畑の農道からは、赤岳や権現岳などの主峰が見えていた。青空も覗いている。少しは展望の稜線が歩けるだろうか。
ただ空気が重いというか、まだ梅雨時の湿った空気が充満している。
八ヶ岳高原ロッジを過ぎ、別荘地につけられた立派な車道を上がっていく。バス停が所々に立っている。これは後で調べたら、この海ノ口自然郷の周遊バスとのことだ。野辺山駅から乗り継いでここまで来ることができそうだが、登山に使うのは少し不便だ。
途中で右に入ると登山道入口があり、すぐ先に駐車スペースがあった。すっきりと晴れているわけではないが、この先の好天を期待して出発する。
始めのうちはまだ別荘地の中の森を行く。登山道、というかここは遊歩道のようなのだが、膝上ほどの笹に道が隠れ、昨日までの雨で笹が濡れていたので、すぐにズボンがびしょびしょになってしまった。
右手のほうにまだ舗装車道が並行していたので、そちらを歩いてもよかった。下山時はそうしよう。
未舗装の八ヶ岳林道に出て少し左に行くと案内板があり、杣添尾根登山口となる。はるか上に八ヶ岳の稜線が日に照らされていた。山に入ると、今までほどは笹が深くない。
すぐに川を橋で渡ると、杣添尾根の登りが始まった。シラビソが主体の、鬱蒼とした針葉樹林の道である。ある程度の斜度が変わることなく続く。ギャップなどはなく、めちゃくちゃきつい傾斜ではないのだが、緩急がないのでそれがかえってつらい。
眺めが開けるところもなく、景色も変わらない。八ヶ岳のルートはどこも針葉樹林の長い登りがあるが、何かしら変化があり気がまぎれる。だがここにはそういう要素はなかった。
ときどき、標高を示したプレートがかけられているので、それを励みに登る。鉄製の新しいプレートもあれば、年代ものの古い木切れもある。登山口の標高が1890mなので、ほぼ1000mの高度差を忍耐強くこなしていく。湿気たっぷりの空気で気持ち悪くなりそう。
「万歩計による中間点」と書かれた赤いプレートのところはおよそ標高2300m。やや上部が開け、青空が覗く。ダケカンバはまるで新緑のような鮮やかな葉をつけていた。シャクナゲの花も見られる。どんな登山道でも、よく探せば見所はある。
そういえば今日はアブを見ない。八ヶ岳南側の編笠山や権現岳への登路は、今の季節に歩くと間違いなくアブとの格闘となる。杣添尾根も林相は同じようなもので、距離もそう離れていない。似た状況があってもおかしくないのだが、不思議とここにアブはいないようだ。まあここがアブの天国だったら、まさに踏んだり蹴ったりである。
「横岳展望地点」と古いガイドには書かれている場所に来た。左手に踏み跡が伸びているがシャクナゲのヤブにはばまれ、展望地点まで行けない。ただこのあたりできつい登りの連続は終わり、ダケカンバやミヤマハンノキなどの広葉樹の明るい道となった。八ヶ岳の樹林の植生は垂直分布がはっきりしている。
木の向こうに横岳、硫黄岳の尾根が見え隠れする。足元にはゴゼンタチバナやキバナノコマノツメなどが見られるようになる。花の横岳へはもう一息。
樹林を脱し、頭上に見える横岳三叉峰を目指してハイマツの中の直登となる。しかしここまでずっと樹林帯だった。杣添尾根は5分の4が樹林帯である。
青空の面積は減ってしまったが、開けた稜線を一気に登る・・・つもりなのだが足が重く前に進めない。寝不足が体にかなりのダメージをきたしている。数歩登っては休み、を繰り返しながらどうにか三叉峰の標識の下に立った。
ガスが周囲を取り巻き、天気には見放された。赤岳へ行く元気はなくなっていたので、右の横岳へ進む。しかしやはり南八ヶ岳の主稜線に立てた喜びは大きい。チシマギキョウ、コマクサ、ミヤマダイコンソウ、ここならではの高山植物がすぐに目に入る。ウルップソウは終わってしまったが他にもコバノコゴメグサ、タカネツメクサ、オヤマノエンドウ、タカネニガナなどが次々と現れる。
展望のいいピークを経て横岳山頂へ。ガスが切れて大同心、小同心や硫黄岳などの眺めが広がった。下のほうに赤岳鉱泉や行者小屋も。振り返ったら赤岳も姿を現していた。見たいものは最低限一通り見えたので、とりあえず登ってきたかいがあった。
山頂で腰を下ろしていると、観音平からの縦走者がやって来た。テント泊で昨日はキレット小屋に幕営したと言う。八ヶ岳は初めての様子。どこで核心部の岩場が出てくるのかと思っているうち、ここまで来てしまったとのこと。他にいろいろな山を登っている人からすれば、八ヶ岳の岩場もそれほどの難所には映らないのかもしれない。岩場よりもむしろアブの攻撃に会い、ヘトヘトになったと言う。
休憩して少し元気が出てきたので、三叉峰から左(南側)にも足を伸ばしてみる。石尊峰から先は岩尾根を西側から巻くようになり、少しアップダウンがある。ミヤマオダマキとハクサンイチゲが咲いていた。2種類の花はいつもこの巻き道で見られる。こんなガラガラの岩尾根に、よくも毎年同じ場所に同じ花が咲くものだと感心する。
岩場を登り返して再び日ノ岳付近の稜線に出たところで引き返すことにした。
三叉峰の分岐から杣添尾根を下る。すぐに樹林帯に入り登山口まで、標高差1000m近い長い下りである。
足元に不安がある今日に限ってストックを持ってくるのを忘れたので、地面に落ちている木をストック代わりにする。シラビソは水分が多く折れやすいのでストックには不適。いろいろ比べた結果、ダケカンバが一番丈夫で耐性があるとわかった。カバノキ科の木は見た目には柔らかくてすぐ折れるのではと思うが、意外と長持ちした。まあ、シラビソとダケカンバ以外の種類の木があたりに見当たらなかったという事情もある。
疲労の極地で時々襲ってくる睡魔にも耐えながら黙々と高度を下げ、林道の出合う杣添尾根登山口に下り着いた。
天気はこのまま持ちそうに思っていたが、空気がやや冷えて怪しい雰囲気になってきた。早めに駐車スペースに下りたい。
しかしどうも登った道と違う道を下っている。笹が深くなく、別荘の建物も朝見たものと違う。おかしいと思っていたら、下り立った車道は駐車スペースよりずいぶん南側だった。この別荘地内には何本かの遊歩道が交差して通じているらしい。まあとんでもないところに下ってしまわないでよかった。
荷物を車に放り込み、さっさと出発する。と、すぐに雨が降ってきた。たちまち土砂降りとなり、別荘地の車道はあっという間に滝と化す。農道を経て国道に出ると雨は一層強まり、タイヤ半分が水没してしまうようなところもあった。下山してまだ10数分しか経っていないのにこれほどの豪雨になるとは、思いもしなかった。須玉地区に入ると雨はうそのように止む。
関東甲信はこの日梅雨明けしたようだが、歩いた山の様子や下山後の大豪雨からは、とても信じられなかった。