28、29日と休みで、どちらかの日に奥多摩の紅葉を見に行くことにした。
気象庁の天気予報では28日曇り/雨、29日曇り/晴れなので、誰でも29日を選ぶ。ところが蓋を開けてみると28日はほぼ快晴。悔しかったが次の日もお日様マークはあるのでよしとしよう。
しかしこの楽観的な予想も、結果的には絵に描いたように見事に裏切られてしまった。米国の天気予報(AccuWeather)では28日と29日の東京の天気を真逆で予想しており、何となく嫌な予感はしていたのだが・・・。
霧に煙る浅間尾根
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今日は久しぶりに電車利用だ。暗いうちに家を出る。季節も進み、夜明けがずいぶん遅くなった。
奥多摩駅からバスに乗る。平日なので東日原のひとつ先の中日原で下車する。ただし奥多摩駅に7時台着の青梅線で来た場合、土日に比べてバス便の接続が悪いので、いつもより遅めの歩き出しである。
巳ノ戸橋を渡って沢沿いに進む。一汗もふた汗もかいて稲村岩基部に到達。平日のこんな天気の日でも歩く人はけっこういる。
時間が経てばこのどんよりした曇りも少しは好転するだろう、その証拠に時折り自分の影が登山道に薄く映っている。厚くない雲の上に太陽が控えている証拠だ。もしかしたら山頂は雲海の上で晴れているかもしれない。
しかしそんな淡い期待もむなしく、稲村岩尾根の急登をこなし、高度を上げていくにつれ霧はどんどん濃くなる。今年は全国的に紅葉のペースが早く、奥多摩の1700mの山でももう中腹まで紅葉ラインが降りてきているようだが、霧が視界を閉ざし、ブナ林が色づいているかどうかもよくわからない。
雨が降っているわけではないが、気がつくとシャツやザックがしっとりと濡れてしまっていた。雨具とザックカバーを着ける。秋空も樹林の様子も見られないとなれば、稲村岩尾根はただのきつい登りの道でしかなく、苦行以外の何物でもない。
ヒルメシ食いのタワでひと休みする。少しお年を召した夫婦が二組。平日の山らしい。
タワから山頂まではさすがにほとんど落葉しており、ただ鉛色の空が頭上にあるのみ。さらなる急登の後鷹ノ巣山山頂に到着する。
もちろん回りは真っ白け。連なる山並みはおろか、眼下にあるはずの浅間尾根や榧ノ木尾根の姿もない。標高1700mを越えると、日差がないこともあってさすがに肌寒い。フリースを着込む。
こんな空模様ではあるが、今日はガスコンロを持ってきたので、簡単な料理とコーヒーでゆっくり滞頂する。さすが鷹ノ巣山、平日でも登ってくる登山者は後を絶たない。
紅葉の季節は、やっぱり浅間尾根を歩きたい。下山後のバスが不便だが、国道まで歩けばバス便も少し多くなる。
鷹ノ巣避難小屋から水場を経て、浅間尾根の緩やかな下りが始まる。始めのうちはアシビの多い道だが、やがてミズナラ、ブナ、カエデの木が豊かな森となる。
しかしこちらも霧が濃く、多くの高木の紅葉がどんな程度なのかがよく見えない。ただ、目線の近くの樹林を見る限りでは、それほど鮮やかな色づきは認められなく、特に赤系が少ないように思える。
霧が晴れないか、かすかな希望を抱きながら歩いていくが、檜の植林に入ってしまった。今日の紅葉狩りは著しい消化不良で終わった。しかも皮肉なことに、檜林を下っていくとみるみる霧が晴れ、浅間神社あたりでは樹林の間から麓が見下ろせるようになってきた。
「奥」の登山口に下り立つと、今日初めて眺めが開けた。奥集落最上段の民家には、冬桜が咲いていた。
まあ何度も山を歩いていれば、こんな日もあるだろう。しかし今年の秋は焼山、鳥海山、高原山と天気にあまり恵まれない山行が続いている。昨日登っておけばよかった、とつくづく思う。
林道を歩いて峰谷に着く。ここ始発のバスは2時間後なので峰谷橋まで歩く。土休日であれば、奥多摩駅から峰谷へのちょうどいい朝のバス便があるのだが、平日はそれがない。奥多摩の西東京バスは、登山の足としては土休日ダイヤのほうが格段に利用しやすい。
一方、もえぎの湯がそれほど混んでおらず、ゆっくり温泉に浸かれたのは平日ならではである。
6時前にして真っ暗になった国道を歩き、奥多摩駅から電車に乗る。