2018年9月1日(土) |
◇ |
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新宿駅 |
10:12 |
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京王線
調布駅,北野駅乗換え |
11:12 |
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高尾山口駅 |
◇ |
11:30 |
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ろくざん亭 |
◇ |
11:55 |
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金比羅台 |
12:05 |
12:25 |
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ケーブル山頂駅付近 |
12:35 |
13:03 |
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地蔵堂 |
◇ |
13:15 |
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美人ブナ |
13:25 |
13:50 |
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薬王院 |
◇ |
14:05 |
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霞台展望台 |
◇ |
14:25 |
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琵琶滝 |
◇ |
14:50 |
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高尾山口駅 |
14:58 |
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京王線
北野駅乗換 |
15:51 |
新宿駅 |
◇ |
今年4回目の高尾山となる。雨予報だったが、朝起きると曇りながら薄日が差していて、西の方も大丈夫と思い出かけた。
今までもスミレなど春の花を見によく登っていたが、樹林に興味がいくようになってから、あらためて高尾山のすばらしさを認識することとなった。標高500m台でありながら、広葉樹・針葉樹・照葉樹のあらゆる種類の木がこれほどバランスよく生育している山は、他に見たことがない。この「長く維持された自然環境」に注目したミシュランガイドが三つ星をつけたのは当然と思うようになった。
基本は、4月に芽吹いたブナがどうなっているかを確認しに行くのが目的のため、同じくろくざん亭からのルートを行く。
美人ブナ [拡大] |
京王高尾山口駅から住宅地を歩き、緩く登ったところにあるろくざん亭先の登山口はやや草深くなっていた。
山道に入ると、まだ緑色のどんぐりが地面にたくさん落ちていた。肉厚の葉もついているのでてっきりアラカシなどの照葉樹かと思ったが、家に帰って図鑑で調べると、殻斗(お椀)の柄がコナラだった。
カシもコナラも同じブナ科の樹木で、種子はどんぐり(堅果)となる。今の時期は広葉樹の葉も緑濃くなって、照葉樹と見分けがつきにくいものもある。
この登山道は○号路といった名前はついておらず、昔から歩かれていた「旧道」という位置づけになる。尾根道なので他のコースのような鬱蒼とした樹林帯というよりも、里山に近い、広葉樹の多い明るい登山道である。春先はシャガがたくさん見られる。舗装はされていない。
少し登っていくと風がふくたびにポトポトと音を立てながらどんぐりが落ちてきた。
1号路からの枝道を合わせ、金比羅展望台に着く。曇りがちの天気だが眺めは広い。イチョウの大木とアンテナ施設があり、その後ろに高木が1本ある。4月のときはたくさんの花をつけていたが名前がわからなかった。花や実は今は見当たらず、下にも落ちていない。
この高木、4月のときは黒っぽい樹皮だったのだが、今日見ると赤味があり、まるでアカガシのようだった。同じ樹木でも季節の進みによって色が変わるのか、それとも剥がれ落ちたりするのだろうか。
金比羅台からは舗装道路となり、1号路と合流。高尾山の表参道であり、巨木のオンパレードとなる。高尾山は信仰の山として昔は禁伐林の扱いとされてきたため、樹齢何百年もの老齢樹が立ち並ぶ。表参道は特に禁伐とされていたのだろう。
高尾山というと杉の巨木のイメージがあるが、ここにはカシ類、シデ類、カエデなど樹種を問わず様々な巨木が林立している。究極の混交原生林と言えるかもしれない。
リフト駅を過ぎ霞台展望台へ。駐車スペースの横から手前の小山のブナを確認してから、ケーブル山頂駅の駅前ブナを見にいく。お昼時ということもあり、大賑わいとなっていたがほとんどが普通の格好で登山者はあまり見かけない。
「駅前ブナ」は山頂駅前広場の手すり越しに立っており、その両側にはイヌブナがある。ちょうど林冠部分が目線に近い位置にあり、今春受粉した種子が成長しているのを見ることができた。
葉はやや黄色味を帯びているのもある。9月に入ったばかりのこんな低い山に、思いがけず秋の入口を発見した。
手すりから下を覗き込むと根元の部分が見え、アオキなどの低木群に囲まれるようにブナが伸びていた。
この、自動販売機とベンチの後ろに立つ木をブナだと注目して見ている人は自分以外にいるはずもなく、ベンチに腰掛けている人たちも無関心だ。ケーブルカーでやってくるほとんどの人は、改札から出るとすぐに展望台やレストランの方に向かっていく。
やどり木のブナを見てから、さらに進む。イロハモミジの大木も、林冠のあたりが少し色づいていた。暑い夏でも、風通しのいい稜線はそれなりに朝晩の気温差が大きかったのだろう。
1号路の杉林に入っていく。多くの人が下ってくる。こんな時間に、自分のように山頂方向に歩いていく人はそう多くない。男坂の急な階段を避け女坂をに入ると、ヤマジノホトトギスが咲いていた。
黒い雲が頭上を覆い、夕方のようである。時々ポツポツとくる。薬王院への道を外れ、北側の尾根道に入ってみる。薬王院や不動堂の裏側にこんな道があるとは知らなかった。鉄柵に沿って道がつけられており、少し登るとわりと太いブナ、イヌブナが並んで立っていた。イヌブナは多くのひこばえを出している。あまりにも暗くてカメラのシャッタースピードが超スローになってしまう。
不動堂の上部に合流すると、来た道には夜間用の下山路との表示があり、ロープで仕切られていた。入り口には柵などもなかったのだが、やはり普段使われない歩道だったようだ。
木道を歩き、山頂への登りは省略していろはの森方向に下る。頑丈な木の階段を数分下って美人ブナを見る。
今まで確認した高尾山ののブナはいずれも単独木ばかりで、ブナ林といえるところはない。昔の資料を見るとブナ純林があるようなことが書かれているのだが、現存しているのかもわからない。
奥多摩や先週の王岳など、太平洋側で生育するブナはどっしりとして枝が太く、男性的なイメージのものが多かった。が、高尾山のブナと言うと駅前ブナや美人ブナなど、意外とスラリとした色白が目立つ。絶対数が少ないのでなんともはやだが、そう言えば天城山も東斜面と西斜面で、黒っぽいものと色白のものが棲み分けていた。
太平洋側のブナはその生育場所によってずいぶん形が変わるようである。
4号路が倒木のため通行止めとなっていたので、登り返すことにする。その途中で、針葉樹に数センチ径の種子が付いているのがあった。葉はモミに似ているが2本に分裂していないので、カヤかイヌガヤであろう。高尾山はモミが優占林となっている場所が多いが、このいろはの森上部はカヤが多い。
不動堂、薬王院を通って、茶屋の横から琵琶滝への下山路に入る。ここも◯号路という名前もつかず短いルートではあるが、照葉樹の豊かな森である。
左右に長い枝を伸ばした大木の根元にどんぐりが落ちていた。お椀にきれいな横縞模様がある。図鑑で確認したところ、シラカシとみて良さそうだ。
見た木の種類を図鑑で調べる場合、葉の大きさ、形、側脈、ギザギザの有無、対生か互生か、はたまた樹皮の色や生育している場所や樹高など色々な要素を、図鑑に書かれていることと照らし合わることになるが、全部ドンピシャと合致するようなものが見つかることは稀で、たいてい1つや2つの点が違っていたりする。例えば葉の形状は完全にシラカシなのに、樹皮の色だけ図鑑と違う、といった具合である。
もっとも木にしても花にしても、葉や枝など同じ種のものでも個体ごとにバラエティがあることが多い。図鑑の写真は1種類の種に普通1枚か2枚程度しか載っていないので、それで決めつけてしまうとなかなか結論が出せないことがある。要はやはり何度も粘り強く同定を試みることで、調べることに慣れることが必要なのだろう。
逆に、図鑑で説明されている特徴が全部合っているからといって、安易に特定してしまうのも注意が必要で、他に特徴の似たものがないか、他のページをめくって調べてみるようにしている。
修験場としても使われる琵琶滝に下り立ち、下山となる。ケーブル駅はこんな時間でも長い行列ができていた。
歩いた時間が短かった上に、山頂へも達しなかったが得るものの多い1日だった。今年は紅葉したらもう一度来てみようかと思う。