~渓谷美を見てシャクナゲ咲く孤峰へ~ にしざわけいこくからくろがねやま(2232m) 2009年5月31日(日) 曇りのち雨
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天気が崩れ始めたのか、単に霧が水滴化しているのかわからないような、細かい雨が降り出す。 急な登りをひとつ越えると、岩が積み重なった場所に出た。ここは2021m地点と思われるが、特に目印はなくはっきりしない。登山ガイドに地点名が記載されていても、必ずしもそこに標識が立っているわけではない。右方がやや開けている点で、ガイドの記述と照合できるのみだ。 この登山道に立つ標識は、黒い板に達筆の明朝体文字で書かれたものや、判読不能なブリキ板、そして山梨県の大きな看板など、バラエティに富んでいる。 なかなか目的の場所に達せず、ようやく標識の姿が見えて、近づいてみると「山火事注意」「自然を大切に」しか書かれていなくてがっかりするものも多い。 2021m地点以降、道は緩い下りと登りを繰り返す。次の岩ピークには、イワカガミがたくさん花をつけていた。 再び濃い樹林帯へ。シャクナゲはほぼなくなり、コメツガなどの針葉樹が優勢となる。上の方からピー、ピーと子供の動物の鳴く声が聞こえる。鳥や鹿ではない。ザックから鈴を取り出しベルトにつける。 と、突然前方から「こんにちは」の声。今日初めて会った登山者だ。この静寂の地の中、あまりにも唐突に出現したので、思わず声を上げてしまった。
緩く下って牛首のタルに着く。小広い笹の斜面になっていて休憩適地だ。青笹方面に下る道の方角は開けているようだが、一面のガスで眺めは全くない。牛首のタルでも、まだ標高2090m付近。黒金山までさらに標高差150mくらいを残している。ここから先ははっきりとした雨となった。雨具を上下着ける。 急斜面ではないが、針葉樹林の中の一直線の登りが相当つらい。何度も立ち止まり息を整える。見上げると、進む方向はどこまでも黒々としていて、この坂がどこまでも続いているような錯覚にとらわれる。 それでも、ようやく木々の間を割って白い空、そして指導標が見えてきた。笹の中にぽっかり空いた空間、黒金山の頂上である。 雨はいよいよ本降りとなった。北西側に広がるはずの奥秩父の山並みは望むべくもなく、空と同じ乳白色の眺めのみ。しかしここまでかなりつらい思いをして登ってきたこともあり、感慨深げに頂上での一時を過ごした。
天気さえよければ乾徳山への縦走も考えていた。徳和に下ってバスで西沢渓谷に戻るプランである。朝5時と早発ちしたのはその理由もある。しかし、雷雨の予報も出ている今日は、おとなしく来た道を戻るのが正解と判断した。 牛首のタルまで戻ると、雨も小降りになった。頂上付近だけ雨足が強かったようだ。 登りでシャクナゲの写真も撮ったので、足早の下山となる。紅葉台から下は急激な下りになるので、一歩一歩、慎重に行く。高度を落とせば雨もやむかと思っていたのだが逆に降りが強まってきた。ザーザーと音を立てて降る中、あわてず速やかに下る。 登山口の休憩場所が見えてきた。大勢の人がカッパを着て休んでいる。 登山口に下り立ったときはどしゃ降りになった。しかしここから歩く迂回路は、遊歩道のように整地されているので傘をさして歩ける。 それにしてもこの天気で、たくさんの人が歩いている。ちゃんと登山用品としての雨具を着ているのは少数派で、市販のビニール合羽で間に合わせている人が多い。西沢渓谷を周回するだけなら、軽いハイキングの装備で十分であるが、雨への備えは抜かりなくしておきたいところだ。 意外とスタミナは消耗しておらず、西沢沿いの緑の森を眺めながらのんびりと西沢渓谷バス停まで戻った。 笛吹市民の保養施設「笛吹の湯」に立ち寄ってから帰るとする。日曜夕方の中央高速は、うんざりするほどの切れ目のない渋滞だった。 |