-高山植物踊る山上の草原-
タイトル
小谷温泉側登山口-天狗原山-金山
山域 信越
地域 長野県
標高 金山(2245m)、天狗原山(2197m)
山行日 2010年7月23日(金) 前夜発  天気
沿面距離 10.1km
歩行時間 6時間15分
標高差 1013m(登山口~金山)
宿泊小谷温泉山田旅館(後夜泊)
温泉 雨飾高原露天風呂(立ち寄り入浴)、小谷温泉山田旅館
交通 マイカーHome



2010年7月23日(金) 前夜発

練馬IC 21:30
関越自動車道
上信越自動車道
長野自動車道

更埴IC 5:30
国道19号、148号、県道114号
小谷温泉 7:15
林道
7:30 金山登山口 7:45
8:15 稜線
8:25 水場 8:30
9:35 ガレ場下部
10:35 天狗原山 10:40
11:20 金山 12:10
13:00 天狗原山
13:45 ガレ場上部
14:35 水場 14:45
15:17 金山登山口
林道
16:15 小谷温泉山田旅館


関連リンク
小谷村観光情報


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北アルプス縦走を来週に控えているため、この週は山をお休みしてもよかった。しかし、週末の天気予報は山へ登りなさいと言っている。
金曜日を休みにして、テントで妙高山も考えていたが、体力的なことを考え麓泊にする。いずれにせよ新潟県まで車で行きたい。

妙高山塊の西隣、金山と天狗原山に登ることにする。新潟県上越と長野県との県境に位置し、山上湿原には夏から初秋にかけて様々な高山植物が見られるという。しかし妙高山・火打山・雨飾山といった頚城(くびき)山塊の名だたる名峰に挟まれ、知名度はいまひとつである。
一般的な登山口としては長野県の小谷(おたり)温泉となる。この温泉にも惹かれるものがあり、雨飾山と合わせて、一泊で充実した登山プランが立てられる。


金山の山上湿原。右奥は焼山

東京からはかなり遠い。前日の夕方に出発。上信越自動車道の佐久平PAで車中泊する。

このPAは付近で一番標高が高く、少しでも暑苦しい夜から逃れたいことから選んだ(とは言っても標高800mもないくらいなので、たいした暑さしのぎにはならないが)。
実際は雨模様となったため気温も下がり、寝苦しい車中泊は回避された。

金山登山口
ブナ林を登る
天狗原山が覗く
天狗原山
妙高山

上信越道から長野自動車道に移ってすぐの更埴(こうしょく)ICで下りる。長野県中部を横断するように北アルプス白馬の方向へ向かう。北アの稜線はうっすらと見えるくらい。
白馬駅付近は観光地のイメージだが、小谷温泉口から県道を上っていくと一転して、静かな山村風景が広がる。
今宵の宿、小谷温泉山田旅館を確認し、さらに上がっていくと雨飾高原のバス停。その少し先、雨飾荘の手前に「妙高→」との標識が示す林道が分岐していた。この道に入る。

この林道は乙見山峠を経て、妙高山・火打山の登山口となる笹ヶ峰へと延々続いているものだ。ツーリング対象としては魅力的な峠越えの道であり、実は今回の金山登山口へも、妙高側からこの林道を辿ってきたほうが時間的には早い。
しかし、自動車で走るにはちょっとしたタフな道とのことであり、軽自動車であればここは時間がかかっても長野側から回ってきたほうがいいと考えた。

雨飾荘手前の入口からは、ほぼ舗装(一部ダート)の道を15分ほどで、金山登山口に着く。
路肩の狭い駐車スペースには、平日なのにすでに5台ほどの車が停まっていた。早朝とは言っていられない時間になってきたので、暑くならないうちに登山開始とする。

駐車スペースから20mほど進んだところに登山道入口がある。登り出すと、すぐにブナ林のジグザグの急登となり、たちまち汗が噴き出す。
大きなカメラザックを背負った人に追いつく。「暑いですね」が挨拶代わりになる。やがて稜線、というか尾根の背に乗ったようで傾斜が緩む。
少しぬかるんだ場所を過ぎると水の流れがあった。そこからひと登りで、パイプで引かれた水場に到着する。水不足の心配がとりあえずなくなり、ホッと一息つくところだ。

なかなか見ごたえのあるブナ林の登りとなる。オタカラコウと水芭蕉の湿地帯に出る。水芭蕉の花期は終わっているが、葉が人の腰くらいにまで成長してちょっとビックリする。
登山道はやや険しさを増す。いくたびかの小さなアップダウンののち、いったん右手が開け、岩峰の横に出る。
その先で両側が高くなったV字形の登山道がしばらく続く。石がゴロゴロして歩きにくいが、ここは日が差さないのでいくぶん涼しい。

キヌガサソウの咲く平坦地に出る。正面に大きなガレ場が見えた。登山道はこの、山肌を切り崩したようにも見えるガレ場を登っていくが、雰囲気が突然、高山帯の様相に変わる。
モミジカラマツ・ミヤマキンポウゲから始まり、タカネナデシコ・クルマユリ・クガイソウなど、多種多様の花が咲き競っている。白いヤマホタルブクロは初めて見た。振り返ると妙高、火打など頚城山塊の峰々の眺めが広がっている。

ガレのピークに登りつくと、薄暗い針葉樹林帯の緩やかな下りに転ずる。あまりの雰囲気の変わり様に、さっきのお花畑が幻に思えるくらいだ。
しかし木の間から天狗原山の高いピークが覗き、それはやはり伸びやかな草原地を従えているようだった。

キヌガサソウ
モミジカラマツ
タカネナデシコ
ミヤマキンポウゲ
チングルマ

ネマガリダケの刈り跡が見られるあたりから、きつい登りが続く。時々現れるぬかるみは雪の解けた跡だろうか。
いったん傾斜が緩くなって、山頂近しと思わせたが、さらにピークを左から回りこむような長い長い急登が待っていた。

ようやく森林限界を脱し、潅木帯を経て広い草原に飛び出した。観音様と「天狗原山」と書かれた石標がある。一面の緑の中に、シナノキンバイとミヤマキンポウゲの黄色が鮮やか。
草原につけられた一本道を進むと正面に、焼山・妙高・火打の稜線、さらに金山と思しき緩やかな山頂も見えてきた。
登山道の整備を行っている、若者数人がいた。登山口に停まっていたバンタイプの車はこの人たちのものだったようで、やはり平日のこの山に登ってくる登山者は数えるほどしかいない。

焼山と火打山
残雪を踏んで
金山頂上
小谷温泉

いったん下って雪渓の縁を通る。潅木帯にシラネアオイが咲いていた。歩くほどに主役は次々と交代し、次に続くのはチングルマとハクサンコザクラ。このあたりを神ノ田圃と呼ぶそうで、春から初秋にかけておそらく、様々な花が咲き継がれていくのであろう。
高度を少し上げると今度はニッコウキスゲ、ムカゴトラノオ、ハクサンチドリ、モミジカラマツ、クルマユリなど、草原の花に引き継がれる。

これは、次の日に雨飾山に登って気づいたことだが、これほど多くの高山植物を見たにもかかわらず、金山と雨飾山の両方で咲いていた(のを見た)のはあまり多くなく、せいぜいタカネナデシコとクガイソウくらいだった。どちらにも山頂近くに広い草原を持っているのにである。山を形成する土や岩の成分の違いがあるのだろうか、興味のあるところだ。
いずれにしても、1泊でこの両峰に登れば非常に多くの花に出会えるので、お薦めのプランであることには間違いない。

この先も道は明瞭だが、何度か残雪を踏み越えていく。それでも天狗原山以降、大した登りもなく金山頂上に到着した。
背後の北アルプスは残念ながら雲に隠され気味だが、焼山・火打・妙高の稜線が眼前に大きく横たわり、言うことのない眺めである。ただし山頂はやや草木が展望の妨げになっているため、南面の草地に下りて休憩した。
特に焼山が真正面に大きく、いかにも火山でございといった、無骨なほどのいでたちが特徴的で面白い。

金山から焼山方向の稜線を見下ろすと、一本のはっきりした登山道がついている。焼山頂上に続いているかは不明だが、おそらく新潟県側から金山への登山コースになっているのだろう。

なお、雨飾山へ続く尾根道も北側に続いている。この県境を行く縦走路は、距離こそ6km程度なのだが、大きなアップダウンがあって体力を使うコースのようだ。いざ2つの山を歩きつなぐとなると、全行程で12時間かかるとのことなので、今回は2日に分けて登ることにしている。
この道を少し行くと、雨飾山がよく見える場所があるそうなのだが、今回はパスした(金山の登山コースは意外にも、すぐ隣の雨飾山を望める場所がほとんどない)。


下山は来た道を戻る。花の写真を撮りながらのんびり歩いた。
途中、出会ったのは山道整備の人と、単独行が3人(男1、女2)、それにケーブルテレビの撮影をしていた地元小谷村の方のみ。駐車場で見た車の数とほぼ一致する。

登りで注意していたぬかるみで見事に滑ってしまった。静かな山は歩くとなると気が抜けないところも多い。しかし信越の山の奥深さを満喫できる、いいコースであった。水場で体をリフレッシュし、登山口まで一気に下った。

ハクサンコザクラ
ニッコウキスゲ
ムカゴトラノオ
シナノキンバイ

小谷温泉へは車で15分ほど。林道から県道に出たところで、森の中に「雨飾高原露天風呂」という標柱が立っていたので、ちょっと寄って行くことにする。管理はこの手前の雨飾荘とのこと。
森林公園風の階段を数段上ると男女別に分かれ、30mほど先に石造りの温泉があった。周囲はブナ林、何とも贅沢な森林浴温泉である。
気持ちよいそよ風を受け、手足をいっぱいに伸ばし、時間を気にせずのんびりとお湯に浸かる。

小谷温泉山田旅館も、時代を感じさせる木造のいい温泉宿だった。ラドン含有のお湯は少々熱めだったが、何も飾らない掛け流しの本物の温泉を、じっくりと味わった。