~伸びやかな草原は雲の中~
タイトル
だいぼさつれい(2057m)
2009年7月25日(土) 曇り一時雨

8:10中央線甲斐大和駅-8:55小屋平-9:45石丸峠-10:10狼平-10:40石丸峠-11:05大菩薩峠11:15-12:05雷岩12:20-12:30大菩薩嶺-13:30丸川峠13:40-14:40登山口(林道)-14:55車道-15:10大菩薩(裂石)登山口-15:20大菩薩の湯16:44-17:10塩山駅
歩行時間:5時間50分

マップ
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所用や戻り梅雨による悪天候が重なり、20日ぶりの山となった。
この土日の天気予報は、ずっと前から曇りや雨マークががついていたので、よもやこんなに好天猛暑となるとは思いもよらなかった。結果論だが、テントを持って一泊したかった。

狼平

土曜日、山梨県中央部は朝から気持ちのよい青空が広がった。中央線の車窓から百蔵山や滝子山、前道志の緑濃い山稜が勢揃い。昨日までの雨で空気のもやもやが一掃されたせいか、夏にもかかわらずクリアな眺めが得られた。

甲斐大和駅からバスに乗る。以前は天目までしか行かなかった地域バスが、シーズンの土休日は上日川峠まで走るようになった。
大菩薩嶺へのアプローチとしてはもちろん、小金沢連嶺や源次郎岳に行くのにも使えるので利用価値が高い。おまけに運賃も上日川峠まで1000円とこちらも高いが、この貴重な路線維持のためにはしょうがないだろう。

なお、従来の天目までの地域バスも運行している。天目まで300円と若干値上げされていた(上日川峠行き便では天目まで500円とかなり割高である)。

小屋平でバス下車
シモツケソウ
キオン
オトギリソウ
介山荘

上日川峠の1つ手前、小屋平で下車する(950円)。ここは上日川峠から石丸峠への登山道が交差する、おなじみの場所だ。
シーズンの土休日だけとはいえ、ここをバスが走るようになったのは都合がいいと思う反面、時代の流れも感じる。以前は裂石登山口から2時間半、苦労して登った地点である。

下界ではよかった天気も、曇と霧が空を支配する中での登山開始となった。最初からカラマツ林の急登である。ここから登る場合は準備運動を入念にやったほうがよさそうだ。
未舗装の林道をもう一度またぐ。登山道崩落の為、反対側の登り口は250mほど右に移動されていた。
雨後で地面は滑りやすいが、きつい登りではない。高度を上げていくにつれ、わずかに見えていた山の斜面も、上がってくるガスに完全に飲み込まれてしまった。今日はここから上は、乳白色の中での歩きになりそうである。

緩急を繰り返していくうち、樹林が切れる。広い笹原は見事なまでのガス一色。左手にあるはずの熊沢山の斜面が全く見えない。
10名ほどのグループがヌッと目の前に現れる。指導標を見出し、石丸峠で少し休憩する。

ここから大菩薩嶺を経て下山では少し物足りない。小金沢連嶺の稜線を行くのもいいが、今日は久しぶりに嶺を登ってみたい。1998年に初登頂して以来、昨年は初めてここを訪れない年だった。久しぶりの登山者に対して、山はこういう天候でもって皮肉の挨拶をしているのかもしれない。

時間的には余裕があるので、狼平のほうまで行ってみることにした。
白い風景は相変わらず。10年のうちに花も激減してしまった。しかし足元をよく見ると、笹に隠れていろいろな花が咲いていた。コウリンカ、ウマノアシガタ、キオン、シモツケソウが多い。
牛ノ寝通りの分岐を過ぎ、天狗棚山の山頂部を越えて広い鞍部に着いたところが狼平だ。待ってもガスは晴れそうにないので引き返す。
と、急に雨がポツポツ来てしまった。岩場のない平坦道なので、雨具でなく傘をさしてしのぐことにする。天狗棚山への登り返しがうっとおしいので巻いてしまおうと思ったのがいけなく、笹の海に埋没してしまい、たちまちのうちにずぶ濡れになった。
ホタルブクロ

肌寒いので、早足で歩いて暖まろうとする。石丸峠から熊沢山への登り。背中が温かくなったと思ったら、雨がやんでガスがみるみる薄くなっていく。眩しいほど明るくはなったが、太陽との対面はなかった。

熊沢山から針葉樹を下り大菩薩峠へ。改築後の介山荘は今日初めて見るが、形は以前とそう変わっていない。
若い男女のカップルが数組、大菩薩嶺に向けて出発する。自分もあとから行く。上のほうから元気のよい若者が集団で下りてくる。
今日の登山者は、この山域にしてはずいぶん平均年齢が低い。いつも見かける中高年のグループは今日は皆無だ。天気予報が悪いのを敬遠してだろうか。このあと稜線に上がってからも、若い人の行列を何度も見る。

相変わらずガスの中だが、花はウスユキソウやハコネギクなどが見られるようになる。コウリンカも群生しているところもある。これらはやはり、鹿が食物としないものばかりであろうか。
ヤナギランがこの稜線から姿を消して数年が経った。鹿が食べつくしてしまったというのがもっぱらの定説だ。
南大菩薩の山に比べこの大菩薩嶺付近の花の減り具合が大きいのは、やはり地理的に奥多摩と近いことが大きな理由だろう。奥多摩の鹿が溢れてここまでやって来たと考えるのはたやすい。
また、奥多摩ではここ数年鹿の頭数調整が行われているから、鹿たちはこのあたりまで追われてきたと思われる。居場所のなくなった鹿はこの先、奥秩父、群馬や八ヶ岳まで生息範囲を広げていきそうである。
シモツケ
ウスユキソウ
丸川峠

雷岩も若い人たちで賑わっていた。これほど何も見えない雷岩展望台も初めてである。Tシャツの上に長袖シャツを着ているが、もう1枚欲しくなった。
コウリンカ

久しぶりに大菩薩嶺の三角点まで行く。いつも通りの簡素な頂上。今日は丸川峠を経由して下山する。急なところのない、しっとりとして落ち着いた山道はなかなかいい。こういう天気に似合う。
15分くらいすると大学生と思われる10名くらいのグループが休んでいた。大きいザックはどこかお泊まりだろうか。頂上まであとどのくらいかと聞かれたので、自分の下山し始めた時刻だけ告げた。

天気は曇りのまま落ち着いているが、風が舞うと、葉に溜まった雨水が風で勢いよく落ちてきて、また雨が降り始めたかと錯覚してしまう。丸川峠までは結構な時間がかかった。

まるかわ荘の立つ草原は花のほとんど見られない草地になってしまった。建物の煙突から煙が出ている。お湯を沸かしているのだろう。煙突の煙は懐かしい匂いがする。今や山小屋でしか嗅げない匂いである。
笹の陰にノハナショウブが1輪、けなげに咲いていた。

ここからの下山路は、雨の後などは滑りやすいので注意すべき場所だ。下るうちにガスが切れ青空が覗く。樹林が切れて大菩薩ライン(青梅街道)が見下ろせた。
にわかに暑くなり蝉の声も聞かれる。最後になってちょっぴり夏山の気分を味わえた。
急坂をこらえ下りきり、林道に下り立つ。裂石登山口に出ると青空と白い雲が眩しい。関東甲信は本当に梅雨明けしたのだろうか、と疑問を持つようなここ最近の天気だが、こういう図を見るとやはり夏を実感する。
しかし大菩薩峠付近の稜線はいまだ厚い雲に覆われている。今日は標高1700mより上は雲の中だったようだ。

大菩薩の湯で汗を流し、バスで塩山駅に下る。このバスもいつの間にか、運賃が100円から300円になっていた。


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