●北奥千丈岳、国師岳から誰もいない稜線を歩く
北奥千丈岳
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大弛峠でいったん車道に出る。山深い中から一転して車いっぱいの舗装道路とは、少し気分が壊れる。
この車道は、ある時間になるとゲートが閉まってしまい出入りができなくなるそうだ。(車で行く場合は事前に確認した方がいい)
大弛小屋の前を通り国師岳へ登るが、かなりの急坂でバテ気味だ。これまでが少しオーバーペースだったようだ。
前国師の少し先から、北奥千丈岳に分岐する道を進む。奥秩父の最高峰(2601m)だけあって展望がいい。このへんもハイマツ帯で樹林が低く、開放的だ。
分岐に戻り国師岳に向かう。大弛峠に車を置いて登って来る人が多い。こういう人たちは元気いっぱいで軽身のせいか、自分はどんどん抜かれて行く。
国師のタル付近
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国師岳山頂は北奥千丈岳と南に伸びる尾根が良く見えるが、北側は樹林帯で展望が得られない。
ここから国師のタルまではダラダラした長い下りが延々と続く。ところどころ倒木があるがそれほど苦渋はしない。しかしその後、東梓・富士見・両門の頭・ミズシとピークが並び、アップダウンの多いハードな稜線だ。
両門の頭は岩場の切り開きで甲武信岳の眺めがいいが、その他のピークは展望もなく、単調な登りは巻くこともできないのでつらい。
縦走路から甲武信岳、木賊山
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ミズシへの登りはほぼ直登の道で、完全にバテてしまった。この先甲武信岳という一番大きなピークが待っているというのに。
急な斜面で15分ほど休み、意を決して出発。千曲川源流コースへの分岐を見て甲武信岳への登りへ。途中、岩場の切り開きからは間近に迫った甲武信岳のガレが大きく見えた。あと1歩の感を強く持つ。
最後に気合いが入ったせいか、甲武信岳への登りはそれほどでもなかった。
そういえば、国師岳山頂で何人か人を見てから、甲武信岳の直前まで、誰一人として会わなかった。
●甲武信岳に到着、涼しい夜を過ごす
甲武信山頂で、さっき苦労したミズシのピークを再確認した。しかしもやがかかり展望はあまりよくなく、金峰山は見えない。
甲武信小屋に下りると、主人の山中さん含め小屋の人が数人、客が3人とこれまた静かだ。
小屋の横にある小斜面はヤナギランが満開、まさに鈴なりだ。一面ピンク色になっている。
甲武信小屋のヤナギラン
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3人の宿泊客は、埼玉県からの依頼で稀少植物の調査をしている、学校の先生方だった。
花崗岩の山よりも、石灰岩の斜面のほうがかえって意外な花を見つけられるそうだ。秩父の武甲山などじっくり探すといい発見があるのかもしれない。
この人たちは、前日は十文字小屋に宿泊だったそうだ。標高400m上がっただけで随分冷えるなーと言っていた。そういえば、けっこう気温が低い。小屋前の寒暖計は、夕方で12度を示していた。
3ヶ月前の土日に泊まった時は2人で1つの布団、今日はだだっ広い大部屋にたった4人だ。混むときとそうでないときの差が激しい。お盆過ぎは花の季節も終わりかけだし、そういえば今日は平日。それでなくても多くの登山者の足はアルプスに向かっている。奥秩父が空いてるのは当然か。
●千曲川源流の道を下り、梓山へ下山
3日目、朝の気温は9度。涼しい!再び甲武信岳の山頂へ。
まずまずの展望、富士山も頭の部分が見える。国師岳、金峰山の五丈岩も望めた。あんなところから来たのかと感慨深くなる。
昨日登ったガレを下り、千曲川源流への分岐で折れる。始めのうちは急な下りだが、程なくゆるやかで歩きよい道になる。千曲川の源流には標柱が立っていて、たしかにここから水の流れが始まっている。
千曲川源流沿いの道
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道はほぼ、この流れに沿ってつけられている。下るにつれ、流れはだんだん太くなり、時々滝状になる。苔の緑と青空、流れる水が日に輝き、そのコントラストが美しい。
道はあまり急なところがなく、こんななだらかで本当に4時間で下れるのだろうか?と不思議になるくらいだ。
今日は土曜日、すれ違う登山者がけっこういる。人と会うとほっとする。
聞くと、毛木平に車を置き日帰りで甲武信岳を往復、または十文字小屋経由で周回する人が多い。地元の人にとっては金峰山も甲武信岳も日帰りの山なのだろう。
毛木平を過ぎ舗装道路になる。しばらく行くと高原野菜畑の道となる。川上村の高原レタスと言えば、高収益の産業として知られている。毎年「レタス御殿」が建っているそうで、それを当てにしてかどうか、多くの若者が住み込みで働きに来ているとのこと。
隣り村の清里や野辺山がリゾート開発に力を注ぐ一方で、川上村はそうした方向に一切手をつけなかった。都心から離れた山村が本来の姿を大事にしながら、かつ潤う、これこそ山村のあるべき姿なのではないかと素人ながら思う。
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ミヤマアキノキリンソウ、シモツケソウ、マルバダケブキ
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しかし回りに遮蔽物の全くない農道は、半端でなく暑い。ついさっきまで気温が10度を切っていたところにいたとは、信じられない。とぼとぼと歩いていると横にトラックが止まった。運転手の農作業姿のおばさんが、少し先まで乗せてくれるという。ありがたく乗せてもらった。
梓山から乗ったタクシーの運転手さん、信濃川上駅前の食堂のご主人さんと、親しく話しかけてくれる。ビールのうまい山里の夏だった。
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