山の写真集 > 中央線沿線 > 城山かたくりの里から草戸山
  • -早春の里山逍遥-
  • かたくりの里-雄竜籠山-草戸山-高尾山口駅
  • 中央線沿線
  • 神奈川県/東京都
  • 雄竜籠山(340m), 榎窪山(420m), 草戸山(364m)
  • 2019年3月20日(水)
  • 12.5km
  • 5時間
  • 262m(城山総合事務所-榎窪山)
  • -
  • -
  • 京王線, バス
天気1

 

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2019年3月20日(水)
新宿駅 6:47
  京王線
7:43 橋本駅 7:54
  神奈川中央交通バス
8:10   城山総合事務所 8:15
8:37   城山かたくりの里 9:50
10:05   尾根
10:15   小松城跡
10:40   評議原 10:45
11:10 雄竜籠山
11:25 文学碑
11:50 榎窪山
11:55 三沢峠 12:03
12:22 草戸山
12:35 草戸峠
13:40   四辻
14:10   尾根末端
14:35 高尾山口駅 14:43
  京王線
15:31 新宿駅

 

3月も半分が過ぎ、日に日に暖かさが増してきた。都心のソメイヨシノの蕾もピンク色に染まって今にも咲きそうである。今年はまだ花らしい花を見ていないので、郊外の里山にでも行って春のぬくもりを感じてみたい。
城山かたくりの里は10年ほど前に両親を連れて行ったことがあり、それ以来だ。山野草見学のあとは低い尾根を歩いて高尾の方まで繋げてみる。


かたくりの里はミツマタ、日向ミズキ、ハナモモなど春色に満ている [拡大]

城山かたくりの里は、かながわ花の名所100選に選ばれている

かたくりの里入口

城山かたくりの里

のどかな里山

白花カタクリが咲いていた

白花カタクリ

日向ミズキ

日向ミズキ

コシノコバイモ

コシノコバイモ

カタクリはまだ2,3分咲きといったところ

まだ2,3分咲き

日が高くなり、気温が上がるとカタクリもどんどん花を開いてくる

陽光受け

キクザキイチゲ

キクザキイチゲ

ヒカゲツツジ

ヒカゲツツジ

雪割草は見ごろだった

雪割草

カタクリ

カタクリ

里道を歩き、城山湖へ至る尾根の末端を目指す

尾根末端へ


京王線橋本駅が出発点。橋本駅はJRも乗り入れており平日の朝は結構な混雑で、電車を降りてから改札を出るまで5分もかかってしまう。三ケ木行きのバスは通学の学生で席が埋まっていた。城山総合事務所前バス停で下車する。西の方角に丹沢の山が白く光っているのが見えた。

かたくりの里へは交通量の多い車道を20分ほど歩く。小学校では今日は卒業式のようだ。川尻八幡神社の樹齢不明の大カシの横を過ぎると、付近はようやくのどかな山里の雰囲気に変わってくる。
左折して城山かたくりの里に着く。まだ開園の10分前で、受付の人も準備中だったが入れてくれた。標高差50メートルくらいの緩やかな斜面で、下のほうのカタクリはかなり咲いてきているがまだ満開というほどではない。だいたい2、3分先 咲きといった程度か。
今の時期はカタクリよりもむしろ雪割草が見頃を迎えている。新潟の山で見るのとまったく遜色ない、鮮やかな色合いの花があちこちで咲き競っていた。

山を登っていくと様々な木の花が、これまた鮮やかな彩りを放っている、ミツマタ、ミツバツツジ、ヒカゲツツジ、日向ミズキ、サンシュユなど、春色の見本市のようだ。春の里山風景には、日本人が古来持っている色彩感覚の豊かさがそのまま表れている。足元にはコシノコバイモ、キクザキイチゲ、ショウジョウバカマ、アズマイチゲといった早春の花も彩りを添えている。

日が高くなってくるにつれ、人もどんどん増えてきた。バスでやってきた団体客もいて、平日にもかかわらずかなりの人出だ。みんな自分と同じくらいか、少し年上ばかり。
平成登山ブームの影響なのか、こうした遊歩道完備の里山でさえも最近は若い人ばかりが目立ち、中高年登山者は一体どこに行ったのかと思うことが多くなっていた。しかし平日の山ならまだ、この年齢層の人たちの天下である。10~15年くらい前の低山ハイキングの情景を思い出し懐かしくなった。

かたくりの里を出て道路を横断、正面に見える林に入る。尾根のほぼ末端でここまでほとんど登っていないが、雑木林の気持ち良い登山道が伸びていた。風が通って明るい雰囲気である。
このあたりの低い尾根道は「さがみ風っ子トレイルランニング」のコースとして整備されており、家族向けに定期的にイベントも行われているようだ。子どもが走れる山道としているわけだから、危ないところはないといっていい。時おり、ザックさえも持たない普段着の人が歩いてくる。

手書きのプレートが木にかけられていた。木の種類は多い

手製のプレート

伸びやかで気持ちのよい道。地元の人にとってはうってつけの散歩コースだろう

気持ちよい道

ナガバノスミレサイシンにしては花が丸みを帯びていて、違うかもしれない

ナガバノスミレサイシン

昔、戦国の武将が落城の相談した場所とも伝えられている。周囲は落葉樹で明るい

評議原

キブシ

キブシ

評議原の近くのスダジイ。シイの仲間は葉の裏が白または金色がかっており、緑っぽいカシと見分けられるというが、微妙なものもあり難しい 葉の裏

スダジイ

ヒサカキは枝にたくさんの小花をつける

ヒサカキ

雄竜籠山の直下には金刀比羅神社が建っている

金刀比羅神社

金刀比羅神社からは展望がよく、橋本駅付近のタワーマンションがよく見える

タワーマンション群

草戸山付近の尾根道は照葉樹、広葉樹、針葉樹取り混ぜた樹林の道

樹林の道

草戸山の尾根道から、高尾山を見上げる

高尾山を見上げる

京王線高尾山口駅へ

高尾山口駅


小松城跡の説明版がある。南側から道が1本上ってきていて、日当たりがよいところだ。そのせいか初めてスミレを見る。かたくりの里でもスミレは見られなかった。ナガバノスミレサイシンのようだが、花が丸いので別の種との交配にも見える。

木には名前の書いたプレートがかかっており勉強になる。ハリギリ、アオハダ、ハシバミ、イロハモミジなど落葉樹が目立つが、杉や檜、カヤ、ヒサカキ、ヒイラギといった針葉樹、照葉樹もあり文字通りの雑木林と言える。照葉樹のヒサカキは木の枝にたくさんの小花をつけていた。
一方、ところどころに「私有地により立ち入り禁止」の表示もある。おそらく歩いている道も私有地で、所有者が登山道として提供しているのだと思われる。
日当たりのよいところには桜が咲いている。特に早咲きの種ではなくて、ソメイヨシノのようだ。まだ東京でも開花発表されていないのにこんなところでと思うが、このあたりは標高200mくらいで平地とあまり気温は変わらず、日当たりがよければ開花も麓とあまり差はないのかもしれない。

直径1m近くはありそうなスダジイの大木があった。太い木は照葉樹であることが多いので、ここは元々照葉樹林だったのだろう。
南関東や甲信、西日本の極相林は照葉樹だと言われる。人間が自然に何も手を加えず長期間(千年、万年またはそれ以上の単位で)放置していた場合、ゆくゆくは照葉樹林に変わっていくというものだ。神社やお寺に本来あるのは針葉樹の杉や松ではなくシイやカシ、モチノキまたはツバキ科の木だったはずだ。ひと時代前の日本にはこうした照葉樹の森が至る所にあって、誰にとっても身近な存在だった。
山に登るとつい広葉樹や針葉樹に目がいくが、日本人が古来持つ自然観というものは実は照葉樹がベースになっていたのではないかと最近は思う。

評議原という不思議な名前の場所に来た。昔戦国の武将が評議をしたところらしい。戦の作戦会議をする場だったのだろうか。
道は緩やかながら登り勾配となり、周囲はキブシ、アブラチャン、アシビなど早春のおなじみの木の花が多く目につくようになった。斜面にスミレも咲き、ようやく里山から「山」に入った感じがする。

上から車の音が聞こえてくる。金刀比羅神社への急な階段を登ると車道に出た。さらに神社に上ると、背後に東京や横浜方面の眺めが一気に広がった。急な山道を登っていくと雄竜籠(おたつご)山という小さなピークに到達した。すぐ南には雌竜籠山も同じような形でそびえている。北側には城山湖も見える。
このあたりの山を歩くのは初めてで、登山中に城山湖を見たのも初めてである。隣りの高尾山にはしょっちゅう来ているのに、こんな人造湖の存在をあまり意識していなかった。
付近はソメイヨシノが多く、ドライブに適した眺めのいい車道も走っている。春のちょっとした観光スポットとしてもいいところだ。

城山湖を右に見ながら急な階段を下り、いったん舗装道路上になる。この辺りもソメイヨシノが多い。発電所の先で道がカーブするところで再び登山道に入る。緩やかな登りが続く。
観光客に混じって登山者もだんだん増えてきた。峰の薬師への分岐を見て、さらに進むと草戸山・高尾駅への分岐標が出てくる。高尾山稜に入ったようだ。本日の最高点、榎窪山を通過して三沢峠まで下りベンチで休憩する。
南高尾山稜を縦走することも考えたが、草戸山への尾根道を歩くことにした。草戸山の展望台には多くの人が休憩していた。平日でもこの人出。高尾山の人気は599mの山頂周辺だけではないようだ。

南北に伸びる尾根道は急な階段の上下が多く、路面も硬いので足が疲れやすい。東京周辺の山は南側に富士山があるせいか、東西方向に尾根を伸ばしていることが多く、南北の尾根道はありそうでなかなかない。
そしてこういう南北方向の尾根は、地下のプレート活動が影響しているのか、褶曲して不安定な地形が多い傾向があるように思う。ここのアップダウンの多さはそういうのが理由にあるのかもしれない。

四辻で高尾山口駅に下れるが、さらにもう少し行く。高度が下がるにつれ照葉樹林が多くなってきた。アオキ、シラカシが多い。常緑の木といえども新陳代謝はあり、この3月・4月は照葉樹の新葉がどんどん出てくる時期である。高尾霊園の手前まで来ると東側が伐採で大きく開け、再び都心方面が望めた。
尾根末端まで下りきったところが高尾駅との分岐点。すぐ横にはもう人家が見える。左折して急な坂を下り、京王線のガードをくぐって県道に出る。暑いくらいの日差しを受けながら、10分ほどの歩きで高尾山口駅に着いた。

かたくりの里以降はあまり花を見ることはなかったが、思いがけず暖かな平日の低山歩きとなった。
杉花粉もようやく峠を越えたようだ。木々が芽吹き花が咲き始める半月後を、楽しみに待つことにする。