~登山者で賑わう巨樹の森~ つるねやま(1369m) 2008年11月2日(日) 曇り時々晴れ
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3年ぶりに大マテイ山~鶴寝山の稜線を歩く。 松姫峠に上野原駅発の路線バスが通って以来、静かな山の代表だった牛ノ寝東端の山稜は、人気のハイキングコースに一変したようだ。地元の小菅村や山梨交通バスによる集客力向上の努力の結果である。登山道が新設され、各所の指導標も完備された。 元々樹林の美しい山域でもあり、穏やかで危険の少ない山道とあいまって、この魅力溢れる山には多くの人が訪れるようになっている。前回の新緑時に続き、紅葉の11月初旬に登ってみた。 紅葉シーズンとあって、青梅駅からの青梅線は最初座れず。奥多摩駅で乗った小菅行きのバスにも途中まで立っていた。 田元橋で下りる。川を渡って山沢地区の集落に入っていくと、すぐに小菅の湯行きの村営バスに抜かれる。そのバスに乗って小菅の湯から登り出すことも出来るが、これは下山コースにとっておく。 突き当たりで左折、この通りは国道139号である。数分歩いたところで右手に「牛ノ寝方面登山口」の標識があった。前回の川久保登山口と同じである。 砂利道に入って民家の横を通る。道端にかぼちゃが落ちている。すぐに正面の植林帯の山に入っていく。 雑木の尾根をジグザグに上がっていくと、前方に黒い小さな動物が歩くのを見る。猪だろうか、まさか熊ということはなさそうだ。 向こうもこちらの存在に気づき、あわてて上に逃げていく。が、自分も進む方向は同じなので、次のジグザグでまた出会ってしまう。でも結局何の動物かはわからなかった。先週の酉谷山の猿に続き、2週連続の野生動物である。 やがて頭上が明るくなり始める。葉の色合いが軽くなったからだ。全体的にはまだまだだが、この上の尾根の紅葉に期待が膨らむ。
急な登りがひと段落し、気持ちのいい自然林の尾根となる。「コナラ」「ヤマウルシ」など、樹木に木の名前を記した板が付いている。 やがてモロクボ平で川久保からの道と合流。高度を上げるにつれ少しずつ紅葉が進んでいくのを感じながら尾根を行く。しかし尾根といっても歩く道は稜線上についておらず、尾根の北側を歩くところが多い。それ故日が射さず、紅葉の輝きもいまひとつである。 高指山(1274m)を巻くように高度を上げる。遠くから人の話し声が聞こえてくる。小屋の残骸を見て明るく開けた大ダワに着いた。 団体さんが先着していて、雲取山や飛竜山の眺めを楽しんでいる。青空が気持ちよく、腰を下ろして少し休憩する。なお、標柱には大ダワではなく「棚倉」との地名が書かれてる。 ここまでの登路の状況からみて、稜線に上がれば紅葉は見頃と踏んでいたのだが周囲を見るとそうでもない。まだ緑の葉をつけた木々が目立つ。ちょっと不思議な気がしたが樹木の種類でも違うのだろうか。 目的の鶴寝山の方向とは反対側を、少し歩いてみる。少し高度が上がれば色付きもよくなるかもしれないが、あいにくほぼ平坦な道の続くのが牛ノ寝通りの特徴である。 狩場山(1376m)まで往復してみるが紅葉の程度は変わらなかった。それにしても牛ノ寝通りは歩きよい道である。 大ダワに戻り改めて鶴寝山を目指す。こちらもあまり急なところがない穏やかな道が続く。 さらに大人数のグループが歩いてくる。奥多摩の鷹ノ巣山や三頭山などに比べると、地味で特徴のない山域にしてこれだけの人出。やはり1日1本とはいえ松姫峠にバスが通ったことが大きい。 少し行くと分岐がある。前回来た3年前にはなかったものだ。指導標には右に折れる方向を日向みちと書いている。大マテイ山、鶴寝山の南側には登山道が新設されたようだ。 新しい道に入ると、その名の通り日当たりがよく明るい。しかし目を見張る樹林帯が続く北側の道に比べるといささか単調な感じがする。 上の方で、何かがこちらを見ていた。カモシカだった。登山道で動物を見るのは楽しみだが、人と動物との生活するエリアは本来別のもの。東北で熊が民家に下りて騒ぎになるなど、両者の距離が縮まっていくことは手放しでは喜べない。
指導標の所で大マテイ山への登りに入る。かなりの急登だ。登山道を通す為に樹林が伐採されていた。 平坦になり大マテイ山頂上(1409m)に達する。樹林下の地味な場所なのは3年前と変わらなかった。山の深さを感じる。 そのまま斜面を下り、北側の登山道をやはり歩くことにする。こちら側からだと大マテイ山へのはっきりした登り道はないようだ。 まだ緑の占める部分が多いが、期待通りの落ち着いたたたずまいの森だ。やはり登山道は従来の北側のほうがいい。ブナの大木もある。 松姫峠側からもどんどん人がやって来る。やがて左手に小菅の湯への道を見る。少し先にまたしても分岐。ずいぶんややこしくなった。直進は巨樹のみち。ここは右手に分かれる日向みちに再び入ってみる。 鶴寝山のまろやかな山体がどんどん近づく。山頂部を右下から回り込むように、最後は急斜面をひと登りする。 運動靴を履いたバスの運転手さんが下りて来た。おそらくバスの発車時刻の合間を利用して、散歩に来たのだろう。
鶴寝山頂上(1369m)からは、樹林の切り開きから富士山が大きく見えた。山頂は平坦で広く、奥のほうの紅葉のきれいな場所で休憩する。 小菅の湯に下山するために来た方向へ戻る。鶴寝山のもう1本の登山道、二輪草コースを使う。 春はニリンソウが多く咲くそうだが、今の時期は人通りが少なく、茸採りの数人に出会うのみ。鹿除けの網が張られている。 途中で小菅の湯方面からの尾根が合わさってきた。登山道としては使われていないようだが、今後整備されてもいいようなすっきりした尾根に見える。 「巨樹のみち」と合流し、先ほど見た小菅の湯への下山路に入る。10分ほど下るとトチの巨樹がある。ここにも大人数のグループが見学に来ていた。この付近には他にも巨樹が多く見ごたえがある。 檜の植林帯の急な尾根を下る。モロクボ平への道を分けると沢音が近づき、ワサビ田沿いの道に出る。巨樹や花など春や新緑の時期にも歩いてみたい道である。 山沢沿いに付けられた木橋をいくつも渡り、林道に出る。さらに20分ほど歩いて小菅の湯に着く。三連休の中日とあって大いに賑わっていた。温泉前のバス停には50m位の長蛇の列。温泉の中も洗い場の前には行列だ。やれやれ。 それにしても、裸の男らが行列をなしているのは見ていて異様な光景である。 2時間後のバスも混みそうなので、帰りは小菅の湯からの村営バスには乗らず、田元橋まで歩いて下って直接西東京バスに乗ることにした。日の入りは随分早くなり、バスに乗り込む5時過ぎにはすでに真っ暗になっていた。 小菅村やその周辺の山に来るといつも、時間がゆっくり流れているのを感じる。1日のんびり時を過ごすのにいい場所である。 |