~雑木林の尾根縦走と展望の山~
タイトル

ごんげんやま(1311m)
2003.3.9.(日) 快晴


マップ
8:18中央線猿橋駅-[バス]-8:50浅川バス停8:55-9:40浅川峠-11:05権現山11:55-12:55麻生山(1267.5m峰)13:10-13:20尾名手峠(小ピーク往復10分)13:35-13:55長尾根合流点14:15-15:00分岐-15:30民家-15:45富岡バス停16:40-[バス]-17:00猿橋駅 歩行時間:5時間20分
早春の権現山・麻生山 Home


中央線から見て、扇山や百蔵山の裏側にそびえる1311m峰が権現山である。山頂部がぼこっと丸く、周囲の山からも比較的同定しやすいが、登山の対象としては何故か地味な存在だ。
おととしの暮れに、扇山から縦走して初登頂した。そのとき気になった西側の尾根を今回縦走する。
よく歩かれているのは東側の用竹、不老下からの登路だが、やや植林帯が多い。その点西側は豊かな雑木の道になっていると見ていた。
猿橋駅から滝子山を見上げる
猿橋駅から滝子山を見上げる
浅川峠付近からの展望
浅川峠付近からの展望

猿橋駅から、午前中1便きりの浅川行きバスに乗る。15名ほどのグループもいて、バスの中は思いの他にぎやかだ。
浅川入口でバスは右折し、谷あい奥深く入って行く。民家が点在している。終点の浅川バス停はこの谷あいの道のどん詰まりだ。ここまでバスが入るようになったのは、そう古いことではないようだ。

2日前に降った雪で、滝子山や南大菩薩など周囲の山は、この時期にしてはかなり濃い雪化粧をしている。扇山、百蔵山の北斜面もそうだ。
歩き出しの林道はすでに白い。2,3cmほどのうっすらした積雪だ。ほどなくしてジグザグの登高となる。薄暗い植林帯はすぐに脱し、左側は背の低い雑木林となる。その先に、今日歩く西尾根がたおやかに伸びているのが望める。

浅川峠は扇山~権現山間の縦走路の1鞍部。バス停から1時間弱で到着する。このコースは大した労苦もなく稜線に上がることが出来るので、権現山への登りとしてもっと歩かれていいと思う。
浅川峠から5分ほど行くと、大菩薩方面の展望が一気に開ける。遠く三ツ峠山、南アルプスも一角だけ覗いている。今日は展望が楽しめそうな天気である。

積雪はうっすら程度でアイゼン、スパッツを着けるほどでもないが、水分の多いシャーベット状で滑りやすい。日当たりのよい南面なのでなおさらだ。

杉林をかすめて、本日一番の頑張りどころ、斜度のきつい急登が始まる。前回歩いたときも、ここは大変だったのでよく覚えていた。1時間30分ほど、ほぼ山頂近くまで急登が続く。中央線沿線の山は、南北に伸びる尾根道は急坂が多い。
しかし周囲は気持ちの良い自然林で占められ、葉を落とした今の季節は、木の向こうに富士山がすでに大きく望める。
登るほどに雪は少なくなる。不思議な現象だが、上ほど日当たりがよいということだろう。
権現山山頂から富士山
権現山山頂から富士山
三頭山、雲取山など
三頭山、雲取山など
権現山山頂
権現山山頂

次は山頂か、と何度もだまされながら急坂を踏ん張り続ける。ようやく東西に伸びる尾根に上り着く。権現山へは右折しもう5分の登りだ。
山頂からは素晴らしい眺めが得られる。樹林の尾根道が伸びている西・南東方向だけ眺めがききにくいが、それ以外はぐるっとパノラマの展望が広がっている。
南面の富士山方面は言うに及ばず、北側の奥多摩・奥秩父の眺めが目をひく。正面に笹尾根、その高まりに三頭山。端正な姿の御前山、個性的な大岳山と合わせて奥多摩三山が揃い踏みだ。雲取山、飛竜山、鷹ノ巣山、酉谷山、七ツ石山などもわかりやすい。東には都心の建物群がはっきり見えている。

夏期には若干眺めの遮られる方角があるかもしれないが、これほどの素晴らしい展望を望めるにもかかわらず人が少ないのは、やはりアプローチに時間がかかるからだろう。

風が強い中、1時間近く山頂に留まったあと、いよいよ西側の尾根を下る。
若干のアップダウンはあるものの、どこまでも続く自然林の尾根道は、やはりこの周辺の山の中でも白眉である。
トレースもそこそこ付いている。大木こそないが、コナラ・ミズナラやアカマツ、カラマツなど林相は豊かだ。ブナも少しあり新緑の時期もよさそうである。
富士山など南面の展望が、終始木の間越しであることが惜しい。しかしそこまで望むのは贅沢すぎる話であろう。

遠目からきれいな三角錐で見えていたピークに登り着く。北西方面に雁ガ腹摺山、大菩薩、ハマイバ丸、大蔵高丸が望める。
その後も小ピーク越えが連続し、やがて麻生山の山頂表示のあるピークに着く。エアリアマップなどでは1267.5m峰の少し西側に麻生山の標識のピークあり、と書かれているが、この1267.5m峰自体に麻生山の山名板が掛けられている。
西の尾根を登って来た人が休憩していた。ここ麻生山で引き返すそうだ。長尾根、鋸尾根とも時間的にはそう変わらないとのこと。この付近はやはり、人が少なくていいと言う。

腰を上げて次のピークへ。ここにも麻生山の表示がある。どういう訳か、このように隣り合った2つのピークに同じ山名表示があるのを、今までも何度か見ている。大菩薩・小金沢連嶺の黒岳、奥多摩・大岳山南方の鶴脚山などがそうだ。
片方は、こちらが正しい山頂だと言い張る人が私的に板を付けているのだろう。麻生山も最初のほうはとある山岳会によるものだった。
自然林の尾根
自然林の尾根

2つめの麻生山からすぐに尾名手峠に着く。鋸尾根方面に5分ほど進み、最初のピークに立ってみる。小さな岩峰で富士山や御正体山の眺めが再び得られる。
ここから先は大小の岩峰を越え杉平へ下りる道が続くが、今日はここで尾名手峠に引き返し、長尾根を下る。

峠からしばらくは山腹のトラバースで、湿った雪が滑りやすくかなり危険な状態になっている。足をちょっとでも滑らすと谷に落っこちてしまうので慎重に歩を進める。

長尾根と合流すると道も安定する。一転して雪も少なくなり、気持ちの良い尾根道が展開する。雑木の散歩道といった感じである。扇山の向こうに、白くいかつい丹沢の峰々が覗く。樹林を見上げると、1本だけダンコウバイの黄色い花を付けている。

駒止嶺のピークがどこだかわからないうちに杉林に入ると、そろそろ里の雰囲気がしてくる。それにしても今日はほとんどが雑木林の道であった。探せばこのような明朗闊達な尾根歩きの出来る場所が、東京周辺にもまだまだある。
山道の終わりは民家の軒先だった。集落を過ぎ、車道に上がる。富岡バス停の向かい側に店がありビールを買う。
日だまりの山里を眺めながら、1時間後に来るバスを待つ。


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