-緑萌えツツジ咲く赤城の尾根- じぞうだけ(1674m)からあらやま(1571m)、なべわりやま(1332m) 2009年6月7日(日) 晴れ
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低気圧が日本東岸に抜け、日曜日は朝から、爽やかな晴れが期待できそうだ。関東地方で週末に晴れるのは久しぶりのことである。どこへ行こうか迷うところだ。 そろそろ新潟の山もいいのだがこういう気圧配置のときは、関東甲信越では新潟だけ悪天候となる。それでも北のほうにはそろそろ足を伸ばしたいので、ツツジが期待できる赤城を目指した。 ツツジといったら主峰の黒檜山よりも、荒山・鍋割山のあたりだろう。地蔵岳から南西方向に一直線の縦走コースを試みた。縦走なので車ではなく電車とバスを利用する。
ささやかな贅沢として、高崎線は普通車グリーン席で行く。 前橋駅発のバスは、登山者を含めて乗客は10名くらいしかいない。赤城山は南面の山岳道路が発達し、登山口付近に駐車場も多いことから、車でアプローチするのが有利な山になっている。電車(鈍行)バス利用だと、都心から4時間近くかかり交通費もばかにならない。 休日の高速が1000円になっている今、軽自動車なら、ガソリン代を含めても車のほうが2000円ほど安くなるのだ。複数人数で行けばもっと差が出る。 自分も今は車が使えるが、政府も大胆な政策を講じたものだと思う。公共交通機関を利用するというエコ活動が、逆に費用がかさむのだ。逆ではないか。 ちなみに自分の出発駅、五反田からを例にとった場合、電車バスと車とでの交通費の違いは以下の通りである。(いずれも2009年6月現在) 電車バス利用の場合:
車利用の場合:
バスは、裾野を大きく広げた赤城山塊目がけて登っていく。富士見温泉で乗り換え、緑の山をぬってさらに登る。 鈴ヶ岳の登山口である新坂平を過ぎるあたりでは、道脇にツツジがよく咲いている。赤城山大洞(だいどう)バス停で下車。 青空の下を何切れもの低い雲が流れ、目の前の山をなでていく。どの方向を向いても緑がいっぱいだ。南関東の同標高の山に比べて緑の色合いがまだ軽く、奥多摩付近で1ヶ月前に見ていた新緑色が思い起こされる。 バス停前から、スキーゲレンデに沿って登る道もあるが、少し戻ったところに本来の登山道がある。登山口は簡単な標識があるだけで目立たない。 山道に入ると最初からきつい登りだ。しかしミズナラやシラカバなど、気持ちいい新緑のトンネルである。ハルゼミの鳴き声があたり一面に響き、それをバックにウグイスが思い思いにさえずる。 道は、ところどころ石がガラガラし、前日の雨の影響か、ぬかるんでいる。足元にはスミレもまだ咲いている。 20分ほど頑張って登ると、不意にあたりが開け、笹原の小台地に出る。地蔵岳の電波塔も見える。少し先に少年自然の家からの道が合流した。 ここからしばらくは穏やかな尾根道となる。再び傾斜は増してくるが長くはなく、正面に石積みを見るとほどなく広々とした地蔵岳に着く。 一等三角点の頂上部に立つと360度の眺めが広がる。主峰黒檜山の先、日光方面には雲海がたちこめていた。 南側の展望地に立つと小沼と長七郎山が広く見下ろせる。小沼のほとりにはツツジの深紅色が群落を形作っているのが見える。 「こぬまですか?」と聞かれる。小沼は正しくは「この」と読むようだが、普通にこぬまと呼ぶ人のほうが多い。同様に大沼は「おの」と読むので、「おの」「この」では小沼はどちらなのかかえって混乱する。 吹きぬける風が爽やかで気持ちいい。こういう天気での山も久しぶりのような気がする。 小沼に向かって下っていく。この下りはかなりの部分が木の階段である。つぼみだったヤマツツジも、少し高度を下げるといっぱいに花をつけた木が多く見られる。 下る人も、登ってくる人も後を絶たない。樹林帯に入るとハルゼミのワーワーという大合唱が復活する。今の時期ならではの山の声である。 最後は見晴らしのよい直線状の階段を一気に下り、車の停まる八丁峠に着く。すぐ先に車道が通り、小沼へ向かう。 すぐに「軽井沢峠→」の指導標がある。荒山へは関東ふれあいの道を使って軽井沢峠に向かうのだが、この標識は車道の案内をしているのだろうと思い、さらに小沼のほうに歩く。 しかし、これが大いなる回り道の原因になってしまった。
小沼の縁を回る遊歩道にはヤマツツジに混じってシロヤシオ、トウゴクミツバツツジも咲き残り思わず歩みが遅くなる。三脚とカメラザックを抱えた人も歩いている。 沼畔の橋を渡ってしばらく行くと、オトギの森と長七郎山登山口の分岐に出た。 軽井沢峠への分岐に出会わなかった。ちょっと行き過ぎてしまったようだ。地図を見ると、オトギの森経由でも軽井沢峠に行けるようなので、そのままオトギの森の方向に下っていくことにした。 オトギの森の広葉樹林は、小沼畔のそれよりさらに素晴らしい。ミズナラやツツジを中心とした樹林の密度は濃いが、鬱蒼とした感じがなく明るさに満ちている。森林浴という言葉はオトギの森のためにあるのだろう。 満開のヤマツツジもあちこちで見られる。 オトギの森というメルヘンチックな名前は、富士見村に住んでいた昔のスキー選手、猪谷千春の父が名付けたそうである。おとぎの国に迷い込んだようなミズナラの森に感動したのだろう。 時々右(北西)側に、谷を隔てて荒山の特徴ある姿が望める。このまま行けば軽井沢峠に通じる道に出るはずだ。 大きな標識の立つ場所で道は左に折れ、森の道をさらに行く。ずいぶん奥に進んだ気がしたので、念のためコンパスを出して方向を確かめる。すると、なんと東へ向かっていた。荒山や軽井沢峠と正反対である。軽井沢峠に向かう道は気づかなかった(今思い返すと、少し前の大きな標識のところで分岐があったのかと思う)。 どこを歩いているのかわからないが、前に軽装のグループも歩いているので、そのまま先に進む。 少し登りになり、指導標の立つ分岐に出た。左は小沼に戻ってしまう。どうやら、オトギの森一周コースの一番奥まで来てしまったようである。 右方向は茶ノ木畑峠である。銚子の伽藍を経て平石峠、軽井沢峠に出られるがかなりの時間を要する。しかしここからは右に行くしかないだろう。登山地図にも実線で書かれているコースだし、さほど難路ではないはずだ。 |