2018年4月8日(日) |
◇ |
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新宿駅 |
5:50 |
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京王線
北野駅乗換え |
6:41 |
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京王高尾山口駅 |
◇ |
7:00 |
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ろくざん亭 |
◇ |
7:50 |
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金比羅台 |
8:10 |
9:40 |
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ケーブル山頂駅付近 |
9:55 |
10:30 |
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薬王院 |
◇ |
10:35 |
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地蔵ブナ(不動堂) |
10:45 |
10:55 |
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高尾山頂下 |
◇ |
11:15 |
美人ブナ(いろはの森) |
11:30 |
11:50 |
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4号路吊り橋 |
◇ |
12:20 |
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1号路 |
12:40 |
13:15 |
ケーブル清滝駅 |
◇ |
13:25 |
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京王高尾山口駅 |
13:27 |
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京王線 |
14:24 |
新宿駅 |
◇ |
冬に見た高尾山のブナが、早くも芽吹きの時期になってきた。
例年なら4月中旬が平均的のようだが、都心では桜も散ってしまったし、今年は記録的なスピードで春が進行している。もう葉が出ているのではないかと考え、見に行った。
高尾ケーブルカー山頂駅の「駅前ブナ」の芽吹き(開葉)。 雌花がたくさんついていた
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京王高尾山口駅を出発。前回は琵琶滝から登り、ケーブルカー山頂駅近くのヤドリギブナを最初に見たが、ブナはもう少し低いところにもあるようなので、ろくざん亭コースから入山し、1号路の下部に合流することにする。
100mほどの舗装路ののち、すぐに雑木林となる。広葉樹も多く、樹種ははっきりしないがおそらくイヌシデ、オオモミジ、コナラ、どれも初々しい若葉色である。足元にはタチツボスミレ、チゴユリ、低木はミツバツツジが咲き始めている。そして植栽ではあるがシャガの群落が長い距離咲き続いていた。周辺はもう春爛漫である。
金比羅台の展望台で1号路と合流し、眺めが開ける。神社の奥に、黒く横縞の入った高木があった。上の方を見るとすでに開葉していて花も出ている。ブナかイヌブナのように見えるが葉が違う。あまりに高いところで開葉しているのでよくわからない。三脚も持ってきているのでここのズームいっぱいにして撮影した。
メインの道は急に人通りが多くなる。右手の尾根に登りブナを探してみるが、はっきりとわかるものはない。しかしイヌブナは多く、明るい萌黄色の若葉を出していた。ブナとイヌブナは葉が似ているが葉の質と大きさ、葉脈の数で見分けがつく。ブナの葉は肉厚な感じ、イヌブナの葉はひと回り大きく、ブナと比べると薄っぺらい印象がある。葉脈はブナが7~10本程度、イヌブナは10本以上あり、細かい。
東北地方や北陸のブナと違い高木が多いため、芽吹きを見るには双眼鏡があると便利だ(今日も持ってきた)。カメラの望遠レンズで確認するなら300mmズームくらいはほしい。
霞台の展望台に着く。都心のビル群や相模湾が見えて素晴らしい眺めだ。前回は寄らなかったが左手の小尾根に少し上がったところに、今度は正真正銘のブナがあった。胸高直径は70cmくらいでそれほど古木ではない。期待通りに開葉していた。
丹沢や秩父など、高尾山以外の南関東の山でブナの芽吹き新緑に出会うなら、生育地の標高がが高いのでだいたい5月になってしまう。ここ標高400m程度で4月上旬にブナの開葉が見られるのは、やはり関東では貴重である。
ブナの真下には雌花がいくつか落ちていたので記念に持って帰る。
人がますます多くなり、ケーブルカー山頂駅。改札出口の展望台手すり越しに、通称「駅前ブナ」が芽吹いていた。
駅前ブナは目にも優しい色の若葉とともに雌花を大量につけていて、今まさに受粉の待機中というところだろう。しかし雄花のほうは見当たらない。ブナはもともと雌雄同体で、雄花と雌花が同じ花芽から出てくる。雌花は上を向き、雄花は下部に釣り鐘のように垂れ下がる。新潟の新保岳などでも雌と雄が同時に出ているのを見ていた。
雄花はすでに風で落ちてしまったのだろうか。
ただ両者は時期を少しずらして出てくることも多いという。その理由はやはり、自家受粉を避けるためであろう。近くに同じブナがあれば、他家受粉ができることになる。隣りにももう1本あるのだがこちらは雌花さえも出ておらず、葉のみが茂っていた。
いずれにしても駅前ブナは、目線の位置で芽吹きが見えるので観察するにはいい対象である。
ケーブルから下りてくる人と反対向きに、車道に戻る。ブナ以外も、オオモミオジなど小さな赤い花をつけて「萌え萌え」の光景になっていた。やどり木ブナも芽吹いてはいたが、高いので双眼鏡でもわかりづらい。ぱっと見には葉芽しか見えない。目のいい人がうらやましくもある。
さる園を過ぎ、杉の大木を見ながら薬王院の門をくぐる。家族連れが普段着の格好で大勢繰り出してきていた。天気もいいので皆表情が輝いている。階段を上がったところにある地蔵ブナも樹高があるので、芽吹きが始まったのはわかるが細かな部分は見えない。300mmズームではちょっと厳しかった。
不動堂の横にも同じくらいの太さのブナがある。ファインダーを向けていたら、雄花が風に乗って飛んでいるのが写っていた。
山頂への最後の登りでもう1本のブナを見て、ここでいろはの森コースに入る。北面に入るととたんに静かになる。
木の階段を10分ほど下ると今日の一番の目標、美人ブナである。しかしこちらは芽吹きもしていなかった。
これは標高というよりも、他に茂る樹木との関係によるのかもしれない。いろはの森付近は高木、中高木、低木層と一応階層構造になっている。高い所が先に芽吹いて林冠が閉鎖してしまうと、低い部分に光が届かずに開葉できないかもしれない。こういう場所はちゃんと順番を守って、低いところから芽吹く。これが自然のルールになっているうはずである。
美人ブナの樹冠上部をズームで見上げると冬芽がたくさん見られた。開葉はもう1週間先だろう。
少し行くと、目線の位置にイヌブナが芽吹いていた。こちらは雄花のみで雌花が見当たらない。不思議である。高尾山のブナとイヌブナ、単に開花時期がずれているのだろうか。調べれば意外と興味のあることがわかるかもしれない。
吊り橋を渡り、深い森の4号路を歩いていく、カメラのバッテリーが切れてしまい、ここからはスマホで撮るしかない。地面を見るとおびただしいほどの花粉の玉が落ちている。これはみなイヌブナのものだろうか。新潟の方からも連絡があったのだが、今年のブナはどうやら豊作年らしい。すなわち開花・結実量が多く実がたくさんなるのだ。熊さん他いろいろな動物の食料になる。
ブナの豊作は5,6年に一度しかないようで、それ以外の年は並作、凶作とか、まったく実がならない(無結実)年もある。しかもこの豊凶のトレンドは各地で同調し、年によっては全国で豊作、全国で無結実ということもあるらしい。このあたりのナゾも今後掘り下げてみたい。
最近登山をしてとみに感じるのは、今まで単なる登山者として「ああ気持ちいいなあ」と感じるばかりで山を歩くわけにはいかなくなった、ということである。
雪と雪どけ、開花、芽吹き、倒木、雷雨、紅葉、動物の出現。山で見る出来事はそれぞれが、突き詰めていけば絶対何か因果というか理由、背景があるはずである。自分は研究者でもなければ、哲学者でも宗教人でもないただの登山者なので、正確な答えを得るすべもないが、疑問に思ったことは出来うる努力をして答えに近づきたい。そのための知識を今から少しずつでも身につけていきたい。
今まで20年山を歩いていて、まだ「山」というものを自分は理解できていないのだ。
森がこれからも森であり続けるためには、それぞれの個体が更新(世代交代)されていかなければならない。更新がなければ今生えている木はいずれは倒れるか、他の種類の木に取って代わることになる。裸地化してしまうこともあろう。
高尾山に残された数少ないブナは跡継ぎができないと言われ、もう倒れてなくなるのを待つばかりとされている。植樹をすることもありうるかもしれない。
また、他の樹木のこれからの行く末も知りたいものである。こういうふうに考えるようになったのは、やはり年をとって来たからなのか。巷の中高年登山者の方は、今の自分の世代(50後半~60)に、そのような心境の変化はあったのだろうか。
変なことばかり考えているうち、1号路に戻っていた。前回同様、照葉樹の大木を見ながら琵琶滝方面へ下っていく。
ケーブルカー清滝駅への到着は13時過ぎだった。早いご帰宅の割には、得たもの・疑問に思ったものいずれもが多いに増えた半日山行となった。
今は、駅前ブナの雄花が来週にでも出てくるのかどうか、それを知りたいところである。