花咲山という名前も、まさに今の季節に歩く為にある山のようである。御春山のコースと比べ、こちらの登山道はエアリアでは破線表示扱いなので、それなりに歩かれているようだ。
石仏の佇む花咲峠
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大月駅を出たら右に行き、路跨橋で線路を渡る。その先で、左方向に下っていく車道に入る。これは奥山行きの路線バスが走る道である。雁ヶ腹摺山の登山口である山口館も、この道がアプローチとなる。
中央高速をくぐり、二十三夜塔の碑のところで左に入る。ここにはおなじみの大月市の指導標が立てられ、わかりやすくなった。
緩く坂を登っていくと浅利住宅、さらに行くと、さっきはるか下をくぐった中央高速道が同じ高さで迫ってきた。花咲山の登山口は高速のすぐ横だった。浅利トンネルの東側出口を見ながら山道に入る。
白い祠のある場所から折り返すように、尾根を登っていく。こちらも篠竹があるものの、御春山のように背丈ほど伸びてはいない。尾根は痩せていて明瞭。しかし地面は硬く、こういう路面は雨が降ると歩きにくくなりそう。
今日は天気もよく、明るく開けた爽快な登りである。振り返るたびに、眼下の中央高速がどんどん小さくなっていく。道には「花咲C・C」という境界標が時々現れる。この尾根を隔てて左側は全部、ゴルフ場の土地のようだ。
高速道路やゴルフ場に囲まれているわりには、自然林の多く残されている尾根である。
正面に見えるピークまで標高差はそれほどないが、直登気味の道なのでけっこうきつい。足元にはシュンランがあちこちで見られる。
少しなだらかになると、三角点標のある場所に出た。ここはサス平三角点(610m)だろう。ここからさらに登ったところにサス平の標識があった。
時間が遅いにもかかわらず、かなり多くの人が下りてくる。サス平から先も、地道な登りが要求される。ちょっとした平坦地に上がると、左右にかすかな道が伸びていた。花咲峠であろう。右に伸びる側にお地蔵さんが佇んでいるが、そちら方面は藪が深そうだ。
さらに登りは続き、頭上に雲も支配し始めてきた。肌寒さを覚えるころ、ようやく花咲山頂上に着く。樹林に囲まれているが、明るく小広い、気持ちのいい場所だ。
ここまで来ると、高速の車の音もほぼ聞こえない。誰もおらず静かな頂上で休憩する。
下山は南西方向、ほぼ直線状の尾根を進む。岩の上に乗る場所が多くなり、随所で南側の眺めが広がる。シュンランがここでも多く見られる。やはり一度気がつくと、以後目に付きやすい花である。今日ほどシュンランをたくさん見れた日はいままでなかった。
アップダウンが何度か続き、717mと思われるピークを越える。左手にアンテナのある突起を見たあとは、はっきりした下りとなる。下る方向に見える真木地区の家並みがどんどん大きくなっていく。登り口付近の高速道のせわしない雰囲気とは対照的に、静かな町の様子が見て取れる。
車道に下り、道なりに進みバス通りに出る。真木温泉の日帰り入浴は3時まで。あと30分しかないので、今から入りに行ってもカラスの行水になってしまう。が、山間の高級旅館を覗いてみたかったので立ち寄ることにした。
門に入っても、玄関まではまだ数十mは歩かねばならない。大きな造りの瀟洒な旅館である。温泉もなかなかよく、先日の大竜寺温泉(小鹿野)とはまた違った土の香りのするお湯だ。登山者には敷居の高い宿だが、いつの日か泊まって贅沢してみたい。
今日は中央線沿線の二つの山を越え、季節のうつろいを十分感じた1日だった。
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