山の写真集 > 北関東(栃木・茨城) > 宝篋山
  • -田んぼ道を通って-
  • 小田休憩所-尖浅間-宝篋山-富岡山
  • 筑波
  • 茨城県
  • 宝篋山(461m), 富岡山(111m)
  • 2020年3月1日(日)
  • 8.8km
  • 3時間35分
  • 448m(宝篋山入口-宝篋山)
  • -
  • -
  • 常磐線,バス
天気1

 

2020年3月1日(日)
上野駅 6:31
  常磐線
7:35 土浦駅 7:50
  関東鉄道バス
8:18   宝篋山入口 8:23
8:28   小田休憩所
9:05   くずしろの滝
9:23 尖浅間 9:40
10:00 山桜の森
10:10 宝篋山 10:40
11:00 元禄こぶし
11:30   純平歩道分岐
11:50   小田城コース合流
12:07 富岡山 12:17
12:25 要害展望所
12:45   小田休憩所 12:53
12:57 宝篋山入口 13:04
  関東鉄道バス
13:40 土浦駅 14:00
  常磐線(特快)
15:18 品川駅

 

宝篋山(ほうきょうさん)は筑波山の南にある標高400m台の低い山だが、地元のつくば市や土浦市民にとっては身近な山で人気がある。登山適期には朝から駐車場が満車になるようだ。
「篋」とは竹製の長方形の箱のことで、山名は山頂に立つ宝篋印塔から来ている。また、中世・常陸国藩主の小田氏の居城であったことから小田山の別名もある。土浦市側から見ると、宝篋山が筑波山を完全に隠してしまうのて「筑波隠し」と呼ばれているらしい。
茨城県南部には筑波山のほか加波山、吾国山、雨巻山など標高は低いながらも個性的な山が多い。人気の高い宝篋山も一度登ってみたかった。3月に入ったこの日、電車バス利用で登ることにした。


宝篋山山頂からは筑波山が大きい [拡大 ]

宝篋山入口バス停から数分で、民家の先に宝篋山が見えてくる

バス停から山へ

田んぼ道の先に極楽寺コースが続いている

田んぼ道を歩いて

小田休憩所付近の田んぼ道には、ホトケノザがたくさん咲いていた

ホトケノザ

林道脇には背丈を越える篠竹が伸びている

篠竹高い

尖浅間のピークにはシロダモが多く生育 別カット

シロダモ

山頂手前には宝篋城跡があり、堀切や土塁などが見られる

城跡の地形

宝篋山山頂からは筑波山の奥に加波山も見える。背もたれのあるベンチでゆっくり眺望を楽しめる

加波山も

定願寺、極楽寺両コースの合流点は広い平坦地となっており、ヤマザクラの木が多い

山桜の森

山桜の森付近はコブシの木が多い。これは元禄こぶし

元禄こぶし

極楽寺コースの上部は急登道が続くが、人気のあるコース

極楽寺コース


常磐線を土浦駅で降り、筑波口方面行きのバスに乗る。自分のほかに登山姿の人はいないようだ。
バスが市街地を抜け郊外の広々とした田園地帯になると、右手に宝篋山が幅広く横たわっているのが見えてきた。なるほど確かに、低山ながらこの幅広の図体は筑波山を完全に隠している。

宝篋山入口バス停で下りる。住宅地を抜け山の方へ進む。登山口のある小田休憩所へは5分かからなかった。目の前には宝篋山のゆったりとした山容、その手前には田んぼが広がっている。宝篋山へはこののどかな田んぼ道を歩いていくようである。
駐車場はすでに満杯。しかしこの時間でもう下山してくる人もいるようで、入口にはスペースの空くのを待つ車も控えていた。

コースはいろいろあり、ここ小田登山口からも3本の登山道が宝篋山に通じている。分県登山ガイドに従い、東側の常願寺コースを歩くことにした。今回は先日購入した茨城県の分県登山ガイド(2016年改訂版)を参考にしている。
宝篋山は以前は生活に密着した里山だったが、次第に荒れ始め、平成に入ったころはヤブで入山もままならない状態になっていたそうだ。化石燃料消費など人々の生活スタイルが変化していくのに伴い、薪炭の入手地だった里山が顧みられなくなっていったという、近代日本の縮図がこの場所でも見られたようである。
その後、2003年頃から地元の人たちによる整備の手が入り、誰でも手軽に楽しめるハイキングの山に変わっていったと言う。一般登山が可能になってからまだ10数年しか経ってなく、それ故登山ガイドでもずっと紹介されてこなかった。今回参考にしている分県登山ガイドで、初めてこの山の記載のあるガイドを見たという次第である。

常願寺コースも最初、田んぼ道をしばらく歩いていく。空が広くて気持ちいい。田んぼの脇に小川が流れ、水辺にはホトケノザやオドリコソウなど、早春の花が鮮やかなピンクの彩りを放ち始めている。
日常社会はコロナウイルスへの恐怖一色となっている。こういうホッとする光景を目にすると心が落ち着く。
山間の未舗装林道に入る。山側は背丈を越える篠竹が力強く繁茂しており、かつてはヤブで荒れていたというのもうなずける。
沢コースと分かれて杉の人工林下の緩めの登りとなる。しばらくしてその沢コースと再び合流する。単調な杉林の登りが続く。バスから見えていた宝篋山には人工林の部分がそれほど目立たなかったと思うのに、選択したルートはどうもその薄暗い単調な登山道だった。他のコースにすればよかったかな。

くずしろの滝」を過ぎると急登となる。途中で人工林を脱し明るくなった。最後は休み休みの登りで尖浅間というピークに達した。
樹林に囲まれており、特に東斜面にはシロダモの木がたくさんある。一方西側は落葉樹林で枝間から宝篋山の大きな山体が見える。尖浅間というから、以前は富士山が見えたのだろうか。
ここからは明るい尾根歩きになる。緩く下って少し登り返すと、ヤマザクラとコナラの合体樹があった。

極楽寺コースの下部で見たニコニコ岩とワニ岩。説明イラストあり

ニコニコ岩とワニ岩

照葉樹の多い山だが、アオキはそれほど多く生育していなかった

アオキ

純平歩道の明るい尾根道

明るい尾根道

小田城コースの末端部、富岡山は標高111m

富岡山

要害展望所からはつくばや土浦方面が広く見渡せる

展望所から

ピンク色が鮮やかな早咲きのサクラ。カワヅサクラかと思ったが、若葉も同時に出ており何かの交配種?

サクラ咲く

要害展望所付近は南に面した明るい斜面で、スミレも咲き始めていた

タチツボスミレ

小田休憩所横の駐車場は早い時間から満車だった

駐車場は満車


ヒサカキが枝に小さな花をいっぱいつけてきたがまだほとんどが蕾だった。他の季節ではほとんど顧みられない照葉樹のヒサカキだが、冬の終わりからいち早くたくさんの小花をつけ始める。フサザクラ、ダンコウバイ、アブラチャンよりも開花は早く、春を告げる使者のひとつである。

広い平坦地に出る。山桜の森と呼ぶそうで、おそらく植栽とは思うがヤマザクラがたくさん生育している。こはもう少し季節が進むとお花見ができるかもしれない。極楽寺コースとここで合流、その先で土塁や堀切など、城跡の構造物に出会う。宝篋山もかつては山城の山だった。
登山道の整備に汗を流している高齢のグループがいた。宝篋山を少しでも歩きやすく親しみのある山となってもらいたい、そんな姿勢が感じられ、歩く人もそれに応えている感じがする。明るい雰囲気の山である。

バイオトイレを過ぎると突然舗装車道と交差する。宝篋山は車で山頂まで行ける山である。このまま車道を歩いて、空のだだっ広い山頂は目の前となった。宝篋石塔の横を抜けて宝篋山山頂に着く。
何をおいてもまずは筑波山の眺めである。二つの山頂から関東平野に落ち込む込む裾野まで余すところなく見られる。筑波隠しの異名をとる山は、筑波山の展望台だった。
筑波山の右後ろには加波山の姿も。反対側に海と半島のような地形で見えているのは見えるのは霞ヶ浦。関東平野の眺めもよく、空気がクリアなら富士山も見れるようだが、気温の高い今日は春霞みでそこまでの眺望は得られない。
草付の山頂には木製のベンチがたくさんあって、筑波山や霞ヶ浦をゆっくり眺めることができる。ベンチに背もたれが付いているのは珍しい。空いていたが、大きな顔してどっかり座るのがちょっと恥ずかしく、使わなかった。

山頂からの下山も、いくつものコースがある。極楽寺コースを下る予定だが、尾根歩きの続く小田城コースも歩いてみたい。バスで来たので出発地点に戻らなくてもよく、天気も良いので別の登山口に下ることも考えたが、あまり下調べしていなかった。
城跡を経由して先ほどの広場に戻る。コブシの大木への踏み跡を辿る。元禄こぶしは根元から2本の太い幹に分かれて伸びている。付近には他にもコブシの大木があった。

極楽寺コースの急坂を下る。基本は落葉樹の尾根だがヤブツバキなど常緑も多い。家族連れやグループが何組も登ってくる。極楽寺コースは宝篋山でまず最初に整備された登山道ということで、山頂への最短コースでもあることからやはり一番人気である。
下りが一段落すると照葉樹林帯となり、西方にトラバース道が続く。ニコニコ岩とワニ岩という面白い岩があった。
分岐から純平歩道に入ると少し道が細くなった。上部に小田城コースの尾根が高いところに見える。落葉樹が多く明るい登山道のようだ。分岐から20分、登山道はその小田城コースに合流する。道はぐっとよくなり、足がはかどる。
どんどん下っていくと富岡山への分岐があったので寄っていく。富岡山山頂は標高111m。山とも言えない標高だが関東平野が見下ろせた。それでも標高差100m近くあるので、意外と高さを感じる。
山頂は狭いが誰もいないので、背もたれのベンチがあったので座ってみる。やはり背もたれは山では違和感がある。振り返ると木の枝の間から筑波山が見えた。

照葉樹林の穏やかな登山道を歩いていくと、南面が開けた展望地に出る。要害展望所というところで、足元は岩壁になっていた。
近くに早咲きのサクラが、鮮やかすぎるくらいのピンク色を輝かせていた。瑞々しい若葉も出ており、今年最初の芽吹きを見られたことになる。上の方からウグイスの初鳴きもして、青空に溶け込んでいく。

お地蔵様の立ち並ぶ場所を過ぎ、ほとんど下った感のないまま、小田休憩所に下山する。目の前に広がる田園風景。田んぼ道は、朝見た時よりも、緑が少し濃くなったような気がした。

まだ3月に入ったばかりだが、幸先よく春山の雰囲気を先取りできた1日となった。筑波山にもまた春に登って、ブナの状態を見にいきたい。
自分以外に登山者のいないバスで、土浦駅に戻る。