~富士が大きい南部町の奥山~
タイトル
しのいさん(1394m)
2009年12月7日(月) 晴れ時々曇り
7:15下部温泉-[国道52号他]-8:20奥山登山口8:30-8:52明源の滝-9:17渡り場の頭-10:07篠井山南峰10:45-10:50北峰-11:23渡り場の頭-12:00奥山登山口-12:20奥山温泉-小泉-[西富士道路、東名高速]-東京IC 歩行時間:2時間55分

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山梨県の南の端は南北に細長く突き出ていて、静岡県に割り込むような形をしている。
この半島のような部分は南部(なんぶ)町という地区で、緯度的には静岡の富士宮市や神奈川県の小田原市とだいたい同じ位置となる。したがって、山の国山梨県の中でも比較的温暖な気候に恵まれている。


篠井山から見る富士山は大沢崩れが荒々しい
[壁紙サイズ 1521×1024]

朝食はおにぎりにしてもらい、7時過ぎに下部温泉を出る。おにぎりの袋がいやに重いので中を見たら、3個と頼んでおいたのに3人分(9個)入っていた。
富士川街道とも呼ばれる国道52号線を南下、南部町で福士川に沿う県道に入って篠井山の奥山登山口を目指す。標高が低いので、まだ紅葉が残っている。12月の山間の町といえども、静岡県と同じ緯度であるためか、どことなくぬくぬくとした暖かな雰囲気が感じられる。

山を上っていく林道はほぼ舗装されているが、ところどころで砂利道となる。土砂崩れの多そうな地形で、このときも何箇所かで整備や工事が施されていた。
奥山温泉への分岐からさらに上がり、キャンプ場を見た後すぐに、奥山登山口に着く。車はここまでだが、林道はこの先も伸びていて、青笹山に通じているようだ。他に十枚山の登山口も近くにある。

下部温泉駅を出発
奥山登山口
渡り場の頭

登山口の駐車スペースには車が1台のみ。今日は静かな山になりそうだ。右手が篠井山の登山口となる。あずまやが立っていて、脇に「マムシ・ヤマヒルに注意」との標識がある。
篠井山はヤマヒルの多い山ということだ。どこまで本当かわからないが、あまりのヒルの多さで登るのをあきらめて引き返す登山者が多いとか、また樹林帯では上からヒルが降ってくるので、傘をさして歩く人がいるという話も聞く。冬はまさかいないだろう。いくら温暖化といっても、12月にヒルが出たら事件である。

細い林道をもう少しだけ行くと、木の橋で沢を渡る。以後しばらくは沢に沿った平坦な道が続く。荒れた感じはなく、歩きやすい。初めのうちは雑木林が見られるが、すぐに檜が優勢となる。猿が数匹、木から木へ飛び移っている。
明源の滝というナメ状の滝を見る。登山者が一人降りてきた。さっきの一台だけ停まっていた車の人だろう。これでこの山に入っている人間は、おそらく自分だけになったはずだ。
マイカー以外、たとえばタクシーを使っても来れないこともないが、12月の平日。そういう奇特な方などいらっしゃるはずもないだろう。

沢を何度か渡り返したあと、檜林の中を進んでいく。前方に見えていた稜線目指して、道は次第に傾斜を増す。上がりきったところでまたも小さな沢をまたぐ。ここには渡り場の頭との標識があった。
滝が多い

再び檜林の中の登りとなる。外側に自然林の明るい部分も見えていたので、すぐに暗い所から脱するのかな、と思っていたがそうではなかった。鬱蒼とした檜の人工林の登りは長く、1時間近く続いた。
奥山登山口からの登路は、ほとんどの行程が展望のない、檜林の中の道であった。黙々と高度を上げるしかない。

「ヒメシャラ」と書かれた木が現れるようになると、ようやく単調な登りも終わり。短い間だが、ブナも出てきて自然の潤いに満ちた山らしい雰囲気になる。
北峰との鞍部に至る道を分け、「山頂コース」と示された側に入る。最後の人工林の部分を終えると頂上も近い。一気に展望が開け、三角点と展望盤のある篠井山(南峰)頂上に立つ。

富士川を眼下に
北岳と間ノ岳
奥山温泉
篠井山を見上げる

富士川を眼下に見据え、富士山が大きい。これはいい展望台である。昨日の富士見山と同じく、眺めの得られる場所の限られる山だった。しかしその分、頂上からの展望はすばらしいものがある。
富士山の眺めは、丹沢や三ツ峠など、東側から見るものとは一味違い、高さとたくましさを感じる。大沢崩れも荒々しい。どちらかというと三ツ峠からの富士は女性的ないでたちで、こちら西側から見る富士山は男性的である。
日も十分にあたって、雪の白さも際立っていた。南方向には海が見え、さらに反対側の切り開きからは、北岳などの南アルプスも、距離は遠いがよく見えた。
その他の方角は樹林が茂り、眺めはない。大きなブナが1本、存在感を示すようにすっくと立っている。
これらの眺めが利く場所は、いずれも足元が切れ落ちて崖になっている。ロープなどの補助物は付けられていないので、展望に気を取られて足を踏み外しないように、注意が必要な場所である。

日差しはあるものの、昨日に比べてかなり肌寒い。今日は日本列島に寒気が下りてきているようで、標高せいぜい1300m台の山でも頂上は寒くて長居できない。
北峰に寄ってみることにする。小さく下って登れば、物置のような社殿のある北峰。展望は乏しい。なお、鞍部や北峰からは、御堂口、馬込新道の2つのコースが分岐している。今日は車なので往復だ。

北峰と南峰の鞍部から下りはじめる。谷間を下り、先ほどの「山頂コース」の標識に出会うまでは踏み跡が薄い。植林の外側は広葉樹林が豊かなので、登路がずっと植林の中というのは登山コースとしては惜しい気がする。
長い下りを経て沢筋。気がつくと、西の空はずいぶん雲が出ていた。

奥山登山口に下り立つと日差しが戻って、暖かささえ感じる。少し前の登山ガイドでは「上級向き」と書かれていた篠井山であるが、車でなら3時間の行程となる。登山道も整備されており、歩くのに特に難しいところはなかった。

車で少し下り、奥山温泉に立ち寄る。普通の日帰り温泉施設なのだが、こんな何もない山奥に、唐突と出現する印象だ。
中はきれいで広いが、この周辺には他にキャンプ場くらいしかないので、集客の面ではかなり苦労しているのではないか。
平日だったこともあるが、広々とした浴室内でのんびりできた。ただし中の休憩室を使用するのは別料金がかかるので、早めに車に戻る。

道の駅とみざわのある福士地区からは、篠井山の大きな山体が望めた。道の駅とみざわに寄ってから富士宮に回り、大きな富士山を横に見ながら、東名高速で帰った。




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