小楢山は10年以上前、タクシー利用で登ったがあいにくの曇天で山頂からの眺望は得られなかった。レンゲツツジやアヤメの山として知られているが、富士山や南アルプスを中心どした四囲の展望も見事とのことだ。
今日は少し楽をして、車で標高1550mの焼山峠まで上がってしまう。小楢山山頂まで標高差200mもない。今回は早く山頂に上がって展望を楽しむことが第一目的である。
富士山が真正面、小楢山の山頂
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子授け地蔵尊のある焼山峠登山口。 子どものいない夫婦がお参りしたところ子宝に恵まれたという伝説がある
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子授け地蔵 |
小楢山へは、日差したっぷりの明るい防火帯の尾根道を行く
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明るい防火帯の稜線 |
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富士山 |
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南アルプス |
小楢山山頂から北側には、シラカバの木を透かして金峰山が覗く
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シラカバの向こうに |
南ア農鳥岳の稜線の後ろ側に、塩見岳の山頂部が突き出ていた
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塩見岳も |
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勝沼インターから国道、県道を北上、塩平集落から山間の林道に入る。気温は低いが路面に凍結している箇所はなかった。
焼山峠の駐車場はバスの転回場所を兼ねている。まだ7時過ぎで自分が一番乗りだった。と言うより、この冬場にこの山に登る人はいるのだろうか。冬の低山を歩くならもっと、距離の長いところを選ぶだろう。ここは距離的にも1日コースとしては中途半端なので。
しかも上空は強風が、ビュービューと音を立てて吹きすさんでいる。こりゃ標高1700mの山頂は極寒の地になっているかもしれない。
子授け地蔵のたくさん置かれている登山口から歩き始める。登ったと思ったらすぐに下り。途中ですぐ下に車道が見えるところまで高度を落とすので、もう一度最初から登り直しの印象である。
登山道は幅広い防火帯状になっており、両脇は葉を落としたカラマツやミズナラで見通しはいい。日本海側からの寒気が中部山岳までやってきているのか、南アルプスや八ヶ岳は雲がまとわりついている。
前方に小楢山と思われるピークを見ながら、頭上で吹いていた強風は登山道まで達してきた。今日は最初からフード付きのフリースをすっぽりかぶって歩いているが、ある程度の距離を歩いても汗もかかないので、これくらいの厚着がちょうどいい。
なかなか高度が上がらない道が続くうち、右手に旧道が分岐する。手持ちの地図にはこの旧道は描かれていない。小さなアップダウンを繰り返していくと、右の林に的石という大きな岩があり、そのすぐ先で先ほどの旧道が合流していた。
道はやや登り気味となり、小楢峠への巻き道が合わさる。この道は前回歩いているのだが記憶がない。すぐに一杯水で、ようやく自然林の中の急登となった。登山口から山頂までの標高差のうち半分は、ここからの15分でこなすことになる。
さらに風が増してきた。地面には霜柱が立ち、おそらく気温は0度前後と思われるが、風が体感温度をさらに下げている。
岩の露出した斜面を登りきり、枯れ笹の目立つ平坦地に出て右方向に進むと、そこは南西面が大きく開けた小楢山山頂だった。
何といっても真正面に大きく鎮座した富士山、そして甲州の平野や山稜の眺めがすばらしい。今の時間は逆光で富士山は影になっているのだが、それがかえって荘厳な印象を強めている。
東面に大菩薩嶺や南大菩薩の山々、西には白銀の南アルプスが輝いていた。南ア南部の悪沢、赤石岳あたりには雲がかかり強い風が吹いているようだが、北岳など白根三山はくっきりだ。
そして反対側にはシラカバの木を前景に、白い粉をまぶしたような金峰山が高い。五丈石もはっきりわかる。
見られる山は先週の鶴ヶ鳥屋山からとあまり変わらないが、小楢山からの山の眺めはどれもダイナミックで雄大である。
上空は相変わらず風がうなりを上げているが、あまりの眺めのよさに寒さも忘れつい長居してしまった。
幕岩を経て大沢ノ頭まで往復する。小楢峠に下り、自然林の明るい尾根道を行く。
前回歩いた時の記録を見ると、途中の眺めのよい岩峰から稜線伝いに幕岩北側の手前まで行ったように書かれているが、本来の登山道はその岩峰を巻くようにつけられていた。
少し足元の悪いその巻き道を行き、幕岩下の鎖場に着く。前回は幕岩の北側から取り付くのはやめてこの鎖場から登っている。しかし、そうだとするとかなりの距離を引き返したことになる。
久しぶりの場所を歩くときはよく自分の記録を参考にするのだが、あまり前の記録になると、本当にそうだったのか、自分が書いた記録なのににわかに信じがたいところがある。
鎖で幕岩に登る。小楢山の山頂部がよく見え、あそこはたしかに展望がいい山であることがよくわかる。また、金峰山もここからは大きく見える。
ほぼ360度の眺めはすばらしいものの、岩の上はやはり落ち着かないので、すぐに下りる。
ここの鎖場の下降は、足場を探しながら狭い岩の間を行くので、窮屈でなかなかの難路である。そのことは前回の記録にもしっかり書かれていた。
すぐ先にある大沢ノ頭で休憩する。前回はここを南下し鼓川温泉まで歩いていったが、今日はここで引き返す。
小楢峠まで戻り、巻き道を行ってもいいのだが、もう一度小楢山山頂に寄って展望を楽しんでいくことにした。
山頂には登山者が一人。一杯水まで下っていくとさらに複数の登山者とすれ違う。その後20名くらいの団体もやって来た。
今日は一人だけの山かと思っていたがそんなことは全然なかった。やはり空気の澄むこの時期、これほどの展望の山を放っておくことはないようである。自然林も多く新緑や紅葉の時期もいいだろう。四季それぞれの見所が小楢山にはありそうだ。
帰りは旧道を通っていくことにする。こちらは小さなコブを巻いていく、穏やかな道だった。焼山峠に下山するまで強い風は止まなかったが、日も高くなって少し暖かくなってくれた。
今日は歩いた時間以上に山歩きを満喫できた気がする。
鼓川温泉の香りよいアルカリ泉で温まってから、まだ明るい日差しの下を東京まで帰る。