~霧の似合う奥多摩の寂峰~
タイトル
てんちざん(981m)から
おおおだけさん(1266m)
2009年4月5日(日)曇り

7:46白丸駅-8:10柿平橋-8:25カタクリ山8:45-9:05貯水池-9:15五叉路-9:45支尾根-10:15 674m峰-10:22登山道合流-10:55天地山11:10-11:45鋸尾根-11:55鋸山-12:55大岳山13:35-13:45大岳山荘-14:05白倉分岐-15:05白倉登山口-15:30白倉15:48-[バス]-16:15武蔵五日市駅
歩行時間:6時間25分
マップ
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今日は「バリエーションルートを楽しむ」、いわゆる松浦本に掲載されている、奥多摩のコースを歩く。
海沢のカタクリ山から天地山、そして鋸尾根に出る行程で、一般登山道とは言えないが、古い地図やアルペンガイドなどでは破線表示になっている。カタクリ山には文字通りカタクリ、そして天地山周辺にはイワウチワが咲くという。
大岳山の前衛に位置する天地山は、その特徴ある尖った山容が麓からもよく見え目立つ割には、あまり登られることのない寂峰である。


朝露に濡れたカタクリ。「海沢のカタクリ山」にて

青梅線を白丸駅で下り、すぐに青梅街道を渡って、まず海沢のカタクリ山に向かう。わかりやすいのは、青梅街道沿いに歩き海沢大橋を渡る行き方なのだが、松浦本に従い数馬峡橋を渡って、多摩川沿いの遊歩道を行く。
以前入った鴨足草(ゆきのした)という高級うどん店は、建物はそのままで「アースガーデン」という店に変わっていた。

山側の壁面にはもうミツバツツジが咲き始めている。意外とアップダウンの多い遊歩道を歩いていくと、やがて民家の間を縫う舗装道に変わる。休憩舎を経て柿平橋を渡ると、左方向に指導標。すぐ先に「海沢のカタクリ山」との指導標が立っていた。
急な斜面を登っていくと、すぐにたくさんのカタクリの花が見られる。咲き乱れている、といった印象だ。
まだ朝早く、しかも曇っているので花はよくて半開きだ。しかし朝露に濡れた「おねむ」のカタクリの姿もまたいいものである。かたわらにアズマイチゲ。これもお日様が昇るのをじっと待つように、みなこうべを垂れている。
それにしてもこんな住宅地の中の小さな裏山にこれほどの群落。これは全部自生のまま、毎年咲き続けているのだろうか。また今まで何回も来ている場所なのに、今まで存在を知らなかったのが恥ずかしいくらいだ。
青梅線からすぐ近くの所にこんな花園があったのである。


展望列車の青梅線
カタクリ山は民家のすぐ裏
イワウチワ
天地山
地べたの山名板
斜面を登りきって、鉄塔のすぐ上を通り過ぎる。鉄塔の敷地内にもカタクリがたくさん咲いている。
薄暗い植林帯を通って、墓地の横に出る。エイザンスミレを多く見る。正面に見える貯水池目指して下り、その貯水池を回り込むように進む。
再び民家の中の舗装道を緩く下っていくと、松浦本いわく「変則五叉路」に出た。天地山へは、一番目立たない右折方向の細い林道を登っていくことになる。

道なりに進んでいく。路肩にはミミガタテンナンショウが意外性のある姿を見せている。林道が右に折れるところで正面の支尾根にとりつく。テープがあるのでわかりにくいことはない。
道はよく踏まれているようだ。天地山は今でこそマイナーな部類になってはいるが、昔はよく歩かれたハイキングコースだったのかもしれない。奥多摩の山を歩いていると、そうした「いにしえのコース」によく出合う。例えば生藤山の北側からの登路である矢沢林道コースも、古い石垣などが残っていて、昔は賑わった道なのだろうなと思わせる。

岩が出てくるようになると、イワウチワが咲いていた。それほど大きな群落ではないが目の前でじっくり見ることが出来る。
大塚山の鉄五郎新道や御岳山サルギ尾根など、奥多摩でイワウチワの見られる道はどれも一般登山道ではなく、登山ガイドなどで紹介されていない。それはこの天地山支尾根も同じである。岩場が多く一般の登山者には勧めにくいという面もあろうかと思う。
それでも鉄五郎新道などはこの春かなりの賑わいとなったようだ。ここ天地山はそう群落も大きくないし、人気化することはないと思う。花よりもむしろ、静かな尾根歩きを好む人向けだろう。

イワウチワからさらに急な登りを経て、ようやく主尾根に乗る。目の前(西方向)のピークが674m峰だ。天地山へはまずこれを越えていくのだが、そこから先もアップダウンがきつい。さらに標高差もまだ300mあり、地図で見た以上に時間のかかる登りである。

北側からもう1本の道を合わせ、さらに登る。植林帯を左に見ながらの急登。さらに行くとようやく左手に大岳山の姿が見えてくる。しかしまだ高く、遠い。

尾根が広くなり、芽吹き前の自然林の登りとなる。一番きついこの登りを済ませ、アシビの木を分けるように進むとようやく、平坦な場所に出る。
ここが天地山だろうと確信、周囲の木を見渡し山名板がかかっているのを期待したが見つからない。「奥多摩山歩き一周トレール」の写真で見ていた天地山の山名表示板は、地面に置かれていた。

北方向が少し開けてはいるものの、眺めは乏しい。静けさがあたりを支配し、霧の似合う山、という感じがする。仙人でも住んでいそうな雰囲気である。
山頂は展望がなく地味であっても、苦労して登ってきた充実感を味わうことの出来る、いい山だと思う。

さて、このまま鋸尾根に出て下山とするか、大岳山まで足を伸ばすか。まあ後で考えよう。
鋸尾根へは、アップダウンが続くものの、単純な標高差はそれほどでもなく、あと100m以内である。しかし天地山からの最初の下りは、尾根がやせている上に岩も出ていて少し緊張する。ロープが設置されている場所もある。
すぐに大きな岩に出合う。岩の基部にイワウチワの葉がついていたが、開花はしていなかった。ようやく鞍部に下る。檜の幹に「平成19年 花粉枝打」とシールが貼られている。東京都のご指導で花粉対策の作業が入っているようだ。
ここからの登り返しも楽そうではないが、難所を越えたのでひとまずほっとする。

午後から天気は回復するとの予報とは裏腹に、山の上の雲は分厚い。4月のうららかな春の陽気を期待していたのに、今日は肌寒ささえ感じる。
鋸尾根に合流する。大岳山と奥多摩駅を結ぶ長い尾根であり、ここから先は一般登山道である。すぐに奥多摩駅から登ってくる登山者と出会う。天地山から来た道は、指導標は「行き止まり」と示していた。
どうしようか迷ったが、大岳山はここのところごぶさたなので、登ることにした。

急な下り
自然林の鋸尾根
大岳山頂
塩茹で、おひたしで

鋸山へは植林優勢の尾根をひと登りする。なお、この鋸山(1109m)を「天地山」と呼んでいる文献もある。また、天地山の三角点はさきほどの合流点よりさらに下った位置にあり、すなわちこの一帯で天地山と呼ばれうる場所は、自分がさっき踏んだ山頂を含めて、3箇所もあるのだ。

大岳山直下までは、平坦もしくは緩やかな登りがしばらく続く。まだ長いが頑張ろう。
以前井戸沢尾根から登ってきた地点の中岩山を過ぎる。自然林の尾根を透かして、大岳山の特徴ある突起が覗く。上空も、雲の間から少しだけ青い部分も見えるようになった。

やがて傾斜が増し、岩っぽい尾根を通過。登山者が次々と下りてくる。もう時間的には登る側の人はほとんどいない。いったん穏やかな道になるも再び急坂を登り、大岳山頂上に着く。
明るく広い眺めは変わらずだが、周囲の木が伸びてきている。雲が厚く富士山は見えない。代わりに雲取山や大菩薩嶺が存在感を示している。

山頂には、登山者がおすそ分けする餌を求めて、コガラが何羽か飛び回っている。大岳山ではおなじみの風景だ。しかし山頂の標柱には、「人と野鳥との関係を見直してみませんか」という紙も貼られている。
人が餌付けすることで、野鳥が自分で食料を探す能力が減退してしまうらしい。言われてみればもっともなことである。
都心で「鳩に餌をやらないで」というのとは訳が違う。1回ぐらいいいではないか、と何人もの登山者が考えてしまったら、野鳥の生態系にも影響を与えることになるだろう。人と動物、いい関係を保つ為に、お互い一定のを距離を置くことを登山者自らが心がけねばならない。
しかし癒しの場を山や自然に求める昨今の傾向を考えれば、世の中にそういう流れを作るのはたやすいことではなさそうにも思う。

もうかなり遅い時間になってしまった、下山は最短の白倉コースとする。大岳山荘に下ると、コンクリートの展望台は老朽化で危険ということで、立入禁止になっていた。
展望台越しに見えていた馬頭刈(まずかり)尾根に向かって緩やかに下る。笹が風に揺れ快適な尾根道だ。空もずいぶん明るくなってきた。
馬頭刈尾根は以前一度、登りに取ったことがあるが、いずれ下りでもゆっくり歩い通してみたい。

白倉分岐からシグザグの道を下る。出だしはかなり急であるがいかにも奥多摩らしい、落ち着いた静かな山道である。
よく注意していると、丁目石がところどころに立っているのに気づく。白倉道はかつての大岳山参道としてよく歩かれた道だ。
バスの時間は十分間に合う。途中で戸倉三山を眺めながら、適当に休憩しゆっくり下る。右手に祠の奉られた小さい小屋を見ると、長かった大岳山越えもそろそろおしまいだ。

林道に下り立って道なりに進む。白倉地区の民家には、ミツバツツジや開花間近の桜に混じって、まだ梅が開いている。
武蔵五日市駅の駅前で「のらぼう菜」の出店販売をしていたので、一袋買って帰途に着く。


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