~茶畑越しに望む安倍奥の山々~
タイトル
じゅうまいざん(1726m)
2004年11月28日(日)晴れ後曇り

6:37静岡駅-[バス]-7:55六郎木8:00-8:50中ノ段-9:10登山口9:15(道間違い→引き返し)10:10-10:30直登コース分岐-10:40一つ目の沢-11:20二つ目の沢-11:25三つ目の沢--11:50十枚峠11:55-12:15十枚山12:55-13:25涸れ沢-13:50直登コース分岐-14:05登山口14:10-14:35中ノ段-15:10六郎木15:51-[バス]-17:20静岡駅
歩行時間:6時間20分
マップ
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十枚峠
十枚峠
富士山
富士山
快適な稜線
快適な稜線

「健脚向き」とある直登コースを避けこの十枚峠経由コースをとったのだが、こちらもかなりの急登の連続である。
1つ目の沢で水を補給し、さらに登り2つ目の沢を渡る。このへんまでずっと桧林であったのがようやく自然林の道となる。
3つ目の沢まではすぐだった。登りはさらにきつくなり、笹原の道が見えてきたと思うと頭上が明るくなる。待望の十枚峠である。

十枚峠では木の枝越しに富士山、振り返れば安倍奥の山稜の眺め。しかし1時間遅れた結果は明白で、空の多くはすでに雲に支配されていた。

十枚山への道は笹原の切り開きで快適だ。葉を落としたブナやたわわに赤い実をつけたアシビ、前方には十枚山の緑色の山肌が手招きしている。今までのほとんどの行程が、鬱蒼とした植林帯の登りだったので、稜線歩きの快適さがよけい身に染みる。

東側の樹林に切り開きを見つけ、富士山を視界にとらえる。ここから見ると雪のつきの悪い大沢崩れがあまりにも大きく、まるで富士山に大きな穴が開いているように見えて面白い。

すぐに十枚山頂上となる。すでに12時を過ぎてしまった。楽しみにしていた南アルプスは、時間が遅いせいか厚い雲の帯に覆われて全く見えない。残念至極。
まあこれも、新参の登山者に対する安倍奥山稜のひとつのご挨拶かもしれない。初回訪問で見えてしまっては虫が良すぎるというものだ。
今度は道を間違えないで登って来なさい、と言っているようだ。

20名ほどの登山者が憩う頂上は、気持ちのよい開放的な地だ。寒くなければ昼寝に最適だろう。
北側は樹林に展望を閉ざされているが、南側の下十枚山から南に山並みが幾重にも重なり合っている眺めは圧巻だ。
十枚山頂上
十枚山頂上


やはりこの安倍東南稜は縦走が気持ちよさそうだ。無雪期は水が得られないという難題があるが、下部が植林の多い山域だけに稜線歩きの価値は高い。

ところで縦走の場合はこの十枚山頂上北側の笹原にテントを張るケースが多いと聞いていたので、切り開きでもあるのかと周囲を探してみたが、適地は見つからなかった。頂上その場に張るのだろうか。

下山は直登コースを下る。これもかなりの急坂が続く。
こんな時間になってもまだ登って来る人がかなりいる。狭い急な斜面で、20名以上の団体の通過待ちに時間をとられる。しかしこの道もしばらくすると、桧林の中の単調な行程となってしまう。
山麓の安倍川流域
山麓の安倍川流域

先ほどの分岐点を通り過ぎ、間違えた登山口をも過ぎて中ノ段の集落に戻る。すっかり曇りの空になってしまった。

民家には住人の姿もちらほら見られる。同じような形態の山上集落として、奥多摩・鷹ノ巣山の奥集落、秩父・奥武蔵の萩平集落などを思い出すが、こういう場所に居を構える人々の生活はどういう習慣の上に成り立っているのだろう。興味が湧くのだが、あいにくこのへんに民宿など無く、その生活ぶりをうかがい知るすべはない。

茶畑をぬって車道を下り、関ノ沢集落、そして六郎木に戻る。バスが来るまで40分ほど。そのへんをうろうろしていたら酒屋を見つけてしまった。寒いがビールで時間をつぶす。

十枚山は天気の関係で展望はいまひとつだったが、闊達な笹原の稜線、うねるような山並み。そして独特な味わいの集落の情景が目に焼き付いた。日本にはまだまだ各地に、自分の知らない原風景が昔の姿のままで残っている。これらを無くしてはならないと思う。


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