山の写真集 > 八ヶ岳・信州 > 斑尾山、袴岳
  • -ゲレンデを登る山-
  • 沼ノ原-斑尾高原-斑尾山-万坂峠-袴岳-赤池
  • 北信
  • 長野県/新潟県
  • 斑尾山(1382m), 大明神岳(1360m), 袴岳(1136m)
  • 2020年9月21日(祝)
  • 15.7km
  • 7時間13分
  • 543m(沼ノ原-斑尾山)
  • -
  • まだらおの湯
  • マイカー
天気1

 

2020年9月21日(月)
練馬IC 4:00
  関越自動車道
上信越自動車道
豊田飯山IC 6:35
  県道96,97号
7:00 沼ノ原湿原(駐車場) 7:35
8:27   斑尾高原
9:00 ぐんぺい街道
9:10 主稜線
9:35 タングラムスキー場分岐 9:43
9:57 北山頂
10:08 斑尾山
10:17 大明神岳 10:35
10:45 斑尾山 10:47
10:57   北山頂
11:10   タングラムスキー場分岐
11:30   ルピナス分岐
11:52 万坂峠
12:20 袴湿原
13:13 袴岳 13:30
14:12 林道遊森トレイル経由
14:52   赤池 14:57
    赤池ブナ林トレイル
15:42 沼ノ原湿原(駐車場)
  県道96号,国道117号
まだらおの湯立寄り
17:30 飯山市(ルーブル飯山泊)

 

シルバーウィークの4連休は、天気のいい日を選んで北信の山に登ることにした。
以前からカヤの平のブナを見てみたかったのだが、歩いても3時間かからないくらい。自宅から長距離移動してくるにはそれではもったいない。麓に一泊することにして、斑尾山にも登る。
斑尾山は北信五岳の一座でもあり、昔からよく知られた山だが、リゾート施設やスキー場開発が盛んなところだ。確か自分も若い時、スキーで滑った記憶がある。全景の写真を見ると端正で穏やかな三角形をしている一方、何本ものゲレンデが斜面を走り、虎刈りになった姿が痛々しい。皮肉にもこの虎刈りが、斑尾山の一番有名な姿になってしまっている。
できれば隣の袴岳と結ぶ信越トレイル縦走路を歩いてみたい。

翌日のカヤの平高原へ


大明神岳から野尻湖を望む

沼ノ原湿原~万坂峠間の車道は、崩落箇所があるため通行止め。沼ノ原へは斑尾高原経由でないと来れない

車道は通行止め

斑尾高原スキー場からは、ゲレンデ上が登山道となる

ゲレンデ登り

サラシナショウマ(ぐんぺい街道)

サラシナショウマ

ぐんぺい街道上斜面は、ダケカンバやウダイカンバの明るい樹林帯となっている

カンバの斜面

ウダイカンバ

ウダイカンバ

タングラムスキー場分岐前後から、ようやくブナ林となる

ようやくブナ林

斑尾山山頂は樹林下で展望はない

斑尾山山頂

大明神岳の山頂標識

大明神岳

斑尾山~大明神岳間はブナ林がよい

立派なブナも

斑尾山の稜線から、斑尾高原のホテル街を見下ろす

リゾート地

山頂少し下にあった標識。パウダースノーを求めて、ここまでスキーで上がってくる人もいるようだ

パウダーまであと少し

ゲレンデを下り続ける。袴岳が大きく見える

ゲレンデ下り

万坂峠は長野と新潟の県境

万坂峠


車中泊はせずに当日の午前3時に家を出る。関越、上信越自動車道と走る。
浅間山など中信の山岳は厚い雲を被り、八ヶ岳や北アルプスは全く見えない。日本海側の空も鉛色だ。標高の高い所は雨が残っているかもしれない。昼過ぎから好天に向かうとの予報を信じる。
豊田飯山ICから、下道を走ってすぐに斑尾高原への上りになる。空が暗くなって霧雨模様となった。
斑尾高原ホテルなどホテル、別荘地付近では朝の散歩をする人が何人かいた。4連休の中日はこの辺りもけっこう人が入っていそうだ。全国レベルで見ればコロナ感染がひと段落して、人々も動き出している。
空模様のはっきりしないまま、目的地の沼ノ原に到着。駐車場は10台弱で、トレイルランナーのグループが来ていた。今日はもともと、この付近を中心とした山岳トレイルマラソンの日だったが、コロナの影響で中止になっている。
雲は厚いが雨は止んだようだ。上空が少し明るくなってきたのを見て出発する。

まずは沼ノ原湿原に入り、中央コースというのを辿っていく。初夏は恐らく花で彩られているところだろう。至る所に標識が立つ。このあたりは中央コースのほかに東コース、西コースのほか赤池へ抜ける道、反対側の希望湖に進む道などたくさんの歩道が交錯していて、分岐もいっぱい出てくる。しっかり調べてないと路頭に迷ってしまう。
自然度の高い湿原の道かと思いきや、中央コースは尾根部分を歩くところが多く、スギ人工林中をしばらく歩いていく。広葉樹はウルシが目線の位置に枝を伸ばしてきている。まだ紅葉してはいない。ミズナラやダケカンバも見られる。

やがて車道に出る。斑尾高原の大きな案内図、そして車が何台も通っていく。
登山道は車道を横断した、芝生の敷地の先に続いていた。谷地形の窪み部分にブナが固まっていた。 その少し先で一気に視野が開け、スキーゲレンデの最下部に出る。だだっ広い空間で、こんな早い時間にもちろん観光客はいないのだが、斜面を登っていく登山者が小さく見える。やはりここを登るのか。
ルピナストレイルの分岐を右に見て、ロープ柵に仕切られた正面のゲレンデを登っていく。以後しばらくは、トラクタか何かで整地されたゲレンデ上を歩き、高度を稼いでいくことになった。
トレイルランの人が次々と下ってくる。斑尾山と思われる上部の山稜はまだ霧がかかり、足元は花も咲いておらず単調な登りである。途中で脇の樹林帯に入るがMTBのコースとの表示があった。

ひたすら30分ほど登り、ようやくぐんぺい街道という水平の巻き道に出る。斜面にはたくさんのサラシナショウマが風になびいている。ここで右折、斑尾山西側の稜線に進む。左手の急斜面はダケカンバ一色になった。観光地化で一度整理された後にできた林だろうか。
二次林を見ると、それがいつ成立した森林なのかを知りたくなる。そのためにネットなどでその地の開発の経緯、歴史を調べるのだが、どれも大枠の説明しかなく、森林の歴史などはやはり想像するしかない。

斑尾高原は東京オリンピック(1964年)の直後に、深刻な過疎の解決策として観光地開発されたもので、スキー場は1972年にオープンしたということだ。
長野県スキー発祥100年の歴史というすごいサイトがあったので見てみると、長野のスキー場開発の多くは1960年代初頭までに終わっていて、志賀高原や野沢温泉は大正時代、菅平は昭和初期に誕生している。他の有名どころも1950年代にはほぼできており、斑尾スキー場はかなりの新顔ということになる。
開発後に根付いた森林ならまだ50年生。カンバの多さが森林の若さを表している。

最初はダケカンバだと思ったが、光沢のある灰色、というか銀色っぽい樹皮はどうやらウダイカンバが正解のようだ。太平洋側の山ではあまり見る機会が多くない。樹皮の色で乱暴に分けると、白:シラカバ、薄茶:ダケカンバ、銀:ウダイカンバということになる。心形の葉がダケカンバより二回りほど大きいので、割と区別しやすい。

地面には早くも黄葉し始めたカエデの葉がたくさん落ちている。ゲレンデ道となり、さらに高度を上げる。急坂となり頑張りどころだ。再び樹林帯に入るとようやくブナ林になった。
すぐにスキーリフト発着点に出て、タングラムスキー場からの道が合流する。ブナ林はしばらく続き、狭いエリアではあるが深い森の雰囲気がある。スキー場開発でも伐られなかった場所だろう。ブナの葉は腰の位置で茂り、低木も繁茂している。どれも濡れていて少し前まで弱い雨か霧で包まれていたようだ。

北山頂」と言われるピークに着いた。樹林で展望はなく、左手から登山道が合流する。
斑尾山山頂へはもう一息。いったん樹林が切れて岩尾根の上を歩く。頭の上から日が差してきた。最後の坂を登りきって、ようやく斑尾山山頂に到達する。
山頂も展望がないので、この先の大明神岳まで足を伸ばす。この部分はブナがいっぱい見られた。天気もどんどんよくなり、気温が上がってきた。着いた大明神岳からは野尻湖が見下ろせたが、周囲の山は雲の帯で見えず。天気が良ければおそらく妙高、火打あたりが望めるのだろう。

クモマニガナは花弁が多い

クモマニガナ

ミズナラの葉に虫こぶが成長していた

虫こぶ

袴湿原はヤマドリゼンマイが紅葉し始めていた

少し秋色

ブナの道へ

ブナの道へ

袴岳へは、ブナが立ち並ぶ道を行く

ブナ街道

袴岳山頂付近。ブナ林の一本道

山頂付近

袴岳山頂

袴岳山頂

袴岳から林道に下りていく。信越トレイルはこの先、赤池から希望湖方面へつながる

信越トレイルの道

赤池

赤池

赤池ブナ林トレイルにはアガリコ形をした畸形ブナが多い

アガリコのブナ

沼ノ原の駐車場へ戻ってきた

一周コース


南面、荒瀬原からの登山道を登ってくる人がけっこういる。標高差はあるがおそらく、ゲレンデを歩かなくても済むのでこちらを好んで利用する人も多そうだ。自分もゲレンデ歩きを避けて荒瀬原コースを登る選択肢もあったのだが、初登の今回は一般的な、一番利用されているコースで登った。
山頂にいた人の会話では、今でもコロナ禍で関東方面から人が来るのを怖がっている人が多い、とのこと。本当かどうか怪しいが、大宮ナンバーの車はタイヤの空気を抜かれたとか。急に自分の車が心配になってきた。

狭い山頂はたちどころに満員になったので、斑尾山山頂に戻る。十三薬師の説明板があった。
斑尾山の薬師像は十三体あって、祠には十二体しか収めることができない。どうしても一体はみ出して収めることができずにその日は帰ったのだが、翌日見にきたら不思議と十三体全部が収まっていたとのこと。後で何人もの人が試しても同じことが起きたという話である。
『自分にはどうにもならないと思っていた難題も、知らぬうちに解決・克服されているから、あまりくよくよするな、でも努力することが大事』ということなのか。示唆に富んだ逸話である。

斑尾山を後に、これから袴岳へ縦走する。ブナ林は斑尾山よりも、袴岳から赤沼にかけての部分がよいとのことだったので、この信越トレイルの一部分を歩いてみることにした。
タングラムスキー場分岐まで来た道を戻る。ここからはゲレンデを一直線に下っていく。下りつく地点がここからも見えている。斑尾高原側からの登山コースは、登りも下りもスキーゲレンデだった。滑りやすいので注意が必要だ。

下りだすとブナはなくなる。正面に見える袴岳からの稜線がどんどんせり上がってくる。左の長野側はタングラムスキー場の駐車場が大きい。車も思った以上にたくさん停まっている。
下り立った万坂峠は長野と新潟の県境で、県道が乗っ越している。今日の出発点である沼の原や赤池へは、長野県側からアプローチしてこの峠を越えて入ることが可能だ。しかし台風や豪雨の影響なのか、数ヶ所で崖崩れがあって通行できない。今日のコースは赤池の駐車場を起点とするのが一番良かったのだが、赤池は歩いて通過はできるものの、今のところ車で入ることができない。

万坂峠からは袴岳へ向け、長い登り返しとなる。急なところはない。しばらくして小さいながらも湿原帯に出た。袴湿原というところで、ヤマドリゼンマイが紅葉し始めていた。9月の標高1000mでもさすが日本海側の山、小さな秋があちこちで見られる。
赤池への分岐で左折し、登りに入る。ニガナの仲間は花弁が多数、葉が茎を抱いているのでクモマニガナのほうか。赤い真珠玉のような虫こぶを葉に乗せたミズナラがあった。

歩くにつれ森は深まり、ブナ林の緩やかな登りに入る。大木はないものの密度は濃く、スラリとした白い樹姿が見事。まさにブナの山だ。
信越トレイルはまだ縦走をしたことはなく、単発で鍋倉山、天水山を登っただけだがいずれもブナ満載だった。袴岳のような地元の人しか知らないような山でも例外ではない。行けどもブナの街道になっている。
山頂付近は平坦になっていて、長い1本の道になっていた。その先の切り開きが袴岳の山頂である。西方向の木が刈られ明るくなっているが、あまり見晴らしはよくない。雲が少なければ山の眺めがあるかもしれないが、よくわからない。

赤池方面へ、反対側の登山道を下る。鞍部で右に折れる。稜線は直進なのだがその方向には木切れで通行できないようになっていた。信越トレイルのコース自体も、ここは稜線を外れ赤池のほうへ下っていく。造林地を通過し、林道に出る。赤池へはこの林道を1時間ほど歩くことになる。

遊森トレイルという周回コースの入口が左手にあった。地図には書かれていないが入ってみる。樹林の中を違う方向へ下っていってしまうので不安もあったが、じきに元の方向へ戻ってきた。ただ、あまり歩かれていないようで、最後は踏み跡が不確かになった。

林道に戻るとすぐに赤池である。テントスペースがあり休憩所、広い駐車場もあるが、車が入れないので車も人もいない。林道自体もロープで立ち入れないようにしているので、歩行者もだめなのかと不安になる。
赤池ブナ林トレイルが尾根側についているので、そちらに入っていく。少々登り返しとなったが、こちらのブナ林もなかなかすばらしかった。袴岳が伸び伸びとした樹姿だったのに対しこちらは巨木が多く、一部アガリコと言われる畸形もある。
標高の低いところのブナ林にはこのように昔、薪炭材などとして人に利用されてきた跡が見られるものもある。

久しぶりの長丁場も最後の歩程だ。朝通った沼ノ原湿原に戻ってきた。天気が良くなり、朝に比べてずいぶん眺めが良くなっている。
湿原縁の木道を歩いて、沼ノ原駐車場。一周コースの完成である。

久しぶりに日本海側のブナ林を堪能することのできた1日だった。斑尾山はゲレンデ歩きが多くてブナも山頂付近にしかなかったが、今度は荒瀬原から登ってみたくなった。北信の山の魅力は尽きない。

今日は飯山市に宿泊し、明日はさらなるブナ林の宝庫に足を踏み入れる。

翌日のカヤの平高原へ