~姿は変われど秩父の盟主~
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ぶこうさん 2001.11.17 曇り時々晴れ
生川-武甲山-小持山-大持山-武川岳-名郷
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秋深まり行く中、奥武蔵西部の山を縦断した。
一度は登らねばと思っていた武甲山を皮切りに縦走路を南下し小持・大持山、武川岳。名郷の民宿に泊まり翌日有間山、蕨山へ。
都心にごく近い山域を、あえて1泊してじっくり歩くのは、なかなか味わい深いものがある。



西武池袋駅5:00~[西武鉄道]~6:51西武秩父駅~[タクシー]~7:10生川~7:35表参道1丁目~8:00 15丁目分岐8:05~9:05肩の十字路9:15~9:20武甲山9:30~9:50シラジクボ~10:20小持山10:45~11:10大持山~11:20妻坂分岐11:50~12:15妻坂峠12:30~13:00武川岳13:30~13:45前武川岳13:50~14:35山伏峠~15:35名郷(西山荘 泊)
--------歩行時間 6時間15分
マップ

武甲山
武甲山
●後をついて来る登山者(生川~表参道~肩の十字路)
登山者がひとり、自分の後をつけてくる。そういうのを何度か経験している。
白馬~五竜縦走のときは、常に一定距離を置いて後から歩いてきて、休む時もその距離を保ちながら相手も休む、そういう気味悪い人に出くわした。槍ケ岳からの下山でも同じような人がいた。

もちろん変な人ではなく(そのはずだ)、同じ単独行者である自分がペースメーカーにされているのだろう。あまりいい気分ではない。それどころか自分の歩みが速くなってしまい、ペースを乱してしまうのだ。

今回、武甲山の登りでもそんな人がいた。50代後半くらいの男性。いったん休憩し、先に行ってもらおうとしたら話しかけて来る。「この山は初めてなので、あなたのペースに合わせさせてほしい」はっきり言われる。
聞くと群馬県の人。若いころは奥穂~西穂や前穂の縦走をやったそうで、話しているうちにだんだん面白くなってきた。これから歩くコースもしばらくは同じようなので、いっしょに歩くことになる。

武甲山頂の御岳神社
武甲山頂の御岳神社
武甲山からの展望
武甲山からの展望

生川までタクシーで来たがかなり前の所で下ろされた(料金2100円)ため、登山口の鳥居まで、思いの他長かった。

登山口には「一丁目」の丁目石が立っている。山頂は51丁目、そこまで丁目石が延々と並び、いい距離計になっている。以前はその数字は連続して見れたそうだが、今は登山道が付け変わるなどしているので、丁目の数字は飛び飛びになっている。見れば、道からかなり離れたところに、打ち捨てられたようにひっそりと立っている丁目石もある。

表参道は終始展望のない植林地。同行氏とは特に言葉も交わさず、黙々と登る。やっと植林を出て、回りが開けたと思ったら木の階段の急登。同行氏は途中で休み出したが、自分はどんどん上がって行く。

登りついたところは十字路になっていて、大持山方面への縦走路もここから分岐している。大持山、武川岳など奥武蔵西部の稜線がくっきりと浮かぶ。

傍らに発破注意の看板が立っている。武甲山は石灰岩の山、セメントの原料として以前から採石は行われていたのだが、日本の高度経済成長期が始まる昭和40年代あたりから急速に削られ出した。そのため1336mあった標高も今は1295mしかない。(後記:その後の測量で1304mに訂正された)

発破注意の看板
発破注意の看板
●削られ行く山(武甲山~小持山~大持山)
小さくなっていく山を嘆くのは簡単だが、その山を削った建造物に、今われわれが生活しているのも事実である。しかし山頂展望台から見下ろしたところに陣取る採石場の白い台地は、やはり見るとショックである。両神山、浅間山や上信の山が見渡せる眺望も、何だか空々しく思える。
山そのものはどっしりとした端正な形で素晴らしいが、今は表面をそのままにとどめ、内部で採石が行われているとも聞く。土日でも採石や発破の音は鳴り止まず、現在進行形でこの山は小さくなっているのを実感する。

山頂の神社脇にあるトイレ(冬期は閉鎖)を拝借し、同行氏とともに大持山への縦走路に入る。まずはシラジクボへの急な下り。落葉樹はおおかた葉を落し、常に片側にある杉・檜の植林がやけに目立つ。道は最初、幅広の防火帯のようで歩きよいが、小持山に近づくと岩場が現れ、分かりにくい箇所も出て来る。

肩の十字路からシラジクボへ
肩の十字路からシラジクボへ
急登を詰めて小持山(こもちやま)へ。展望がよく、ここから眺める武甲山は採石場も目立たず、普通の山のように見える。

同行氏は西上州の山について教えてくれた。最近、自分が興味を持っている山域である。西上州は、「諏訪山・天丸・大ナゲシ」、これがお勧めとのこと。天丸、大ナゲシはガイドでは大変な山と書かれているが、自分のように健脚(と思われているらしい)ならこれくらいがいいとのこと。
西上州の山は登山道が細く、今の季節は落ち葉で踏み跡を失いやすいので注意が必要らしい。なるほどと思った。

大持山(おおもちやま)までは岩がちの小さなピークが並ぶ骨っぽい道となる。ところどころツツジの紅葉が残っており、新緑の頃は人気がありそうな稜線だ。
大持山は1年半ぶりだ。山頂は通り過ぎ、その先の妻坂分岐(展望がいい)で昼食とする。奥多摩の大岳山がよく見える。

妻坂分岐から下る
妻坂分岐から下る
妻坂峠
妻坂峠
●武川岳から懐かしげの山里へ(武川岳~山伏峠~八が原~名郷)
天気予報では晴れの一発マークだったのだが空の8割は雲。この季節になると、太陽が雲に隠れるとたんに肌寒くなる。
妻坂峠までの下りは本日のハイライトのひとつ。落ち葉踏みの音も爽やかで、傍らに武甲山を眺めながら高度を落していく。登山者も多くなる。「なるほど、このいい道なら人気が出るはずだね」同行氏も納得する。
妻坂峠(つまさかとうげ)に下りる、同行氏は生川へ戻るのでここでお別れとなる。自分はまだ余力があるので、もうひと頑張りして武川岳に向かう。
急坂をよじ登るように行く。昨年の春、カタクリ探しで目を皿のようにして歩いたのを思い出す。

やがて傾斜も緩み自然林の道となり、山頂へ。15名ほどの登山者がいる。同行氏と別れてからやっとのんびり出来る地にたどり着けた。話は面白かったがやはり山頂で1人ボーッとする味わいも捨てがたいのである。

山頂から下り、前武川岳へ。このあたりの雰囲気もいい。
今日は山伏峠へ下る。だが気持ちのよいのは最初のみで、すぐに植林帯に入る。ほっとするような静かな道を下りつづけ、車道に下り立つ。これから名郷まで車道を下るのだが、ショートカット(近道)できるところが多く、その途中で山村を横切る場所もあるので、それほど退屈な道ではない。しかし湯ノ沢バス停あたりまで下りると採石場の音が聞こえて来て、気分を害してしまう。

名郷集落
名郷集落
名郷(なごう)バス停付近は紅葉たけなわ。入間川が流れ山里の懐かしげな雰囲気がある。今日はここの民宿「西山荘(せいざんそう)」に泊まる。
宿泊客が少なく、2つの部屋をぶち抜きで使わせてもらった。温泉ではないがハーブ湯の岩風呂、夕食は手打うどんと野菜の精進揚げ、山菜、さしみこんにゃく、その他もろもろ。
宿の人は皆明るく朗らかだ。おじいちゃんが暖房用の石油を持ってきてくれた。こういう場合チップのようなものは出すべきなのだろうか、世間の常識がわからない。

明日の朝食を6時半に早めてもらった。夜は、最近の睡眠不足を取り返すべく安眠できた。


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