2014年も押し詰まってきた。寒い日が続いているが、年末休みの天気はまずまずのようだ。
7年ぶりに檜原村の浅間尾根を歩く。メインの浅間嶺は山頂部の桜の古木が切られて、展望が広がったそうである。
眺めが開けた浅間嶺。石尾根から奥秩父の稜線も一望
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五日市線が終点の武蔵五日市駅に着くときは、この時期だとだいたい日の出の時刻になり、住宅街から真っ赤な太陽が昇ってくるのを見る。
数馬行きバスの乗客は10名ほど。今日の登山口である払沢ノ滝入口へは、藤倉行きに乗るかまたは滝入口経由の数馬行きバスに乗る。
目的のバス停に着く。それほど寒さは感じないが、待合所の寒暖計は氷点下4度をさしていた。小道を緩く登っていく。払沢ノ滝は今日はパスし、時坂峠方面へ向かう。人家を縫うようにつづら折れの里道を登っていくと、次第に背後の眺めが広がってくる。春先には福寿草が咲く民家脇の斜面は、今はただの枯れ地になっていた。
半舗装と山道を繰り返し、尾根に上がると時坂峠である。ここもまだ舗装路で、かたわらに石標と首なし地蔵が安置されていた。
林道を歩いていくと、左手が伐採され浅間尾根がよく見える。大岳山の眺めのいい峠の茶屋から少し下ってここから登山道となる。すぐにそば処がある。こんな山の中で、しかも登山道に入ったところで営業しているのは今では珍しいかもしれない。冬季は休業で、来年の4月よりまた再開するようだ。
薄暗い樹林帯の登りから、明るい自然林の尾根へ。カタクリ自生地への分岐からさらに行くとさらに自然林の密度は増す。奥多摩らしい静けさに満ちた冬枯れの風景である。小岩分岐からは直接稜線に上がる。落ち葉が多量に敷き詰められていて登山道が判然としないところもある。
稜線に上がってからは左に折れ、自然林豊かな中を入沢山へ。さらに先を行くと天領山との山名板が。これは前回来たときは気づかなかったが、どうやらこの浅間尾根と言われる部分の最高点の936mである。
南方には笹尾根の稜線の奥に富士山の上部が見え続けている。小さなコブを2つほど越えると松生山に到着した。2013年春にアンテナ施設とソーラーパネルが設置されたことにより一帯は伐採され、眺めがよくなっていた。富士山もよく見える。浅間尾根からの富士山は、笹尾根が高くて上半分しか見えないのだが、松生山からだとちょうど笹尾根が一段低くなっているので、富士山は裾野のほうまで見える。背後の御前山も大きく眺められ、松生山はずいぶん明るい山頂になった。
来た道を戻り、入沢山から再び広い尾根を緩やかに下り登りする。浅間嶺への登り返しでは、右手の斜面に伐採された木が多く積まれていた。植えられていた桜の木が老木化しており、現在若木に植え替えを行っているそうである。もともと眺めのいい場所がさらに伐採され、浅間嶺は大展望の頂になった。富士山側も大きく開けたが北側はほとんど木がなく、大岳山、御前山だけでなく石尾根の山々がパノラマで眺められるようになった。
風を遮るものがあまりないので、少し寒いものの日差しは暖かく、眺めを楽しみながら軽く食事を取る。
休憩所のある浅間高原まで下ってみる。ここは元から大岳山などの眺めがよかったが、山頂の展望が勝ってしまった。登山道はここから尾根の北側につけられているので、霜柱が溶けずに発達しており、大きいものは高さ20cmくらいまで地面を押し上げている。そのため、それを踏むごとにズボズボと落とし穴のごとく足を取られながら歩くことになる。ただ、凍結している場所はなかったのでアイゼンの必要もない。と言うより今日はアイゼンを持って来なかった。
こちらの斜面も、伐採が施され展望地となっている場所があった。笹尾根も昨年歩いた際に、一部の登山道が伐採作業で通行止めになっていたし、奥多摩の山はあちこちで、植林の植え替えをする時期に入っているのかもしれない。藪山が伐採されて大展望の頂になり、その後樹林が伸びて見通しが悪くなる頃再び伐採、の繰り返しが奥多摩の山にもあるのか。
人里(へんぽり)分岐、浅間ノ宮の祠を過ぎ、気持ちのよい自然林の尾根を歩いて一本松の下まで来る。せっかくだから一本松山頂を踏んでいく。ここも標高930mで浅間嶺より高い。
数馬分岐で浅間尾根登山口への下山路を分けさらに行く。植林がちの道となるが、再び眺めが開ける。サル石という大きな岩があった。藤原峠で林道を横断した後も植林下の寒々とした道が続いた。今日は数馬の湯に下りたかったので、この先の御林山手前の分岐まで頑張って歩くことにしていたが、最後へけっこうな登り返しとなった。
最後は汗をかいてその御林山分岐に到達。この下山地点が今日の標高最高点という、どうも今日はスタイルの悪い山行コースとなってしまった。
下山路は初め、急な岩がちの坂となり気が抜けない。しかしそれも短い間で、じきに三頭山を正面に穏やかな尾根下りになった。車やオートバイの音がだんだん大きくなってくる。見覚えのある車道に降りたところが、仲の平バス停のすぐ上だった。5分ほどで数馬の湯に着く。
登山シーズンの終わった山間の日帰り温泉施設は人も少なく静かだった。湯船を独占し冷えた体を温める。考えようによっては今日はこの温泉に入るために山を歩いてきたようなものだ。
少しゆっくりしていきたい気もしたが、あいにく風呂を上がったちょうどの時にバスが来てしまった。まだ明るいうちに武蔵五日市駅に戻る。帰りの電車もホリデー快速ですぐの発車だった。