~水潤う奥秩父の森~ かさとりやま(1953m) 2008年7月27日(日)晴れ後曇り
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笹子トンネルを抜けたあたりでは雲が多かったが、作場平橋 の駐車場に着く頃には真っ青な空になっていた。 車から下りると、涼しい!この真夏の日帰り登山では、標高1300mの登山口はありがたい。登山口の標高が低いと、登りで汗をかくより前にまず暑さでへばってしまう。 カラマツ林から始まるこのコースには、水の役割を説明する掲示板が随所に立てられている。ここ一帯は東京都が所有している水源林であり、多摩川の最初の一滴はここ笠取山から発しているということは、意外と多くの人に知られているところだ。 水潤う奥秩父の山林を今日は、短い距離だが登り下りする。
ヤブ沢方面の道を分け、「急登」と書かれた一休坂の登りに入る。 登山口こそ涼しかったが、やはり登っていくと体中汗が噴き出してくる。周囲は背の高いスズタケとミズナラの森になる。蝉もほうぼうで鳴き、明るく爽やかな夏の山だ。 急登は長く続かず、やがて沢沿いに進む道となる。笠取小屋まではこの清らかな沢を見ながら登っていく。小屋脇にある沢の源頭がおいしい水場になっている。 夏になると笠取山に来たくなるのは、この冷たい美水に惹かれてかもしれない。 笠取小屋に上がる。前方に1人の登山者を見るが、小屋付近は誰もおらず静かだ。 カラマツ林を少し登って草原状の台地に出る。以前は花が一杯咲いていたのだが、やはりここも鹿の食害だろうか、ほとんど花を見ない。わずかにニガナ、オトギリソウを認める。マルバダケブキも思ったほど多くない。 それでも開放的な草原の広がりを目の前にして、身も心も解放される。
こんもりとした台地の小さな分水嶺に立つ。頭上は青空、あちこちにに入道雲が沸く。緑濃き奥秩父の峰々と、振り返れば大菩薩の端正な山容。富士山は雲に隠され、上の方しか見えない。 この分水嶺は多摩川、富士川、荒川それぞれの起点となっている。分水嶺の南東~東側に落ちる雨粒は多摩川に流れ、北東~北西方面に落ちれば荒川、西~南側は富士川の一滴となる。 ちょっとした位置の違いでその先の運命が大きく変わってしまう、雨粒の立場からすれば重大なポイントである。 小さくアップダウンして、笠取山への一直線の登りに入る。スキーで滑れば気持ちよさそうなゲレンデだ。 登る場合は一歩一歩、確かめるようにじっくりと登る。奥秩父や御坂、大菩薩の山々がパノラマで展開する。甲武信方面はよく見えるが、国師ヶ岳や金峰山は雲がかかる。 笠取山頂上に到着。広く大きな眺め。見渡す限りに緑の山野が広がっている。さっきの小さな分水嶺が真下に見える。なぜ山に登るのかと問われたときに、答えのひとつとなりうる眺望である。 展望を楽しみ、登ってきた斜面を下る。分水嶺を右に折れ雁峠に寄り道する。草むらに隠れるようにシモツケソウ、シロバナニガナが見られるがやはり全体的に花は激減状態だ。ほんの数年でこうも変わるものなのか。 笠取草原は文字通りの草の原になってしまった。 雁峠は山の斜面に挟まれた様な場所にあるので、野鳥の声が四方にこだまするのが聞いてて気持ちいい。のんびり昼寝出来るいい場所である。 すでに太陽が雲に隠れてしまったので、少し涼しく感じるようになった。そのせいか、今日聞こえるのは野鳥のさえずりよりもむしろ、草むらからの虫の合唱のほうだ。まだ7月なのにちょっとした初秋の雰囲気を味わった。 一人の登山者がやってきた。林道を歩いて広瀬湖方面に下るとのこと。昨日は丹波から歩き一ノ瀬に泊ったと言う。途中でひどい雷雨に会ったそうだ。 今年は夏空が安定せず、特に西多摩地方は雷のなる日が多い。今日も朝こそギラギラした日差しだったが、本来の夏のカーッとした乾いた暑さはない。8月が冷夏だった2003年と少し似ているのが気がかりだ。
そのうち黒い雲が空を覆うようになる。これは下山までに降られてしまうかな。早足で笠取小屋に戻り、ヤブ沢方面の下りに入る。 登ってくる人が一人、見覚えがある人だなと思ったらHgさんだった。話が出来たのは4年ぶりだ。花が少ないことを話したら、今日はハナヒリノキというツツジの花が山頂に咲いていると思うので見に来たとのこと。 自分はその花の名前は全く知らず、山頂では眺めのある方角ばかり見ていたので花にも気づかなかった。 ヤブ沢峠で左折し、ヤブ沢沿いに下る。木段が敷かれ、過剰なくらいに整備されている。涼しげな沢の音を聞きながら下るのは気持ちいい。 一休坂と合流し、作場平橋に戻る。車がたくさん停まっている。幸い雨には降られなかった。歩いた距離は短かったが、水と緑溢れる山稜を一巡りした楽しい1日だった。 青梅街道を東進するルートで帰る。奥多摩方向に雷鳴が聞こえる。奥多摩湖周辺の山稜は水墨画のように、まとわりついていたガスが上がっていくところだ。どうやら今日も奥多摩には雷雨があったらしい。 雷の日々が過ぎれば本格的な夏がやってくるはず。それを楽しみにして8月を迎えることにする。 |