~深秋の静寂と賑わう山頂~ みとうさん(1531m) 2009年11月7日(土) 晴れ後曇り
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奥多摩駅からのバスは、座席が埋まるくらい。今年のハイシーズンは終わったようだ。 小河内神社バス停から階段を下り、浮き橋で奥多摩湖を渡る。雲ひとつない青空、色を失いつつある山肌、木々の紅葉を移す水面。どれもが大きく、微動だにしない。 車道に出て右折、ヌカザス尾根の登山口までその車道を500mほど歩く。交通量は少なく、時たまトラックが通り過ぎるくらいだ。
登山口から、まだ緑濃い森に入る。ヌカザス尾根は急坂が続くが、整備され歩きやすい道である。下部は植林が多く薄暗い。 振り返り見下ろすたびに、奥多摩湖がどんどん遠くなっていく。イヨ山(979m)は片側が植林帯の、細長い山頂である。 木の間から、大寺山(982m)山頂に立つ仏舎利塔の白い物体が見える。こことほぼ同じ標高のはずだが、自分のいる場所のほうがずっと高いところのように思える。 ところどころ、落葉樹が混ざるようになり、やがてコナラやアカマツ、リョウブなどのの雑木林の尾根となる。ミズナラの高木も目立つ。葉の色づきはまあまあで、時折真っ赤なカエデも見る。 やがて、ヌカザス山への登りとなる。急登だ。上に見えるピークに着いたら一休みかな、と思って登りつくとすぐ先にさらに高まりがある。じゃあもうひとつ登ってしまおう。するとまたピークが。これの繰り返しでなかなか休めず、きりがない。ヌカザス尾根の下部は、休憩するタイミングがとりづらい。 高度を上げるにつれ、葉をすっかり落とした木が増えてくる。三頭山の紅葉ラインは、標高1000mあたりまで下りてきたようだ。やはり例年に比べ少し早いのだろう。 ようやくヌカザス山(1175m)の頂点。すぐ下ったあたりは自然林が美しいところだ。ムロクボ尾根からの登山道が合わさり、ツネ泣き峠に着く。 きれいな黄葉をまとった大きなブナがあった。高くて気品を感じる。三頭山は山頂北側の巻き道や、鶴峠へ下りる道がブナ林の美しいところだが、ここヌカザス尾根のブナもなかなかである。 このまま立ち去ってしまうともう二度と見られない気がして、しばらく根元に座って木々の鞘を見上げていた。
ツネ泣き峠からは再び急登。背後に雲取山・飛竜山の姿も見ながら、ロープの張られている斜面を登る。ここは我慢のしどころ。 斜度が緩くなったところが入小沢ノ峰(1302m)。金風呂からの道が上がってきているが、地図にはかかれていない。 平坦もしくは緩やかな傾斜の尾根となる。木々はほとんど葉を落としているが、ところどころ、ブナの黄葉が見られる。冬木立の森をなおも行き、左に回り込むように斜面をトラバースする。 三頭山東峰と中央峰との鞍部に到着。とたんに行き交う人が増える。ほとんどが都民の森からの登山者であろう。奥多摩湖からの登路では、それでも5,6名の人と挨拶を交わしていたが、やはり三頭山は都民の森からが一般的のようだ。 平成元年に都民の森がオープンされる前は、三頭山は秘境と呼ばれていたらしい。もちろん交通の便も今のように便利ではなく、日帰りで行くのは難しいとされていた。 自分はその頃は、山にまったく興味がなかったのでわからないが、当時の登山者にとって、三頭山登山がどういう位置づけのものだったのか、興味がある。大きなザックを担いで避難小屋に泊まり、翌日甲武相国境稜線を縦走するのが当たり前だったのだろうか。
鞍部からは行列の1人となって、数分で三頭山中央峰(1531m)へ。座る場所をあちこち探さなければならないほど、多くの人で賑わっていた。 富士山や石尾根の山々も見えたが、空はいつしか大きな雲が覆うように変わっていた。日が翳ると急に寒く感じる。数週間前まではまったく無用の長物だったフリースが、今日は大活躍である。 山頂からは奥多摩湖も見下ろせるのだが、潅木が伸びて、ずいぶん見づらくなっていた。葉の落ちた今の時期にしてこうである。この分では、あと数年のうちに奥多摩湖は見えなくなってしまいそうだ。 三頭山から南下し、大沢山を目指す。自然林ばかりの、気持ちのよい森の道。葉は完全に落ちている。標高を下げていけばカエデの残り葉も見ることができる。しかし紅葉はヌカザス尾根のほうがよかった。 三頭山避難小屋を過ぎ、ベンチが無ければ通り過ぎてしまいそうな大沢山山頂(1482m)を越える。大きな雲が頭上に迫り、気温が急降下していくのがわかる。 笹尾根の名の通り、笹のかぶる道が少しだけある。右手が杉林になりやはり肌寒い。落ち葉を踏み鳴らしながらなだらかな下りを行く。明るい地に出たところが槇寄(まきよせ)山(1188m)だった。 権現山稜の上に見えるはずの富士山は、雲の中になってしまった。でも清々しく居心地のいい山頂である。 西原峠を経て、仲ノ平に下山する。今日歩いた道は、奥多摩の中でも(自分にとって)一番気楽に歩けるコースだった。庭のような場所である。 あくまでもなだらかな下り道を行き、最後は民家の軒先をくぐるようにして車道に出た。仲ノ平バス停は、そこからさらに15分ほど下ったところである。 檜原村も紅葉は盛りだが、うすら寒くすでに晩秋の趣を呈していた。 数馬の湯で温まってから、帰路に着く。 |