~岩壁に紅葉映える信仰の山~ こうしんざん(1892m) 2006年10月22日(日)
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栃木県足尾町の庚申山は歴史の深い、信仰の山である。 足尾と言うと銅山のイメージが強いのだが、周囲の自然環境は豊かで新緑・紅葉が素晴らしいと聞く。また、上部の急峻な岩尾根の登降は古くから庚申講お山巡りとして歩かれてきた。 初夏はコウシンソウやユキワリソウといった貴重な花が咲くとのことだが、紅葉のこの時期に訪れることにした。 公共交通機関を使っての、東京からの日帰りはきつい。桐生駅前のホテルに泊まり、翌朝わたらせ渓谷鉄道の一番電車でアプローチした。
朝、雲が厚い。わたらせ鉄道で山深く入っていくうち、雨粒が窓をたたき始める。昼にかけて天気は良くなるとの事だが、秋空は気まぐれである。 足尾銅山観光の拠点、通洞(つうどう)駅からタクシーを使う。予約していなかったがすんなりと乗れた。銀山平まで2240円だった。 雨は降っていないものの周囲はガス。路面は濡れている。ゆうべはかなりの降りだったようだ。 登山口である一ノ鳥居まで、1時間ほどの林道を歩く。時折日が射すようになり、青空も覗く。 進行方向左手、庚申川を隔ててずっと自然林一色の山の斜面が続いているのだが、林道側の樹林に隠されて視界が悪い。それでも所々で、ガスの切れ間から紅葉の山肌が垣間見える。日曜日なのにそれほど人出はない。 一ノ鳥居からは、ゆるやかな傾斜の山道となる。自然林に包まれて気持ちいい。 道脇に丁目石が立っている。「九十四丁目 文久三亥年」と書かれている。歴史を感じる参道である。ここが九十四丁目ということは、山頂は何丁目なのだろうか。少し行くと「百丁目」と大書きされた標識に出会った。庚申山山頂は百十四丁目とのことである。 この先、中腹にある庚申山荘は登山者用基地としてだけでなく、一般の行楽客の宿泊用としても利用されているようで、時折登山の格好でない家族連れなども歩いているのを見かける。そのせいか、案内板や標識がいっぱい立っている。 せっかく雰囲気のいい山道なのに、「百丁目」の標識などあまりにも大きいのでちょっと不釣り合いである。 ゆるやかに高度を上げていくと、大きな岩が目立ち始める。鏡岩は、山中で猿に助けられた農夫が娘を猿に差し出すことになり、以後山に娘に会いに行ったらもう人間の格好をしていなかった、という悲話が残されている岩である。説明板を読んで少しホロッときてしまう。 少し上がると夫婦蛙岩。斜めになった薄い大岩が2枚重なっているだけなのであるが、言われてみればたしかに2匹の蛙のように見えてくる。 周囲の木々は色づき、もう少し天気がよければきれいな紅葉が見れるのにと思う。 石畳の道になると猿田彦神社跡、左に少し行けば庚申山荘の前に出る。霧深い山中は鳥も虫も鳴かず、静寂が支配する。自分の足音がやけに耳につく。 |