山の写真集 > 奥武蔵・秩父 > 竹の谷から浅間山、丸山
  • -忘れ去られた山の遺物-
  • 竹の谷-浅間山-大野峠-丸山-真福寺-栃谷
  • 奥武蔵
  • 埼玉県
  • 浅間山(764m), 丸山(960m)
  • 2016年12月24日(土)
  • 13.6km
  • 5時間10分
  • 597m(竹の谷-丸山)
  • -
  • 美やま温泉
  • 東武線, バス, 西武線
天気1

 

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2016年12月24日(土)
池袋駅 5:45
  東武線
6:55 武蔵嵐山駅 7:12
  イーグルバス (ときがわ町路線バス)
せせらぎバスセンター乗換え
8:20   竹の谷
8:45   茶畑
8:57   林道出合
9:30 浅間山 9:35
9:47 旧川越山の家
10:07   大野峠
10:10   896m展望地 10:20
10:42 丸山 11:15
11:40 森林館
12:30   野外活動センター
12:40   二番札所の導標
13:12   真福寺 13:22
13:52   栃谷
14:30   美やま温泉 15:35
15:42 山田 15:49
  西武バス
16:10 西武秩父駅 16:28
  西武線
18:10 池袋駅

 

奥武蔵、秩父の丸山から大野峠~刈場坂峠、白石峠付近は都心から近く、特に冬から早春にかけての軽い低山ハイキングに向いている。奥武蔵グリーンラインが走っているのでドライブやツーリングコースとしても人気がある。
登山道は四方から伸びているが、登山地図を見ると大野峠の東側、グリーンラインを隔てて比較的明瞭な尾根筋があるのに登山道を示す赤線が引かれていない、ぽっかり空いたエリアがある。ときがわ町から発しているこの尾根には踏み跡が存在し、少ないが登山記録もある。今回はこのルートを辿ってみる。
今回は当サイトの掲示板に投稿いただいているtokoroさんの山行記録をガイドとする。とても詳細でわかりやすく、大いに役に立った。


浅間山山頂へ、踏み跡のない登り

東武線・武蔵嵐山(らんざん)駅

武蔵嵐山駅

ときがわバスで行ける最奥の地、竹の谷

竹の谷バス停

竹の谷から川を橋で渡って登山道へ

橋を渡って

少し登ると小さな茶畑が現れる

茶畑

浅間山への登路が林道の右手に伸びている

右の踏み跡へ

カモシカが踏み跡を横切っていった

カモシカ

浅間山山頂には祠がある

山頂の祠

浅間山からは木の枝越しに堂平山、剣ヶ峰が見える

木の枝越しの眺め

今は閉鎖された川越山の家。バンガローは見た目にはあまり荒廃していなかった

川越山の家

大野峠上の896m点からは、関東平野の先に筑波連山が望める

関東平野が広がる

896m点から、スカイツリーも見ることできた

スカイツリー

丸山への登りにて。北の斜面が広く伐採されて眺めがよくなっていた

広く伐採

丸山の山頂展望台

丸山山頂


アプローチは4月の堂平山と同じく、武蔵嵐山駅からバスで行く。この地域のときがわバスは、ときがわバスセンターを中心に放射状に路線が伸びており、多くの場合は鉄道の駅から乗車して、このバスセンターで乗り継ぎ目的地に向かうことになる。こういうのをハブスポーク方式という。運賃は乗り継ぎの際にバスセンターまでの分を払うとともに整理券にスタンプを押してもらって、目的地に着いたら差額を払う仕組みである。

終点の竹の谷(かい)バス停で下車する。寒々とした谷間のどん詰まりで、小さな茶畑がある。登山道を示す標識などは何もないか、ガイドにしたがってさらに奥へ進む。すぐに川に降りる道が分岐し、その川を橋で渡ると、杉林の中の登山道が始まる。ガイド通りジメジメして歩きにくいが、道ははっきりしている。
ジグザグに登っていくと不法投棄のテレビ(なぜかリモコンのみ)や車のソファーが散乱していた。そのすぐ上て林道と交差し、さらに登ると茶畑に出た。何やら怪しいものがぶら下がっているが、何のためにあるのだろう。

茶畑の横につけられた登山道を進むと再び林道。この林道を歩いても行けるようだが、右手に踏み跡が伸びているのでそちらに入る。次に林道に行き当たったところは、右手の北方向に細い山道も分岐してい少しわかりにくい。ここは林道とその山道の間に伸びる尾根上の踏み跡をなおも行く。
植林下の薄暗い登りで踏み跡は細くなる。遠くから動物が近づいてきた。カモシカだ。こちらを凝視している。目の前を通り過ぎるのを待ち、さらに登高すると右手が自然林で開け、明るくなった。傾斜がきつくなって、浅間山の最後の登りに入ったとわかる。この辺り踏み跡はほとんどないが、高いところを目指して行けばいい。

傾斜が緩くなると、祠のある浅間山山頂である。南面が植林、北面が自然林で木の枝越しに堂平山の天文台や剣ヶ峰のピークが覗く。木に巻かれた山名を示すテープには「やすよ岳」と書かれていた。浅間山という名前は、このルートを紹介しているときがわ町のホームページ(新ハイキング誌からの転載)よるものだが、祠にも浅間神社の文字が彫られていた。
グリーンラインとはまだ距離が離れているせいか、いたって静かな山頂である。

薄い踏み跡が西に続いている。植林の中の道である。尾根が幅広いので方向感がつかみにくいところもあるが、歩く分にはほとんど問題はなく、平坦で歩きやすい。
やがて前方に小さな建造物が見えてきた。橋の形をした遊戯施設の残骸だった。藪で覆われた先にはキャンプ場やバンガローもある。ここは川越市山の家という、今は閉鎖となった施設である。閉鎖となってからずいぶん年月が経っているようだが、それでもバンガローなどはそれほど痛んではいなくて、時々維持整備が施されているようにも見える。でも、夜はさしずめ動物のすみかにでもなっているのだろう。
山の中でこういう、人が葬り去った遺物を見るとドキッとする。あまり休憩できるような雰囲気でもないので、すぐにその場を後にする。

山の家跡からは舗装車道となる。この車道はグリーンラインから大野峠へ通じている。車道を避けグリーンラインに直接上がる踏み跡を探したが見つけられず、そのまま歩いていくとゲートで通せんぼされた。今歩いて来た道は赤外線システムで監視しているので立ち入り禁止、と書かれていて焦る。今は登山ルートとしては開放していない、ということだろう。
大野峠に出る。時々車が通るが、登山者は見当たらない。そのままパラグライダー発着地でもある896m点を目指し、階段を上がる。弱い風が頬に当たり冷たい。しかし896m点からの眺めはすばらしく、筑波連山がいつにもましてくっきり見える。スカイツリーも視界に捉えられた。湿度が低い上に、前々日の雨が空気中のチリを洗い流したのだろう。
ここにも登山者はおらず、無線通信をしている人が一人いるだけだ。こんなに眺めがいいのにもったいない。まだ時間が早いからなのか。

気持ちよい自然林の中を丸山目指して進む。途中、北面の植林帯が広く伐採されており、奥日光の山がよく見通せた。伐採作業は進行中でフェンスが張られ、そのため丸山の北面を巻く登山道は歩けないようになっている。
開けた登山道を登り、丸山山頂へ到達する。コンクリート製の展望台に上がると、ここでもまたすばらしいパノラマ展望が広がった。武甲山、両神山、西上州の山々など、幾重にも重なる尾根の陰影がくっきり見える。しかし風が出てきて刺すように冷たく、さっきからネックウォーマーと冬用の手袋をつけている。
登山者は、ここはさすがに多い。ほとんどが芦ヶ久保駅から登ってくるようである。それでも12月に入って紅葉が終わると、山を歩く人の数はやはりガクンと少なくなった。

丸山の展望台から、両神山が大きい

両神山

丸山の展望台から、武甲山と秩父の町並みを見下ろす

武甲山

金昌寺方面へ、自然林の尾根を下る

自然林の尾根

青少年野外活動センターは解体工事中だった。札所二番に下る車道は右へ行く

解体工事中

真福寺へ下る車道(一部未舗装)を下っていくと、運動広場の標識があったのでここから野外活動センターの敷地に入った

運動広場へ

野外活動センター~真福寺間のハイキングコース表示は残っていた

ハイキングコース表示

秩父二番札所の真福寺

真福寺

真福寺前の広場には冬桜が咲いていた

冬桜

秩父の山を仰ぎながら国道へ下る

秩父の山を見ながら

西武秩父駅から武甲山を望む

西武秩父駅


食事後、西方へ下り始める。風も冷たいが、それ以上に気温が低くて震えるほどだ。しかし急坂の階段を下っていくうちに寒さがみるみる和らいだ。県民の森・森林館に下り立つと日差しいっぱいで暖かいくらい。高度が100m変わるだけでずいぶん違うものだ。森林館の公共トイレは冬季使用禁止になっていたが、冬用の臨時トイレが1つだけ置かれていた。

ここから下山するが、芦ヶ久保駅や金昌寺へのルートはもう何度も歩いている。今日は今まで歩いたことのない秩父二番札所、真福寺への下山路を選ぶ。エアリアマップにも細いが一応実線で示してある。秩父鉄道方面へ下るルートとして、一度歩いてみる価値はあろう。登山道としては面白くないとの話もあるが、歩いてみないとわからない。
始めは金昌寺コースと同じ方向へいく。森林館からいったんピークに登り、明るい稜線を歩く。登山道を舗装車道が乗っ越すところで尾根道と別れ、車道を下っていく。やがて「埼玉県青少年野外活動センター」と書かれた施設に着く。
地図ではここから尾根通しに、真福寺への登山道があるはずなのだが、よく見たら「現在解体工事中につき通行できません」と通行止めになっていた。どうやら今年の3月を持って、営業終了したようである。これは前もって調べておらず、うかつだった。
でもここまで来て戻るわけにもいかないので、「二番札所」を示す細い車道に入ることにする。車道だと両神山など展望がいい中を下れそうなのだが、何せ長い。どこかに山道に入れる場所がないか、探しながら下る。
「←運動広場」との標識があったので入ってみる。今は使われていそうにないグランドから、野外センター方向に下れる道があった。しかしやはり解体工事中と見え、重機が何台も入っていた。

野外活動センターは林間学校やスポーツ合宿の他、家族向けのキャンプやバンガロー施設などがあり、地元の人から「ヤカツ」と呼ばれて親しまれてきたようだ。しかし施設が古くなってしまうとやはり、営業収入と維持管理費用のバランスが合わなくなるのだろう、このように解体の憂き目にあうアウトドア施設は多い。整備不良で利用者にケガなどさせるようなことに対して、最近はとみに世間の風当たりが強くなっているから、事業者も営業継続には慎重にならざるを得ないのだろう。使われなくなったアウトドア施設を今日は偶然、登路と下山路両方で見てしまった。
ところでこの解体工事の後、この広い敷地はいったいどうなるのだろう。植林などして元の森林に戻されるのだろうか、気になるところだ。
工事現場に駐車中の車はエンジンのかかったものもあり、休日と言うのに作業中のようである。入ったら怒られるかな。運転席で昼寝している兄ちゃんに気づかれないよう、そっと通り抜ける。キャンプ施設の外れに「札所二番」の指導標が現れてホッとした。ここを下っていけばよさそうである。

登山道は尾根通しではなく、やや西側に下がった部分につけられている。一箇所、尾根を乗っ越して反対側の車道に通ずると思われる道が分岐していたが、その後はさらに尾根のずっと下を歩くようになった。国土地理院の地形図に引かれている破線とほぼ同じである。
植林下の、たしかに面白みのない道が続くが、急なところはなく歩きやすい。比較的新しいハイキングコースを示す張り紙も木にかけられていた。

淡々と下り林道に出ると、間もなくさっき下ろうとした車道と合流した。林道の入口には「野活→」と書かれていた。
車道を歩いてようやく、真福寺に到着する。秩父の山里をやや下に見下ろす、日当たりのよい台地に建っていた。二番札所ということもあり、立派な造りのお寺だった。冬桜が咲いていた。

あとは国道目指して、里道を緩く下っていくのみだ。山の麓の民家も最近は新しいものばかりになってしまったが、中には時代を感じさせる古い屋敷も残っていて、秩父の山里らしい。
付近はいたって静かだが、どこからともなく人の気配というか息づかいが聞こえてくるような気がして、郷愁を誘う。青空の下には両神山や二子山などの奥秩父の山々がまだくっきりと見えている。

国道に出たところに栃谷バス停があった。だが、今日はやはり、この近くの温泉旅館でひと風呂浴びていきたい。10分ほど歩いたところに不動の湯があるので行ってみる。ここは自分がまだ山を始めて間もない頃、日帰り温泉として利用した懐かしい旅館だ。
玄関口で声を出すが、冷え冷えした室内からは誰も出てこない。携帯で電話すると、今日は宿泊客が多くて日帰り入浴はだめだと言う。残念。少し距離はあるが、こうなったら意地でもこの先の美やま温泉まで頑張って歩く。ホテル風の大きな建物で料金も少し高めだったが、こちらは空いていてゆっくり入れた。

山田バス停までは5分ほど。秩父の冬景色に武甲山の大きな山体はよく似合う。今日秩父側に下山してきたのは、西武秩父駅を見てみたかったのもある、駅の改装工事が始まってからまだ見ていなかった。
駅前でバスを下りると、仲見世通りのあったところはシートで目隠しされており、バスロータリーの脇に臨時の売店ができていた。西武秩父駅には来年の春、日帰り温泉施設「祭の湯」がオープンするということだ。
先日、秩父夜祭がユネスコの世界無形文化遺産に登録される運びとなった。富士山や高尾山と同じように、秩父ももしかしたら外国のお客さんで賑わう一大観光地になってしまうのだろうか。郷愁の町・秩父はいつまでも、その姿は変わらずにいてくれるものと思っていたが、やはり時代の流れには逆らえないようだ。
温泉ができるのは楽しみではあるが、町がどんどん変わっていってしまうのは何となく寂しいものもある。

大きな武甲山を見ながら、池袋駅直通の西武線で帰京する。