7年ぶりに浅間尾根を歩く。
払沢(ほっさわ)の滝入口バス停で下り、まずは払沢の滝を見に行く。谷の奥まった位置にあるこの滝は冬になると氷結し、年によっては完全に凍ってしまうこともあるそうだ。
しかし暖冬の今年はほとんど凍ることはなかったようである。
払沢の滝
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時坂(とっさか)の集落を見ながら車道を緩く上がって行く。福寿草が満開だ。少し上にある民家の斜面はかなり見ごたえがある。
これは植栽なのだろうか。それにしては雑草の間に元気よく咲いているので自然な感じがしていい。時坂集落の福寿草はこの浅間尾根ハイキングの見所のひとつである。
2度ほどショートカットの道を使って時坂峠。さらに車道を少し歩くと、右手に御前山登山口からの道を合わせる。店屋があり「峠の茶屋」との大きな看板が立つ。
北面に御前山などの奥多摩の山の眺めがある。ここが車道終点で、以降は山道となる。
旧道を少し下って、しばらくは杉林帯の登りとなる。途中で「瀬戸沢の一軒家」と呼ばれる家があり、瀟洒な門構えのそば屋になっている。支尾根に上がると自然林の割合が増える。
さすが奥多摩山歩きの入門コースで、軽装のハイカーが多く行き交う。その割には静かで、要するに単独行の人が多いのだ。皆自分だけの時間を楽しんでいるようである。
7年前に歩いているはずであるがどうもこのへんの記憶がない。後々調べてみたら、前回は松生山から直接東の尾根を辿り峠の茶屋付近に下っていた。
前方が開け、気持ちの良い広葉樹の道となった。と同時に、上のほうから耳障りなチェーンソーの音がしてくる。工事でもしているのだろうか。
小岩分岐から少し上がって、さらに次の分岐で左の踏み跡に入る。松生山への道は一般登山道でない。はずであったが、何とはっきりした道がジグザグについている。しかも路面に凹凸がなく石ころのひとつも落ちていない。これはいくら何でも整備され過ぎだ。
と思いながら登っていると、上の方で休んでいる人から声をかけられた。「歩きやすいですか?傾斜はこのくらいでいいですかね?」ちょうどここに道を造っている所だったのだ。
とすると、自分がこの松生山への登山道を使った最初の登山者ということになる。さっきはチェーンソーがうるさいと思っていたのだが、伐採して造られた道を自分が真っ先に歩いているわけで、文句は言えなくなってしまった。
その人の休んでいる場所より上はまだ整備はこれかららしく、踏み跡といったほうがいい道のままである。
急登を詰めると入沢山だが、平坦で頂上という感じはない。しかしこのあたりは自然林が豊かで、松生山までその気持ちよい道は続いている。小さいアップダウンをいくつも越えて行く。
南斜面にはダンコウバイが花を付け始めていた。
道の両側に肩ほどの笹が現れてくると、じきに松生山頂上である。
三等三角点があるが見晴らしは特筆すべきものではない。以前来たときはもう少し展望がよかった覚えがある。また頂上の東半分はモミ?やヒノキの植林になっている。入沢山のほうが雰囲気がいいので休憩はそこですることにした。
分岐まで下って、自然林をなおも歩いて浅間嶺を目指す。ちょっとした高台に上るとそこが浅間嶺頂上だった。少人数のグループや家族連れなしどで賑わっている。
北面に御前山、大岳山が雄大に眺められ、南側には笹尾根。その後に見えるはずの富士山は雲の中で見えなくなっている。
頂上には桜の木が多数植えられている。しかし休憩出来るスペースを広くしようとしているのか、切られてしまった木も多い。山頂というよりちょっとした公園という印象がある。
休憩所のある浅間高原に下りる。今日はさらに尾根を縦走するが、ここで上川乗に下る道もよさそうである。
縦走路は主に北側に面していて、寒い冬の日は凍結しやすい。7年前の2月もガチガチに凍っていた。しかし今日は長袖シャツでもいいくらいの暖かさである。
同じ山を何度か歩くと、決まって前に歩いた時のほうが寒かった印象がある。これは気のせいであろうか。
尾根を西に進むにつれ、落葉樹の割合は若干減ってきて、杉林の下を歩くことが多くなる。しかし道はよく落ち着いた雰囲気だ。奥多摩らしさの残る好ましい道である。
南に下る道を合わせるところが人里分岐。人里と書いて「へんぽり」と読む。集落の名前だがいつまでも残って欲しい呼び名である。
人里分岐のあと、標高930mの一本松への緩やかな登りとなる。登山道はピークを巻いているが、標柱のある場所から踏み跡を登り、一本松の頂上(930m)を踏む。北面は雑木林で、木彫りの山名板と三角点標石がある。
奥多摩の山の頂でおなじみのこの木彫りの山名板、なかなか手の込んだ味わい深い作りであるがどういう人が作っているのだろうか。タワ尾根のウトウの頭、さっきの松生山などユニークな山名板が多い。
稜線を歩いて数馬分岐に着く。MTBの団体さんがやってきた。今日はここで下らずに、次の藤原峠まで進む。もうこのあたりからはずっと単調な植林の中を歩くのみである。
尾根を乗っ越す車道にいったん下りて少し山道を歩くと、分岐となる。直進は風張峠だが左折して下る道を指導標は指し示していない。エアリアマップで赤実線扱いなのに不思議である。
下りていくと、少々ヤブっぽいが問題なく歩ける。
それほど高度を下げた感じもないまま民家の横に出る。限りなく廃屋に近いが、電線が引かれているので人が住んでいるのかもしれない。
ほどなく数馬上部の民家が見えてきた。浅間尾根登山口までは一投足だった。
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