山の写真集 > 北関東(栃木・茨城) > 太郎山
  • -奥日光のピリリと辛い一峰-
  • 光徳温泉-山王峠-太郎山-新薙登山口
  • 奥日光
  • 栃木県
  • 山王帽子山(2077m), 小太郎山(2328m), 太郎山(2367m)
  • 2017年9月9日(土)
  • 14.4km
  • 7時間55分
  • 940m(光徳温泉-太郎山)
  • -
  • 光徳温泉日光アストリアホテル
天気1

 

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2017年9月9日(土)
五反田IC 3:15
  首都高,東北自動車道
宇都宮IC
  日光宇都宮道路
清滝IC
  国道120号
5:55 光徳温泉 6:10
7:15   山王見晴し
7:25 山王峠
8:27 山王帽子山 8:37
9:20 ハガタテ分岐
10:28 小太郎山 10:43
11:12 太郎山 11:50
12:00 元お花畑
13:40   新薙登山口
13:57   裏男体林道
15:25 光徳温泉
アストリアホテル入浴立寄り
16:30
  国道120号
清滝IC
  日光宇都宮道路
宇都宮IC
  東北自動車道,首都高
五反田IC

 

今年の9月は残暑も厳しくなく、随分しのぎやすい。山も相当涼しくなっているだろう。
奥日光の太郎山に友人と登る。日帰りで登れる山だが、標高2300mを超え奥日光の中でも特に深山の印象が強い。
ルートは光徳温泉からの周回とする。8時間くらいかかるため、日帰りの山であっても早立ちが必要だ。車を出してくれる友人に無理を言って、3時に自宅を出発できるようにした。


太郎山山頂

光徳温泉の隣りにある広い駐車場

光徳駐車場

光徳キャンプ場からしばらくは、ミズナラなどの明るい樹林の道となる

明るい林の道

山王見晴しにはベンチと木道があり、山王帽子山がよく見える

山王見晴し

山王見晴しの先で、刈込湖・湯元への道と分かれ太郎山の方向へ。笹藪に潜るような道

笹の中へ

山王峠の林道から、笹の中に太郎山への登山道が延びている

林道からの入口

登り始めは腰から背丈ほどの笹の海となる

再び笹藪へ

山王帽子山山頂からは、樹林越しに男体山が大きい

男体山が大きい

山王帽子山から笹原に下る。正面に小太郎山が見えてくる

笹原に下りる

小太郎山への登路にて振り返り、日光白根山を望む

日光白根山

頂稜部に近づくとダケカンバが増え、頭上が明るくなってくる

次第に明るく

小太郎山山頂から中禅寺湖と、ほのかに黄色くなり始めた戦場ヶ原を見下ろす

広大な展望

小太郎山から東面の眺め。左から女峰山、小真名子山、大真名子山と並ぶ

奥日光の峰々


宇都宮ICで東北自動車道から日光宇都宮道路へ。清滝からいろは坂を上がる。紅葉の時期は渋滞するこの場所も、今はちょうど人の少ない時期で、しかもこんな早朝なので車は数えるほどだ。中禅寺湖沿いの道では、釣り客の車がちらほら停まっている程度だ。
男体山や女峰山、そして太郎山と思われる山を見上げながら竜頭ノ滝、戦場ヶ原と過ぎて光徳温泉の日光アストリアホテルに着く。すぐ隣にも大きな駐車場があったが、ホテルの前に停めた。外に出るとかなり涼しく、長袖シャツ一枚では寒いくらいだ。付近は登山者くらいしか見かけない。

直進する車道とすぐに分かれ、キャンプ場の方向へ。ほどなく左手の笹原の中に伸びる細道に入る。太郎山の登山口は山王峠にあるが、指導標は「山王峠、切込湖」とだけ示しており太郎山の文字はない。
しばらくは背の低い笹で敷き詰められた、平坦な樹林帯を行く。朝のきりっとした空気の中、樹木の間から日が柔らかく差し込み気持ちがいい。やがて道は急になってくる。木の階段の段差が大きく、歩幅に合わない。このあたりの標高はすでに1600m前後で、樹木もミズナラなどの広葉樹にシラビソが混じってきた。沢音がいつの間にか遠ざかり静けさが一層際立つ。

車の音が聞こえ、あたりが明るくなると山王峠を示す標識に行き当たる。さらに少し行くと展望が開けた笹原に出た。山王見晴しというところらしい。ベンチがあり、前方にはこれから登る山王帽子山が高い。
刈込湖への道から分岐して、太郎山と書かれた指導標が笹薮の中に半ば埋もれるようにして立っていた。その方向に行く道も、笹に隠れて全く見えない。こんなところを潜っていくのか、一瞬目を疑った。

案の定、途中で踏み跡を見失う。太郎山の登り口へは、すぐ上に見える林道に一旦上がる必要があるため、道のない藪の中を強行突破する。何とか上がった林道は、さっき光徳温泉の先で分かれた道である。太郎山を往復するだけならここまで車で上がってきてもよいのだが駐車場はない。実際路駐している車が何台があった。
なお「山王峠」はさっきの標識があったところではなく、この林道出合の場所を言うようだ。

林道を50メートルほど歩いて、左の斜面に太郎山への標識を見る。ここも背丈近い笹薮の中に登山道があり、地面が見えない。以降笹の薄いところもあるものの、しばらくはこの笹薮との格闘になる。下半身はたちまちびしょ濡れになった。こういうのは昨年の錫ヶ岳以来である。
奥日光の笹薮はスパッツは役に立たないので、もし濡れたくないのならレインウェアの下を着た方がいい。今回は我慢して着ずに登っていったら、しばらくして足が冷えてきてしまった。
高度をあげると笹は薄くなるが、今度は急登である。眺めのないシラビソの林を踏ん張って登っていく。西側からの登りなので日が差し込みにくく肌寒くもあり、まるで夕方のようだ。

小太郎山から岩尾根通しに、太郎山へ登っていく

岩尾根を伝って

小太郎山から開けた稜線を伝っていく

展望の稜線

枯れ木越しに「元お花畑」が見える。風光明媚な稜線

風光明媚

太郎山山頂から燧ヶ岳を望む

燧ヶ岳

元お花畑の縁から、太郎山を望む

元お花畑

新薙ルートの急なガレ場

急なガレ場

倒木やロープの張られた下りも多い

倒木も多い

新薙ルートにて、切り開きから小太郎山と太郎山が覗く

太郎山が覗く

ノコンギク(新薙登山口付近)

ノコンギク

裏男体林道を歩いて光徳温泉へ

林道をひたすら


無心に高度を稼ぎ、少し見通しがよいところに出る。振り返ると日光白根山が明るくそびえていた。山王帽子山は樹林越しに男体山が見える程度だが、久しぶりの平坦地であり腰を下ろして休憩する。ソロの若い女性が追い抜いていった。
山王帽子山からひとしきりの急降下の後、開けた笹原に出る。再び笹藪が腰の辺りまで当たるが、明るい平坦地なので乾いており、ズボンが濡れることはない。前方に小太郎山の急斜面がのしかかるようだ。再び樹林帯の登りに入る。
シャクナゲの木が増え、今は閉鎖されたハガタテルートの踏み跡を合わせる。高みに出ると、遠くに燧ヶ岳の双耳峰が見えた。
以降は木の間から周囲の山々が見えるようになるが、基本的には樹林の中の歩きが続く。

傾斜が緩やかになり、日差しも十分降り注ぐようになった。ダケカンバが増え、草地の尾根に出ると眺めが一気に開ける。そこから5分ほどの登りで小太郎山に到達した。
展望は360度、周りをぐるっと奥日光の山に囲まれている。男体山、大真名子山、小真名子山、女峰山。進む先には岩尾根を経て太郎山がもう目の前だ。これらの奥日光の山は家族に例えられる。男体山がお父さん、女峰山がお母さん、大真名子、小真名子、太郎山は兄弟だ。標高もうまい具合に順に並んでいる。
北方には燧ヶ岳や平ヶ岳、下に広がる戦場ヶ原はもうすでに黄色くなっていた。南方向には奥秩父の主脈がよく見える。
小太郎山はすでに標高2300mを超え、風がなく日が照っていても肌寒さを感じる。山の稜線はまだ緑でも大気は乾き、もう夏山というイメージではなくなった。

小太郎山からは少し険しい岩のヤセ尾根となった。特に下りになる場所は慎重に通過する。リンドウやコゴメグサなど、わずかに残り花を見かける。右手に見下ろす小広い平原はお花畑と呼ばれているが、今は花はほとんど見られないそうで、ガイドによっては「元」お花畑と書かれていたりもする。

最後のひと登りで祠のある太郎山の山頂に着く。ここも展望が広く、特に尾瀬や上越国境、会津方面の山々が近い。
自分にとってはここが関東百山の98座目。残るは目の前にある男体山、そして問題の箱根山(神山)となった。後者は火山活動のため立ち入り禁止となっており、いつ登頂を果たせるかわからない。もしかしたら99で打ち止めかもしれない。

下山は新薙コースを行く。急な下りの後、さっき見ていた元お花畑へ。ここは昔火口原だったのだろうか。
そこを過ぎると登山道の様子は一変し、ガレ場の脇の樹林帯につけられた滑りやすい下りとなる。傾斜はかなり急で、岩が突き出ておりロープをたぐっての場所も出てきた。ここは隣の大真名子山の登山道と同じく、日光三嶮に数えられている難所である。
今日の山は前半が笹薮、後半がガレの急降下と、なかなかタフである。女峰山、大真名子山、錫ヶ岳といった奥日光の山は、登山の対象としてはいずれも一癖二癖もある、ピリリと辛いものが多く、この太郎山も例外ではなかった。男体山一家の中でも、息子の太郎はなかなかの問題児である。

慎重に下っていくうち次第に傾斜が緩くなって、落ち着いた針葉樹林の道に入っていった。やれやれ一安心である。木の間から時々、太郎山の姿が見上げられた。新薙の登山口に下り立ち、ここからは林道歩きとなる。2時間近くかかってしまうが仕方がない。

志津乗越からの道を合わせる。見上げる太郎山は小太郎山と重なり、富士山のような台形状で堂々とした出で立ちだった。
林道を歩いていくとゲートに突き当たり、その先が駐車場になっていた。前回女峰山から下った時は電車バスの山行だったせいであまり気に留めなかったのだが、今は一般車はここまでしか入れないようだ。
(古い登山ガイドには、新薙登山口にPマークが記されている)

長い林道歩きに相棒も疲れ気味だ。温泉を楽しみに最後のひと歩きを頑張る。三本松バス停への道と分かれて10分、光徳温泉に戻った。歩行時間だけでも8時間近く。今日はよく歩いた。

光徳温泉は硫黄臭の強い白濁の温泉だが、お湯は意外とサラッとしている。
外国人の宿泊客が大勢入ってきた。缶ビール片手の人もいる。富士五湖同様、奥日光も今や日本人より外国人の方が観光客は多いように思える。しかし今日の登山中、見かけたのはおそらく全て日本人だった。
ホテルのパンフレットには、周辺のトレッキングコースとして太郎山だけが紹介されていない。太郎山は今のところは、奥日光で唯一の静かな山と言えるだろう。