山の写真集 > 丹沢・道志・箱根 > 加入道山
  • -青空に映える氷雪の芸術-
  • 用木沢出合-白石峠-加入道山
  • 丹沢
  • 神奈川県
  • 加入道山(1418m)
  • 2012年3月3日(土)
  • 8.2km
  • 5時間55分
  • 813m(用木沢出合-加入道山)
  • 中川温泉ぶなの湯
  • マイカー
天気1

 

地図
2012年3月3日(土)
東京IC 6:00
  東名高速道路
大井松田IC 6:40
  国道246号,県道76号
7:25   用木沢出合 7:45
8:00   白石沢キャンプ場
9:00   白石ノ大滝 9:05
10:10 白石峠 10:25
10:55 加入道山 11:20
11:40 鞍部(引き返し)
12:05 加入道山 12:10
12:35 白石峠
14:20 白石沢キャンプ場
14:40 用木沢出合 14:50
  県道76号,国道246号
中川温泉立寄り
17:35 大井松田IC
  東名高速道路
18:25 東京IC

 

大室山と加入道山(かにゅうどうやま)は、明るいイメージの強い丹沢の山の中では落ち着いた、山深い雰囲気がある。
登山コースは西丹沢からのものが主で、ほかに北面の山梨県道志村からも登れ、特に久保地区から大室山へのコースは一度登ってみたい。
2月最後の日に、山間地ではまた大雪になったようだ。丹沢山のみやま山荘のサイトによると、積雪は80cmとなったとのこと。久保からのコースはバリエーションゆえ、今日は新雪で登山は難しいだろう。西丹沢からの一般登山道を行くことにした。

加入道山のスノーツリー


加入道山のスノーツリー

加入道山のスノーツリー

朝からどんよりした曇りで、富士山はおろか丹沢の山並みも見えない。丹沢湖を過ぎて西丹沢の山の斜面がようやく見えてきた。軒並み白い。雪のつき方は南斜面も北斜面も関係ないようだ。
西丹沢自然教室から先は路肩に雪が目立ち始める。凍結気味の路面を走って、用木沢出合に着く。

すでに何台か駐車しているが、どうやら釣りに来た人のようだ。このあたりの沢は3月から渓流釣りが解禁になっている。林道を歩き、堰堤を右に左に見ながら、雪がまだらにつき滑りやすい木の橋を何度も渡る。
寒くはないが、気が重くなるような空模様。左手の踏み跡を見い出し、ジグザグに登り出すうちに、パラパラと粉雪が降ってきた。

尾根上は方角によって雪があったりなかったりする。高度を上げていくとやがて、鉛色の空の一角から、太陽の輪郭がにじみ出してきた。雲は低いところだけのようである。

ところどころ、大理石のような白い石が雪から顔を出す


白い石

白石ノ大滝上部の沢沿いの道から先は、雪が深くなる


雪が深くなる

白石峠に上がると青空が覗く


白石峠

加入道山へは、明るい自然林の道を行く


加入道山へ

加入道山山頂は樹林に囲まれている


樹林の頂

青空に樹氷の白が映える


樹氷

前方に滝が見えてきた。「白石の大滝」と案内板に書かれている。別名を大理石の滝と言い、この流域が大理石の産地だったことを物語っているとのことだ。
歩いているとたしかに、大理石のような白い石がごろごろしている。白石峠という名前は、どうやらそれが語源のようである。

道はその滝の上流に沿うようになり、谷間を深く分け入っていく。急に積雪の量が増えた。多いところで50cmくらいある。先週の雪は、丹沢山地ではドカ雪だったらしい。
足跡はひとつしかついていないので、膝下までズボズボと潜るようになってきた。しかも3月の雪は水分が多く重たい。歩行スピードが急に落ちてしまう。

白石峠まで0.8kmの指導標。この雪道でその距離ということは、まだかなり時間がかかりそうだ。
あたり一面真っ白の中、急登となる。雪が深く、登りと言えども足運びには慎重さが要求される。頭の上がだんだん明るくなって、青いものも見えてくるのを励みに急な登りをこなす。
白石峠に到着。滝から1時間以上かかってしまった。頭の上は青空だが、目の位置は雲が厚く、ガスも舞っている。丹沢や道志の山々の姿はない。富士山も見られない。

加入道山は右に進む。ブナも混ざる気持ちのいい稜線だ。木々は葉に多量の氷雪を乗せており、霧氷を纏った状態になっている。
日が差して気温が上ると、それらが一斉に降ってくる。まさに土砂降りだ。しかも降っているのは雨ではなく氷である。ちょっとした異次元空間的な雰囲気だが、鹿除けのフェンスが興ざめではある。登るにつれ雪は深くなり、斜度を失ったところで加入道山山頂となる。

風の吹く北側に樹氷が発達している


北面に付着

加入道山から先はトレースがなかった。雪は水分を含んで重い


トレースなし

網フェンスにも樹氷が付着。まるで雪が横に積もっているよう


網フェンスも

白石峠から下りで、ようやく西丹沢の山の眺めが得られる


冬山の眺め

林道から見上げる檜洞丸方面の山稜も白い


見上げる山稜も白い


ベンチのある、東西に細長い山頂だ。誰もいない。雪は深く、一面が真っ白だ。ここまでかなり時間がかかってしまったが、とりあえずひとつの山を登り終えた。
ベンチの雪を払って腰を下ろし、軽い食事とする。一段下がったところにある避難小屋にも人の気配はない。
加入道山の山頂は、ブナなどの樹林が多く茂る。見上げると、雪をしたためた枝が青空いっぱいに張り巡らされていてとてもきれいだ。時折り日差しが届くたびに、雪片がバラバラと落ちてくる。

さあ、大室山までもうひと仕事、とその方向を見ると、トレースがないことに気づいた。先週の降雪以来、まだ誰も歩いていないようだ。
とにかく先に進んでみる。雪は多いところで、太ももあたりまであり、場所によってはズボズボと踏み抜きの連続となる。
尾根を少し外したところや木の根元は雪が少ないので、そういうところを選んで歩く。

緩く下って「加入道山避難小屋まで300m」の標識まで来る。稜線上のガスが風で飛び、大室山に続く山稜があらわになる。
雪はますます深くなり、数歩進んでは休みを繰り返す。輪カンをがあれば、このつらい歩きも一転して楽しいものに変わったろう。持って来ていないことを後悔する。
さらに少し進んだところで、前進を諦め引き返すことにした。
今度は装備をしっかりして来ることにしよう。大室山はまた近いうちに、久保からの道をやはり登りたい。

戻る道で、一人が加入道山から歩いてきた。自分のつけた足跡を使っている。
この先、途中で足跡はなくなることを伝えて別れた。いや、一人では無理だが、2人で行けば何とかなるかな。けれど知らない人同士でラッセルしていくのは、疲れても自分だけ引き返すことがかえって出来なくなりそうで気が引ける。やはり今日はこのまま引き返す。

山頂でもう一休みし、白石峠まで戻る。さっきから1時間ちょっとしか経っていないのに、木々の雪はずいぶん溶けてまっていた。
峠からの下りは急なところがあり、神経を使う。凍ってはいないが転倒するとある程度の滑落はするだろう。慎重の上にも慎重に。
滝のところまで下ってきてようやく一安心。どんどん下って堰堤を渡り林道に出るまで、山頂から2時間もかかってしまった。

道端の雪も朝方に比べずいぶん溶けたが、見上げる檜洞丸の尾根は白い。冬の西丹沢の山々は、東京近郊の山地の中でも屈指の雪の深い場所であることがよくわかった。
用木沢出合に戻る。今日は往復コースになってしまった。

中川温泉に立ち寄ってから帰京する。