~秋深まり行く静寂の尾根道~
タイトル
おおむろやま(1588m)、かにゅうどうやま(1418m)
2002.10.27.(日) 晴れ時々曇り

新宿駅5:00-[小田急線]-6:39新松田駅7:14-[バス]-8:11西丹沢自然教室8:20-8:50用木沢出合-10:00犬越路10:15-11:45大室山12:35-13:05破風口-13:35加入道山13:45-15:05道志の湯16:30-[バス]-16:55月夜野17:30-[バス]-17:50西野々折返場18:00-[バス]-18:25三ケ木18:36-[バス]-19:25橋本駅19:30-[京王線急行]-20:10新宿駅 歩行時間:5時間30分

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マップ

昨年の5月以来、久しぶりの丹沢だ。
大室山から加入道山の尾根歩きは、丹沢によく通っている人でも、一番後回しになるコースではないだろうか。丹沢の他の稜線に比べて展望が得にくいことが、人気がいまひとつの原因なのかもしれない。

しかし周囲の山地から丹沢山塊を眺めると、この大室山の大きな姿がまず目に入る。さらに、よく晴れた冬の日に都心から西部の山々を眺めると、ひときわ大きな富士山の右横に大室山も捉えることが出来る。(雑誌「山と渓谷」2002年11月号を参照)
1500mそこそこの標高ながらも、根張りの大きな存在感のある山である。
大室山への登りから富士山
大室山への登りから富士山

新松田駅から西丹沢自然教室までバスに揺られて行く。紅葉ラインはどのへんまで下りてきているだろうか。
終点から、登山者は三々五々。ツツジ新道から桧洞丸コースが一番人気、次は畦ガ丸のようだ。大室山、犬越路方向へ進む人は、自分とあと2~3人だ。

白石キャンプ場を左に見ながら、車道を30分ほど歩く。バンガローに泊まっている人がけっこういる。
案内図のある用木沢出合で、水を補給し右の道に入る。堰堤を越し、しばらくは河原の道だ。昨日が雨だったせいか、沢の水量はけっこう多い。やがて沢を離れ、涸れ沢沿いに上がって行く。丸太の階段道が多い。紅葉はまだまだのようだ。

指導標には「犬越路まで○○km」と、キロ表示で書かれている。0.7kmの表示からの急登がやけに長い。とても700mしかないように思えない。これらのキロ表示は、おそらく水平距離で書かれているのだろう。実際の労力とあまりにかけ離れている。
導標には他に、「どこそこまであと何分」という時間表示のものがある。歩く時間は個人差がありるのであまり参考にならないようにも思えるが、実際にいくつか見て行くと、この時間表示はけっこう励みになってくる。

樹林が途切れ笹深い登りになると、背後の展望が開け、犬越路(いぬこえじ)の鞍部に着く。東側には大コウゲから桧洞丸への稜線、西側は避難小屋の上に、大室山への道が上がっている。眺めがよく爽快だが、ここからは富士山は見えない。
上部にわずか、紅葉のラインが見える。

大室山山頂付近
大室山山頂付近

展望を楽しんだ後、大室山への登りにかかる。
ジグザグの急坂はたいした距離ではなく、ほどなく緩やかな傾斜となる。樹林の隙間から南面に富士山が見え出す。
この辺は、遠くから眺めればあのゆったりしたスロープに見えるのだろう。鬱蒼とした林間の道、というのではなくけっこう眺めが効く。しかし夏にはやっぱり眺めは悪くなるだろう。

ブナが現れ出し、正面に大室山のゆったりした頂稜部が見えて来る。標高は1500mあたりであるが、すでに落葉した樹木も多く、早や冬支度入っているようだ。
しかし吹き抜ける風は冷たくもなく、爽やかな稜線を進む。富士山も随所で眺められる。
紅葉の尾根道
紅葉の尾根道

西の肩の直下になると、土留めの目立つ急登になる。大室山西の肩はT字路になっている。
右折して5分ほど、平坦道を歩き大室山頂上だ。あの堂々とした姿に似つかわしくない、地味な山頂。そこそこの広さはあり、樹林は葉を落しつつあるが展望はほとんどない。登山者は5人ほどいる。反対には、道志側に下りる道が続いている。

西の肩に戻り休憩する。このへんは樹間から、ある程度の眺めが得られる。休んでいる人もこっちのほうが多い。
眼下に横たわる道志村を挟んで、赤鞍ガ岳、菜畑山などのピークが望める。山肌はすでに茶色の割合が多い。濃緑の植林がやけに目立つ。
さて加入道山への尾根歩きとなる。ブナなど自然林が豊かで、気持ちがいい。丹沢の稜線はあちこちで崩落のあとが目立つが、このへんはあまりそういうところがない。

しかし思った以上に落葉のペースが早い。他の人の話を聞くと、奥多摩あたりでは同程度の標高でもまだ紅葉が始まったばかりのようであるが、丹沢は気候的な関係なのか、紅葉の時期が他より早く終わってしまうのかもしれない。
破風口への下りで展望が大きく開け、再び富士山を見る。その手前に畦ガ丸、御正体山の姿が大きい。三ツ峠山のアンテナも視界に捉えられる。遠望すれば南アルプスの稜線も見えている(ような気がする)。

加入道山へ
加入道山へ

破風口から登り返して、落ち葉フカフカの道を行く。道志側への分岐のあるピークを一つ越える。そよと吹く風の音、落ち葉を踏み鳴らす音だけが聞こえる、森閑とした山道。すでに晩秋から初冬にかけての雰囲気に満ちている。

加入道山も、大室山に負けず劣らず静かな、林の中の山頂だ。すぐ脇に避難小屋が見えている。
樹林に囲まれた山頂が人間の手により伐採されて、眺めをよくしてしまう例を最近多く見ているが、大室山や加入道山はこの静かな雰囲気が似合う。いつまでもこのままの形で残してほしい気がする。

道はここからやや左に下って行く。そのまま直進していけば白石峠から西丹沢に戻れるが、今日は道志の湯に下りて行く。
山頂から下って5分ほどで、右に分岐がある。そこには指導標が立っているが、加入道山と白石峠の方角を示しているだけで、分岐の先の表示が書いてない。一般的な道だと思っていたのでちょっと不思議に思った。
ブナの植林
ブナの植林

分岐に入り下って行くと、すぐに桧の植林となる。ベンチのあるところを過ぎ、さらに雑木林と植林帯を交互に下り、沢筋の道となりあずまやの前に出る。左から、白石峠からの道が下ってきている。
山頂からここまで、地図で見るよりけっこう距離がある。

あずまやからはほぼ平坦といっていいほどの、緩い下りになる。桧の幼植林地に入る。桧だけではなく、ケヤキやブナも植林しているようだ。ブナの植林を見たのは初めてだ。

車道に下りてからはたんたんと下る。道志の湯まではたいした距離ではない。加入道山からは1時間30分ほどであった。

道志の湯の前からは富士急行バスが出ている。都留市へ向かうバスに乗れば問題なかったのだが、京王線・橋本駅方面への帰路を取ってしまったので思った以上に時間がかかってしまった。今年冬に利用したときと比べて、また運行時刻に変更があったようだ。
終点・月夜野・西野々・三ケ木(みかげ)とバスを三回も乗換えることとなる(しかも道志の湯を15分遅れの発車、月夜野では40分近いバス待ち)。しかしローカル色豊かなのんびりバスで、車内でお菓子も売っている。
このすぐ裏側は中央線沿線なのに、道志はまさに陸の孤島である。でもそこが魅力の山域ではある。

紅葉シーズンの休日であるにもかかわらず道志~西野々間はバス乗客は2,3人。廃止路線にならないことを切に願うものである。


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