まだ薄暗い渋沢駅からバスで出発。快晴を期待していたのだが、空は一面雲に覆われている。表丹沢の稜線は見えている。
今日の鍋割山は登山歴10年にして初登頂だ。塔ノ岳に登ったついでに立ち寄ることも出来そうな位置にあるのだが、なかなか足が向かず遠い山だった。
鍋割山頂上から相模湾を望む
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大倉から車道、簡易舗装の林道を延々とたどって二俣に着く。車が数台停まっている。沢沿いの山道を高度を上げていくと植林下の登りに。やがて尾根に上がったところが後沢乗越だ。
ここからは急登となるが、尾根はやせていて、葉を落とした落葉樹林を透かして周囲の眺めがきくので、気持ちがいい。左側は西丹沢の山や富士山も見えるはずなのだが、相変わらず雲多く眺めは乏しい。
今日は、携帯で富士五湖周辺の富士山ライブカメラが見れるようにしておいた。時々接続してみると、忍野村や三ツ峠からは、青空の下で富士山がくっきりと見えているようだ。何故すぐ隣りの丹沢が鉛色の空なのか、合点がいかない。
後沢乗越にて
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御正体山と南アルプス
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ブナの美しい稜線
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急登をこなし、進む先に鍋割山稜の稜線が見えるようになると傾斜も緩んでくる。
霜柱は下りてはいるが雪は全く無い。いや、その霜柱さえももっとザクザクあってもいいはずだが、かなり少ない。これも記録的な暖冬の影響なのだろうか。
カヤトが見えてくると鍋割山荘、そして鍋割山頂上である。相模湾を真正面に見れる位置にベンチがあるが、カヤトの上に腰を下ろせるようなのでそちらで一休みする。ようやく雲も取れ始め、わずかながら富士山の姿も見えてきた。
蛭ヶ岳や檜洞丸、そして御正体山の後ろはるかに、南アルプスも見える。くっきりした眺めが得られないのが惜しいが、鍋割山はやはり、開放的で展望のいい山だった。登山者もこの時期にしては多く、10名以上が常に頂上で憩っている。
鍋割山から大倉尾根に向かう緩やかな稜線、ここは鍋割山稜と呼ばれているがブナに囲まれた道が続き、今日のコースのハイライトである。初夏の頃は素晴らしいグリーンシャワーの森になるだろう。
左側は場所によっては切れ落ちていて、蛭ヶ岳の眺めが良い。頂上部に白いものが見えるが部分的だ。
南側は相変わらず分厚い雲に阻まれて、日射量が極端に少なく肌寒い。
2つの目立たないピークを超えて、少し行くと二俣への分岐となる。訓練所尾根という名だが、下るのは次にここへ来たときにとっておくことにして今日は大倉尾根を目指す。
道のすぐ脇に鹿が3頭、草を食んでいる。人馴れしていて全く逃げようとしない。
しかし今の時期、鹿たちも食料の確保に苦労していることだろう。3月末の雲取山頂で見た鹿の、痩せこけた弱々しい姿を思い出す。さらにもう少し進むとまた1頭いた。
大倉尾根との合流点である、金冷シに着く。このまま下山のつもりでいたが、塔ノ岳の頂上部が進む先に見えている。もったいないので頂上まで往復することにした。
正午過ぎになり登山者もかなり増えた。頂上手前の木道で行列となる。列の先頭で道を譲ろうとしない高年登山者は「ゆっくり歩けばいいんだよ、急ぐ必要ないよ」と言うが、後ろでつかえて、歩くペースを乱されてしまっている人の気持ちも少しだけ考えて欲しいものだ。
塔ノ岳頂上。いつ来ても最高の展望を提供してくれる。富士山が雲に隠れてしまっても、その他の累々とした山並みが見られればそれだけで十分だ。表尾根、大山、蛭ヶ岳への主脈、奥秩父や南アルプス。
塔ノ岳頂上にも雪はほとんどない。丹沢の1月はこのまま、雪が無い状態で経過してしまうのだろうか。
そしてここにも2頭の鹿を見る。登山者の食事をうらめしそうに眺めているが、分けてあげる人はいない。可哀想だがしょうがないことだ。それどころか、いいように登山者のカメラの被写体にされてしまい、不公平な印象である。
大倉尾根を下る。花立山荘から小草平、堀山の家の前まで一気に下り、少し休む。
南に面するこの尾根道は、いつもの冬なら雪や霜解けでグチャグチャ道となるのだが、今年はそういう場所があまりない(全く無いというわけではない)。
改装中の見晴茶屋を過ぎ杉林を回り込み、観音茶屋の前まで来るとようやく里の雰囲気となる。それにしても小屋や休憩所の多い尾根である。
車道に出ると無人の野菜販売所がいくつかある。白菜、大根、長ネギなど何でも100円。取れたてのキャベツがひと玉50円、これはかなり安い。これも暖冬の影響だろう。買って帰ろうかと思ったが電車なのでやめた。
少し歩いて大倉バス停に戻る。天気はすっかり回復し、表尾根の稜線の上に冬の青空が覗いていた。
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