~レンゲショウマ咲く森深き山~ みさかくろだけ(1793m) 2009年8月23日(日) 晴れ後曇り一時雨
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御坂黒岳は、御坂峠から稜線を伝って登るのが一般的である。今回は板取沢沿いの古道を歩き南稜に出て、急登を詰めるというルートをとってみた。 昨年の7月に歩こうとしたのだが、沢沿いの道への取り付きを見つけるのに手間取り、おまけに途中で落し物をしてしまったので登るのを諦め、引き返していた。 沢沿いの道さえわかればあとは特に難しくないと思われた。ただし黒岳南稜は急登で知られたコースなので(一般登山道ではない)、時間と体力配分に注意すべきであろう。
中央線、富士急行線とも満員電車。8月の富士山周辺は一大観光地となり、山も湖畔も大いに賑わう。 その上ここ数年は富士山ブームとなっており、天気のいい休日などは特に、富士登山をするハイカーであふれるようだ。 河口湖駅前のバスターミナルに着くと、富士山5合目行きのバス発車場に長い列が出来た。一方、甲府行きのバスに乗る人はほんの数人だった。 富士急行バスはスイカの利用が可能となった。小銭を用意せずに済むので乗り降りがしやすい。一方、電車の富士急行線のほうはいまだに現金主義で、切符を買うしかない。 この電車とバスは接続の悪さといい、同じ系列会社の乗り物なのにどうしてこうもバラバラな運営なのか、理解に苦しむ。
三ツ峠入口で下車する。他に登山者が2人。登山道入口から草深い道を行く。すぐ先に大きな案内板が立っており、そこで左に折れる。 なお直進方向は、いつもの御坂峠への登路であり、他の2人はそちらに登っていった。 最初は御坂トンネルの上あたりを歩いていく。トンネルの照明施設か通気施設らしき建物がすぐ下に見え、大きな音を発している。 その先は少しの間、ヤブ深い道が続く。板取沢を渡って右岸沿いの踏み跡を拾う。前回はこの入口あたりに大きなヤブが被さっていて、その先の道がなかなかわからなかった。2時間くらいさまよったあげくようやく見つけたのだった。 今日はすんなりと道を見出すことができ、意外なほどすっきりした登山道を緩く登っていく。 道は右岸沿いにしばらく進み、その後何度か水量の少ない場所を渡り返す。 なお、右岸・左岸という言葉は、沢の上流からみた言い方である。登りの道の場合は(普通は上流に向かって登るわけだから)、沢の左側に付けられた道が「右岸の道」となる。 木段が現われる頃、少し斜度の増す登りとなる。周囲は鬱蒼とした樹林帯で、まるで夕方のように薄暗い。デイライトのフィルムを使っていると、あまりの暗さでシャッターが下りないことがある。 ヤブ深くない道とはいってもそこはさすがに8月で、下草は厚くクモの巣が顔に引っかかることは避けられない。フシグロセンノウやソバナなどの花を多く見る。この顔ぶれを見ると、もうすでに秋の入口といった雰囲気がする。 そしてさらにレンゲショウマ。盛夏から晩夏の時期、南関東・甲信の山で見られるの花の主役である。奥多摩の御岳山が有名だが、ここ御坂でもよく見かける。 薄暗い樹林帯に咲くことが多く、しかも白いのでピント合わせにひと苦労だ。写真に撮りづらい花の代表でもある。 沢を離れジグザグに高度を上げていくと、やがて南稜に合流する。広瀬への指導標が木にくくりつけられている。 さらにすっきりした道になり、豊かな樹林の中を行く。すぐに岩場となって、その先の岩棚で展望が広がった。河口湖と、雲の上の富士山がよく見えている。 1554mピークから少し下り、登り返しになるとロープの張られた急登となる。ママコナ、ハクサンフウロ、ソバナ、ウスユキソウが多い。シシウドなども見かける。 その後緩急を取り混ぜ、高度をどんどん稼いでいく。上のほうに見えるピークが黒岳かと思うが、sanpoさんのレポにあるようにニセのピークであり、本当の黒岳頂上はその先である。 何度か展望のいい場所を経て、さらに登っていくとにわかに人の声が。広い場所に飛び出したところが黒岳展望台であった。 雲が多いが時折富士山が見える。すぐ上をパラグライダーが通り過ぎていった。富士山や富士五湖を眺めながらの空の旅はさぞかし気持ちよいだろう。 しかしこの1790mの地も意外と涼しい。汗のとめどなく噴き出す低山の季節は、今年はもう終わったかのようだ。
黒岳の頂上に行く。いつもながらの草深い、地味な頂上である。周りは花が多くタムラソウ、ハクサンフウロ、シシウドなどが特に目立つ。 今日はこれから大石峠まで尾根歩きとなる。ブナ林の下りはハクサンフウロがとても多く、さすが花の黒岳だ。ここは春にはカタクリも咲くし、いつの時期に登っても楽しめる山である。 新道峠を過ぎるとレンゲショウマが多くなる。群落地と言えるほどではないが、稜線を点々と咲きつないでいる感じだ。破風山(1674m)を越えて中藤山三角点(1676m)、レンゲショウマの咲く道をさらに西進する。
しかしいかんせん周囲が暗い。樹林帯ということだけでなく、上空の雲が厚くなり始めたということもある。時々開けた場所に出るも、もはや富士山は望むべくもない。 そうしているうち、雨がポツポツときてしまった。朝方の青空がうそのようだ。岩場をぬって急坂を登り返し不逢山(1562m)、その先で今年初めてのマツムシソウを見る。 草原状の小広い台地、大石峠に着く。天気がよければ、富士山が見えればゆっくり休憩したい地である。ツリガネニンジンやコウリンカを見る。雨足がやや強まってきたので、休憩もそこそこに下山とする。 相変わらず薄暗い道をジグザグに下って、1時間弱で林道に下り立った。標高を下げれば、雨も上がっている。 5年ぶりに歩くこの林道は、トンネルが建設中だった。工事中の看板に「一般県道富士河口湖芦川線」と書かれている。ということは、もしかしたらこの山稜をくりぬいて芦川側に通じることになるのだろうか。 プチペンション村のかわいいバス停で、河口湖駅行きのバスを待つ。 |