~ガスが切れ梅雨明けの青空~
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海の日の3連休はどこも混むので、軽く日帰りで済ませたい。3日間とも天気がよさそうなのでもったいない気もするが、日曜日の夕方に用事があるし、先週充実した歩きをしたので、やっぱり日帰りにした。 日帰りと言っても八ヶ岳なのでそれなりの歩きがいはあるだろう。電車バスならば一泊にしたいコースを、車を使って観音平まで上がる。
中央高速の小淵沢ICから舗装車道を20分ほどで、意外なほど簡単に観音平まで上がれる。デコボコの林道もなく、車でアプローチしやすい。先月の奥秩父・一ノ瀬高原より早い時間に着いてしまった。 しかし駐車場はほぼ満杯である。路肩にスペースを見つけ何とか駐車する。まだ朝早く爽やかな空気。富士山も見られてもう梅雨明けしたような陽気だ。 編笠山へは最短距離ではなく、観音平歩道が通る展望台を経由して行く。グリーンロッジの裏手からカラマツ林を緩く登る。 千畳岩という大石がゴロゴロした場所を過ぎると、やがて南アルプス方面が開かれた展望台に着く。富士山もかろうじて見える。 夏のギラギラした日差しを背に、樹林帯の登りが続く。雲海展望台を経て編笠山へのコースは6年前の同時期に歩いているが、アブが異常に多く大変だった。今日はそんなことはなさそうだな、と思っていたら甘かった。 日が高くなり気温が上がるにつれ、やはりアブが出てきた。顔の前を飛び交っているので払いのけようとするとその手にまとわりつく。しつこく粘り強いアブ達だ。Tシャツやズボンの上から容赦なく噛み付いてくる。これはたまらん。 前週の谷川連峰でのブヨとは違い、虫除けスプレーが全く効かない。なぜ八ヶ岳のこの南面登山道に限ってアブの天国になっているのか、不思議だ。
雲海展望台で本来のコースと合流、針葉樹林帯の急登はさらに続く。シャクナゲが花を残している。さらに高度を上げるがアブはいなくならない。 押手川で青年小屋への道を分けると、だんだんと高山的雰囲気になってくる。少し頭上が明るくなってきた。 朝方の青空はどこへやら、周囲は雲に覆われ始めてきた。やっぱり梅雨明けはまだなのだろうか。 ハイマツが現れ森林限界に達する。梯子を越えて溶岩の斜面を踏ん張って登る。さすがのアブもいなくなったが、展望もなくなった。編笠山は展望が売りの山なので、これはちょっと残念。 編笠山頂上に着くと、北から西側の眺めが得られた。赤岳や阿弥陀岳、西岳。蓼科山も見える。遠くは木曾御岳や中央アルプスも。 富士山や南アルプスなど南面が雲に閉ざされているだけで、けっこういい眺めが広がっている。 しかしここまで、休憩込みで2時間で上がってきてしまった。我ながら健脚な登りだった。 けれど日が射さないので標高2500mの頂上は少し寒い。休憩してハイマツの中を下っていく。 青年小屋までは標高差140mを下る。はるか下に小屋が見える。最後は石の上を飛び渡りながら青年小屋に着く。ここから5分ほどの水場に行くとキバナノコマノツメがたくさん咲いていた。 このまま下ってしまうのはもちろんもったいない。天気は今ひとつパッとしないが、権現岳へ向かう。 ヨツバシオガマやキバナノコマノツメが咲く中を登っていくとやがて森林限界。振り返っても編笠山は雲の中で全く見えず。
ノロシバの岩礫の斜面にはにチシマギキョウが咲いていた。ここのチシマギキョウはいつも同じところに咲くようで、前にも写真を撮った覚えがある。 目の上のギボシ目指して急斜面を登る。岩場、ガレ場、鎖場が連続する。高度感もなかなかのもの。そして高山植物もぐっと種類が増える。ハクサンシャクナゲ、ミヤマミミナグサ、イワベンケイ、ミヤマオダマキ、シコタンソウ、ミヤマダイコンソウなど。 そしてハクサンイチゲ、今年初めて見れた。日帰りの山でハクサンイチゲが見られるとは運がいい。 ハイマツの気分のいいヤセ尾根をさらに登る。ギボシを左上に見て、権現小屋を右下に見ながら岩尾根を登れば、権現岳頂上はすぐ先である。その手前の、赤岳へ向かう縦走路の分岐点、このあたりも展望がよいのでゆっくり休憩する。 天候もゆっくりとだが回復し、編笠山の丸い姿が雲間から現れてきた。権現岳の頂上にタッチし、さらに先を進む。 ここからは初めて歩く道である。ちょっとした岩場を下り、ハイマツとシャクナゲの間をくぐって樹林帯の鞍部に出る。すぐに登り返しになり、1つの顕著なピークを越えると三ツ頭への登りとなる。 中高年の団体さんが下ってきた。とは言っても自分ももう、中高年登山者の仲間入りだ。ハイマツ帯を過ぎると三ツ頭の頂上である。 ここは編笠山よりも標高が高いのだが、八ヶ岳の八のうちに数えられていない。やはりどっしりとした風格を備えている点で編笠山のほうに軍配が上がるのだろう。 それでもここ三ツ頭からもなかなか展望がいい。編笠、権現と今辿ってきた稜線をぐるっと見渡せる。 アブが数匹寄って来た。少しの間アブの存在を忘れていたのに、これからの下山のアブだらけの歩きを想像すると気が重くなった。 天女山への道を分け、観音平への下りに入る。いったん樹林帯に入るがすぐに開けた尾根となる。これは山火事跡のようにも見えるが単なる伐採の跡なのだろうか。 以降もところどころで展望が開け、ついに南アルプスや富士山も姿を現した。梅雨明けを感じさせる真夏の太陽、そして樹林帯に入ると、満を持していたかのようなアブの再登場である。 今度はさらにひどい。アブ同士がぶつかるほどの密集度である。左手にタオル、右手に帽子を持ってビュンビュンと振り回しでもしなければやってられない。まるで歩きながら手旗信号でも振っているかのようである。 途中のヘリポートで南アルプスの展望が開けるが、立ち止まるとアブが来るのでゆっくり休んでもいられない。 やがて笹すべりという笹の斜面が続く場所に来る。カラマツ林に入ると不思議とアブは姿を消す。高度を下げると気温が上がり、それに比例してアブが増えると思いがちだが、必ずしもそうとも言えないようだ。 しばらくすると雲海という標識を見る。登路にもあった場所の名前だ。やがて飲用不適の表示がある延命水を過ぎ、さらに下ると八ヶ岳横断道路に出る。おそらく八ヶ岳神社はこのすぐ先にあるのだろう。 横断道路は細いが林道のように整備されている。しかしここから観音平まではけっこうタフな道で、いったん枯れ沢に下って標高差50mほどの登り返しとなる。横断道路までは穏やかな道で足任せに下って来たが、最後になってちょっと苦しい登りが待っていた。 観音平に着く。駐車する車の列は駐車場から溢れ、車道のずっと先まで続いていた。 まだ14時過ぎで日差しが強烈。ラジオをつけると、どうやら今日梅雨明けしたようだ。そういえば6年前に来たときも、青年小屋のテント場で梅雨明けを迎えた。自分にとって八ヶ岳は、暑い夏の到来を実感する山である。 |