滝集落から額取山
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福島県のほぼ中央に位置する額取山は、地名を採って安積山(あさかやま)とも呼ばれる。むしろこの名前のほうが地元では通じやすいようである。
2日目も同じく、郡山駅前からバスに乗ってスタート。滝登山口に通ずる夏出(なついで)で下りる。滝集落も明るく開けた農村で、この付近の山里はどこもぬくもりを感じる。田畑越しに額取山・大将旗山(たいしょうきさん)の残雪の稜線が望める。
雲のまったくない、まさに快晴の空だ。気温も高く、林道を歩き続けるうちにうっすら汗ばんでくる。
弘法清水で水を汲み、さらに進む。数台の車が停まっているすぐ先が滝登山口となる。
額取山頂上から磐梯山の眺め
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登山道は最初から急な登りとなる。タオルで汗をふきながら歩くのは久しぶりだ。すぐにスミレ、シュンランが目に入る。
豊かな自然林に包まれた道を進み、尾根に上がるとほどなく磐梯熱海コースが合わさる。
このあたりからなだらかな部分と急な登りが交互に繰り返されるようになる。道幅は広く清々しい。樹相も豊かで緑に包まれた時期、そして紅葉の山もいいだろう。
道の真ん中にカタクリの葉が出ている。気づかないと踏んでしまいそうだ。カタクリは7年間も地中で開花の準備をしているのだから、咲く前に踏んでしまってはあまりにも可哀相。咲く直前の数年間は葉だけ地上に出るとも聞く。
やがて花をつけているのも現れた。数は少ないがなかなか形もいい。道の真ん中に突然伸びているのでびっくりしてしまう。
行く先にピークらしきものが見えてくる。山肌は緑の笹に覆われているようだ。どんどん高度を上げていくにつれ周囲の樹高が低くなってくる。
風を避けるために、地をはうように曲がって生えている樹木は、東北の高い山の上で多く見られる姿だ。こんな1000m程度の山でも見られるとは面白い。
しかし幸いというか、天候は安定し風はほとんどない。気温が高いので、かえって風が吹いてくれたほうがいいとも思った。
笹原の中の登りになると、少しだけ残雪が現れる。例年なら4月中下旬だとある程度の雪が残っていそうだ。今年は暖かいので雪はわずか、歩行には全く支障がない。
右(北)方向に残雪眩しい山稜が見えてくる。安達太良山、そしてその奥は吾妻連峰だろう。いったん少し下って登り返すと、そこは全方位開けた額取山頂上である。
視界に入る残雪の山々に川桁山、会津磐梯山が加わる。磐梯山の下には猪苗代湖の青い湖面。さらに磐梯山・猫魔ガ岳の背面には飯豊連峰の真っ白な壁が横たわる。
額取山の尾根続きには、残雪の稜線が大将旗山まで伸びている。この道は昨日、高旗山で会った夫婦からも薦められた。尾根歩きとしては最高にいい道のようであるが、向こう側の御霊柩(ごれいびつ)峠に下りてしまうと、バス停までかなり長い車道歩きを強いられる。
峠まで車で来て、ここ額取山までピストンする人が多いようである。
東西に細長い頂上は、20名ほどの登山者が思い思いの格好で憩っている。昨日の高旗山でもそうだったが、昼寝をしている人が多い。伸びやかで気持ちのよい頂上だからそれもうなずける。
なかなか去りがたい場所だ。磐梯山の姿をゆっくり眺めて下山とする。
先ほどの分岐まで戻り磐梯熱海コースに入る。この道は登山ガイドでもほとんど紹介されていない。少しドキドキしながらの歩きとなった。今までのきれいな登山道に比べると若干ヤブっぽい部分もあるが、随所に指導標が立っていてそれほど紛らわしさはない。
磐梯熱海温泉の源泉
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いったん林道に出る。この林道を延々進んでいくと夏出に戻るようだ。林道は50mほどで離れ再び山道に入る。
ほどなく伐採地に出て視界が開け、磐梯熱海方面の町並みが望める。しばらく続く山腹の道はかなり曲がりくねっているが、そのへんは25000地形図にはあまり表現されていない。伐採の結果道が付け替わっているのかもしれない。
やがて指導標の立つ熱海登山口に着く。左折し舗装車道を少し下ると、川沿いの集落に出る。
あとは磐梯熱海駅まで、平坦な車道を歩く。25000図と周囲の地形を見比べながら、陽射しの強い山村道を行く。
桜並木をくぐって踏み切りを渡り、磐梯熱海の温泉街に入る。きらくやという旅館は日帰り入浴可とのことなので、のんびり温泉に浸かって帰るとしよう。
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