~広葉樹豊かな権現西側山稜~ あそうやま(1287m) 2008年11月15日(土) 晴れ後曇り
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新宿駅の工事の影響で、中央線は朝から大変な混雑。高尾駅までずっと座れず、乗換えた中央本線も席が埋まっている。 上野原駅を過ぎてようやく席が空いた。腰を下ろすと、猿橋駅に着くまでの短い時間の間に一回寝てしまった。
猿橋駅から上和田行きのバスは、乗客は自分一人だった。天気予報があまりよくないとはいえ、紅葉のいちばんいい時期としては意外だ。駅から近い百蔵山や扇山に登山者は集中しているようである。 バスは静かな山村に入っていく。杉平入口バス停で下車。今日は5年ぶりに鋸尾根を歩く。 天気がよさそうなら権現山まで行きたいが、今日の所は麻生山から長尾根を下ることにする。 小姓集落の里道を少し歩く。朝の農村の風景はのどかで心洗われる。 ポンプ施設を見て緩く坂を上がっていくと、眼下に集落の眺めが広がった。バックにそびえる山は水無山だろうか。紅葉は山の中腹から麓近くまで下りてきている。 茶畑のある民家の脇を通って、登山道になる。竹林をくぐると檜の植林地帯になるが、やがて広葉樹の多い雑木の森となる。
鋸尾根はその名のとおり、上部でヤセ尾根状のギザギザのアップダウンがある。広葉樹が多く新緑・紅葉時にはいいかと思うのだが意外と人は少ない。登山道としては地味なのと、急峻なアップダウンが敬遠されているのか。 東京周辺で静かな山を歩きたく、かといって杉・檜の植林ばかりの道は敬遠したいならばこの権現山西側山稜がおすすめのエリアだ。 穏やかな雑木林。コナラやカエデなど、落葉樹の高木が多いがアカマツやマツなども混ざる。 初めのうちはまだ緑の葉も多いが、標高を上げるにつれ黄色やオレンジ色が目立ってくる。そして足元は落ち葉で敷き詰められ、深秋ならではの足の感触。今年もこの季節が来たのだと実感する。 クリのように大きな葉をつける木がないため、登山道はすっきりしていて歩きやすい。 やがて道は急登に転じ、これがやたら長い。息を弾ませながら落ち葉道を登る。 ようやくなだらかになったところはおそらく1129mピークだろう。ピークというより尾根の肩といった感じだ。大月市の指導標と丸太で作ったベンチがある。周囲は葉を落とし始めた木も多いが、だいたい紅葉の見頃となっている。 以降、急峻なコブを避けるように、尾根の少し下を歩く部分が多くなる。尾根がやせ、露岩の目立つ道となり、場所によっては岩に手をかけ四肢を駆使して登る。 展望は乏しいが、ヤセ尾根の両側に紅葉に彩られた山肌が見下ろせる。 笹が現れ、再び急登。おそらくここを登りきれば北峰に着くだろう。頭上が開け、左に大寺山への踏み跡を分けると、小広い北峰(約1250m)に到着する。 松の木が1本、それに何と鏡台の鏡がかけられている。こんな大きな鏡をわざわざ運び上げる人も人だが、何となく「その汗まみれ泥まみれの顔を見てみなさい」と言っているように思える。山も最近は多くの人が行き交うので、身だしなみには注意しなければならない時代にでもなったのか。 北峰からは南面を中心にして広い展望が得られる。しかし雲が厚く富士山は見えない。腰を下ろして休憩しているうちに日差しが隠れてしまい、とたんに薄ら寒い地となった。 ところで北峰は麻生山北峰」の意味かと思ったら、今回「郡内鋸岳北峰(三ツ森)」という古い山名板がかけられているのに気がついた。麻生山とは関係なく、鋸尾根にある数々の小ピークの中で一番北側にあるもの、という意味が正しいようだ。
寒いので次の麻生山を目指す。短いがヤセ尾根の急降下。ここからいくつものピークが林立し、登っては下りを繰り返す。 いったんなだらかになると尾名手峠。長尾根への分岐があるが、このトラバース道は少々危険な部分があるため下ることは避ける。 峠から少し歩いて麻生山に到着。休憩しようとしたが、この先にもう1箇所麻生山の標識のある場所があるのを思い出したので、そこまで行ったところで腰を下ろす。このあたりは混乱する山名表示が多い。 麻生山あたりになると、ブナも含めもうすっかり落葉している。 天気予報どおり、朝方の好天から一転、どんより重たい空模様となってしまった。次の目立たないピークから尾根を離れ、右に分岐する笹の踏み跡に入る。
テープがベタベタと貼られていて迷う心配は無い。ひとしきりの急な下りのあと、指導標が現れる。ここからの長尾根は広葉樹林が続く。変化に乏しく単調なきらいはあるが、急坂もなくのんびりと歩くことが出来る。 しかし惜しいことに、太陽がすっかり隠れて薄暗くなってしまい、きれいな写真が撮れない。途中で音叉(おんさ)の形のした珍しい木があった。 ジグザグに下って駒止嶺の分岐に着く。いつも天神峠回りを歩いているので、今日は直進して駒宮への近道をとる。正面に水無山が大きい。社のような小屋を見て、林道に下りる。 白菜が収穫間近の畑の横を通り、駒宮の集落に入る。 長鋏で柿を採っている人がいる。もう紅葉の山も今年は見納めだろう。 富岡バス停から猿橋駅に戻るバスは、自分のほかに登山者が1人だけ。山の中では、今日は最後まで誰にも会わなかった。朝の電車の大混雑から一転して、静かな山の1日だった。 中央線で新宿駅に戻ってくるとまだ混乱が続いており、帰宅するまでにもう一汗かいてしまった。 |