~温泉街から見上げる加賀南部の名峰~
タイトル
ふじしゃがたけ(942m)
2004年5月2日(日)快晴


我谷吊橋-富士写ガ岳-枯淵
-栢野大杉-山中温泉
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加賀はあの深田久弥の出身地でもある。山梨の茅ヶ岳は氏の終焉の山としてあまりにも有名だが、この富士写ガ岳が、実は深田久弥が11歳の時に最初に登った山だということはあまり知られていない。自分も帰ってきて初めて知った。

数ある北陸・加賀の山から富士写ガ岳を選んだのは交通の便が比較的いいこと、麓に観光ポイントがあり下山後楽しめそうなこと、そしてこの付近でも有数のホンシャクナゲの群生地であること、これが大きな理由だった。
しかし昨日の医王山で聞いた話を受け、いささか憂鬱なスタートとなった。もっとも、咲いているのがゼロということはないだろう。淡い期待を抱き現地に向かった。

展望の稜線から富士写ガ岳へ
展望の稜線から富士写ガ岳へ
2004年5月2日(日)翌朝帰京

6:12金沢駅-[北陸本線・雷鳥4号]-6:40加賀温泉駅7:13-[バス]-7:44山中温泉7:50-[タクシー]-8:00我谷吊橋-8:05我谷登山口-8:25鉄塔基部-8:45鞍部8:50-9:55枯淵コース分岐-10:00富士写ガ岳10:10-10:20前峰10:45-11:10廃道分岐-11:50水場-12:20枯淵登山口-(ダム南岸林道)-13:05我谷吊橋13:15-13:55栢野大杉14:15-[周遊バス]-14:30山中温泉16:28-[バス]-16:50加賀温泉駅16:55-[バス]-17:10片山津温泉19:10-[バス]-19:25加賀温泉駅19:53-[北陸本線]-20:36金沢駅23:00-[夜行高速バス]-6:10高島平駅前
歩行時間:5時間05分

山中温泉からタクシーに乗り、我谷(わがたに)吊橋の前まで行く。運転手さんによると今日これで3人目だそうだ。富士写ガ岳はこのゴールデンウィークが新緑とシャクナゲの季節でもあり、相当な混雑が予想される。

爽やかな五月晴れで、吊橋の前からは富士写ガ岳の姿がはっきりと望めた。もっとも、端正でひときわ目を惹く山姿であり、加賀温泉駅や山中温泉からもその姿は確認出来る。富士写ガ岳という山名は、「富士山と生き写しの山」ということから来たようだ。

我谷吊橋を渡る
我谷吊橋を渡る
展望の稜線に出る
展望の稜線に出る
吊橋を渡り新緑の登山道に入る。気持ちのよい黄緑のカーテンの中をどんどん登って行く。初めからかなりの急登。木の間から我谷ダムの湖面がすぐに見下ろせるようになる。
いつしか長い人の列についてしまう。それにしても人が多い。驚くのはもう70歳くらいのおばあちゃんが何人も登っていること。それに子供や若い女性も多い。皆地元の人のようで、後でこの日は山中町の集団ハイキングの日であることがわかった。

ヤマツツジやミツバツツジ、そして足元にはフデリンドウなどが瑞々しい新緑の山に彩りを添えている。だから急な登りもさほどつらさは感じない。ウスノキらしい花も1箇所で目にする。

鉄塔基部を過ぎ、シャクナゲと思える木が目に付き出し始める。
先端にあるのは花でもつぼみでもなく、みな若葉の新芽である。咲き終わってしばらくしてからの姿に似ている。はや次の年の用意に入ってしまっているかのようだ。
高度を上げるに従い、シャクナゲの木はますます多くなっていく。そしてそれらには花のかけらも見られない。地面に花は落ちてもいない。

シャクナゲは数年に1度「裏年」があり、その時はほとんど花を付けないそうである。これが裏年というものなら自分自身、初めて遭遇したことになるが、これほど極端なものとは思わなかった。

それでもどうにか、いくつかの花にめぐり合うことが出来た。しかしどれも弱々しくすぐにでも落ちてしまいそう。
回りが全く咲いていない中で、自分だけ抜け駆けして咲いて肩身の狭い思いをしているかのようである。

やがて樹高が低くなり、頭の上には青空が一杯に広がる。富士写ガ岳のピークも目の前だ。
振り返ると春霞の中に、町並みや周囲の山々が広く望める。再び樹林に入り、枯淵コースと合流するとすぐに富士写ガ岳頂上となる。

一等三角点の頂上は霞んではいるが白山が望める。しかし周囲は低い木に囲まれているので腰を下ろすと眺めは得られない。
ただ何といっても人の数だ。テニスコート半面位の所に60名ほどいる。座る場所を確保するにも苦労する。
緑に包まれた前峰
緑に包まれた前峰
ホンシャクナゲ
ホンシャクナゲ

頂上では長居出来ず、枯淵コースを下山路に取る。小さく下って登り返すと前峰と呼ばれる小ピーク。こちらの方が展望はいい。そして休んでいる人も少ないので、日陰を選んで休憩する。

シャクナゲの花が少しだけ咲いている。10分ほどで岩の突端に出る。ここからの展望は素晴らしい。
白山や加賀の山々、山中温泉と思える町並み、小松ドームの白い屋根がわかる。風も気持ちよくしばらく足を留める。
ブナ林の続く道
ブナ林の続く道

この枯淵コースも、我谷コースほどではないがかなりの急坂だ。しかしシャクナゲ群生地(木)がついえるとブナの純林となり、これがなかなか見ごたえある。
太く大きい木は見当たらないが、しなやかで女性的なブナの森だ。シャクナゲとブナが繰り返された後、高度を下げるとミズナラが優勢となる。どこも新緑真っ只中で清々しい下山路となる。
やがて水場のある沢をまたぎ杉林を過ぎると、工事中の枯淵ダムの前に出る。
対岸に渡ってしまおうかとも思ったが、手前の林道を辿って朝の吊橋まで戻ることにする。林道はシャガとニリンソウが花期を迎えている。
途中倒木が道を塞いだりもしていたが、1時間ほどで我谷吊橋に着く。シャクナゲは残念だったがブナの美林も一見の価値ある山と思った。

吊橋から車道を歩き栢野~山中温泉まで戻る。
我谷ダムからバス停のある栢野(かやの)までの車道は交通量が多く、歩くときは注意が必要だ。トンネル状の鉄製ガードが車道に付けられてからは歩道が極端に狭くなってしまったようだ(というか歩道はないに等しい)。
山中温泉から富士写ガ岳
山中温泉から富士写ガ岳

栢野の大杉のところ来ると、周遊バスの停留所があった。間もなく来たバスに乗り山中温泉で下りる。
山中温泉は漆器の里として知られ、石川では輪島塗とともに「山中塗」が有名で、生業としている民家や店も多い。また、街中に「片岡鶴太郎工藝館」があり、水彩画や山中塗・九谷焼といった氏の手による伝統工芸を鑑賞出来る。

山中温泉「菊の湯」、バスを乗り継いで片山津(かたやまづ)温泉にも入ってから金沢に戻った。



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