~野鳥の声が響く広葉樹の森~ りょうかみさん(1723m) 2004年5月28日~29日
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翌朝、野鳥のさえずりで目覚める。テントから顔を出すと、雲間から青空が覗いていた。 どうやら天気予報は今日も外れたようだ。いいほうに外れれば文句はない。急いで支度をし、再度山頂を目指す。
清滝小屋からの登りは、かなりきつい急坂から始まる。七滝沢コースの分岐を経て産泰尾根(うぶたいおね)の肩に乗ると、いったん斜度は弱まるが今度は3箇所ほど岩場となる。木の根などの足場が豊富なので鎖に手をかけるほどでもない。 ツリフネソウやクワガタソウ、マイヅルソウが至る所で群生している。ツバメオモトも1箇所で見られたがトウゴクミツバツツジはもう終期だ。 見事な広葉樹のトンネルが続き、やがて杉やシラベの針葉樹が混ざりだすと、ほどなく両神神社奥社に着く。オオカミの姿をした狛犬が鎮座している。 ベンチがあり休憩したいところだが、早く山頂に着きたくもある。のぞき岩から白井差口へのコースの入口はトラロープで進入禁止となっている。 弘法大師の石像を見てからしばらくは、平坦な気持ちよい道が続く。樹間から両神山頂の突起も見え出す。 登山道は二手に分かれる。昨日と違い新道のほうを行く。時間的には大差ないが旧道のほうが歩きやすい。
ほぼ360度の展望が広がる。ここは奥秩父主脈の展望台だ。瑞牆山から小川山、金峰山。甲武信岳、雁坂峠、笠取山と続く。近くには、両神山頂上から稜線続きにある赤岩尾根のギザギザが見ごたえある。八ヶ岳と御座山も大きい。秩父側は一面の雲海。 山頂付近は地形が複雑で、歩いてきた日向大谷は西の方角を指しているので、一瞬方向感覚を狂わされてしまう。
両神山は1723mと、標高の数字だけは他の奥秩父の山々に見劣りするが、他と少し離れた位置にあるので広い眺めが得られる。そして他の山からは得られない、新鮮な角度からの眺めなのでなかなか飽きない。 清滝小屋テント場まで下りテントを撤収する。ゴアライトXは他のゴアテントよりも結露しやすいとのことだったが、夜半は気温がそう下がらなかったため、結露の具合を確かめることは出来なかった。しかし軽く折りたたみやすい素材なので撤収しやすい。 1泊山行ならば、食料・シュラフ込みで45リットルのザックに収納できる。今年はテント山行の回数が増えるかもしれない。 青空の下、日向大谷コースを戻る。昨日にもまして緑の木々が、そして苔が輝いている。 そして人出の多さはさすが日本百名山。土曜日ということもありひっきりなしに登山者とすれ違う。全部で50~60人くらいか。早めの人は日帰り、登山口付近で出会ったグループは清滝小屋1泊であろう。 日向大谷口に着く頃は汗が噴き出すほどの暑さになっている。振り返れば両神山から続く稜線がどこまでも緑の衣をまとっていた。
登山地図を見て、登山口から日向大谷バス停までは30分ほど歩かされると思っていたが、実際は3分ほどの歩きでバス停に着いた。バスはずっと上の方まで入ってくるようになったようで、登山者には都合がいい。 やがてバスがやってきた。大学生と思える20名ほどのパーティーが下りてきた。今日は清滝のテント場は大混雑だろう。やはり昨日登っておいてよかった。 バスに乗って、両神の森から離れていく。山を下りているときは夢中だが、下山後のバスから周囲の山村を眺めていると、今まで何という山奥の地に入っていたのだろうとあらためてびっくりしてしまう。 両神村役場前で下り、薬師の湯に寄り道する。付近は花しょうぶ祭りで結構な人出だった。 満を持して登った両神山は、樹林・沢・野鳥など自然が近い距離に感じられるいい山だった。日帰りで登れないことはないが、小屋やテントに泊まり1日をゆっくり過ごすスタイルの山行がこの山には合っていると思う。 今年は入梅が早そうなことを言っているので、滑り込みで初夏の緑鮮やかな山に泊まることが出来たようだ。 |