倉見山は一般の登山地図には登山コースの表記が無いが、富士山の眺めが良い低山として、最近よく歩かれているようだ。同じく富士山の好展望台として人気の杓子山から北に派生する尾根上の1ピークである。
雑木林の登り
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尾根上から倉見山
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富士急行線・東桂駅から登るコースが一般的で、他に三つ峠駅や明見(あすみ)地区からも登山道が伸びている。今日は倉見山登頂後、余裕があれば一気に杓子山までの長い登りに挑戦してみようと思っていた。
東桂駅から駅前車道に出、富士吉田方面へ進む。最初の信号で左折し細い車道に入るが、相変わらず車の通行が多い。今日は平日だからなのだろう。
駅から15分ほどで導標のある登山口。墓地の地面は凍った雪で滑りやすい。山道に入ると雪は無くなった。
小社を過ぎると雑木林の中の急登がしばらく続く。尾根に上がるとようやく一息つき、右手からもう1本の登山道が合わさる。
東側が雑木林、右が植林の歩きよい道となる。時々、東側の展望が開け尾崎山など前道志の山塊が望める。人気の出てきた山と言えども、平日なのでさすがに会う人はいない。
鉄塔の建つ草地からは、木の向こうに三ツ峠山の急峻な東斜面が見える。岩壁に刻まれたしわにわずかに雪が付いていて、穂高のように見えなくもない。
緩やかに高度を上げて小ピークを1つ越え、右手に三つ峠駅への分岐を見送ると、ようやく樹間から倉見山の三角形が見えてくる。
雑木豊かな尾根道は雪をしたため始める。露岩が現れ再び急登となり、登り着いたところが尾根の肩のような場所で、やっと正面に富士山が見え出す。
もう少し進むと松の木がある倉見山頂上だ。狭い場所だが裾野まで見渡せる富士の姿にしばらく見入る。マッチ箱のような建物がひしめく、富士吉田市の町並みも壮観だ。
暖かい日が続いていたが今日は冬型の気圧配置に戻り、風も強いとの予報だった。しかし気温は高く稜線も意外と風は吹いていない。春霞みのような大気で富士山も少しぼやけている。
もう少し進むと見晴台があるとのことで先を行く。3分ほどで少々ヤブっぽい開けた場所に着き、再び腰を下ろす。ここが見晴台と思ったが南峰で、見晴台はさらにもう数分進んだところだった。そこからの富士山の眺めはさらに素晴らしい。
近くには高川山という、これまた富士山の展望台として有名な山がある(まだ未踏)が、写真で見る限りここ倉見山見晴台のほうが眺めはいいと思う。
次のピークである相定ヶ峰(1255m)からは堂屋尾根が下っており、その道も富士山の展望がいいという〈登りにとってもいいかもしれない)。ただし尾根への分岐点は目印となるものはないので、うっかりすると見過ごしやすい。
当初はここを下って、麓の明見湖温泉に入ることも考えていたが、ここまで問題なく登れたので、やはり先に進むことにした。
さらに急な下りをこなすと向原峠で、導標が立っている。ここからも明見への道が通じているが先を行く。かなり高度を下げたので、さっきから前上方に見えていた杓子山はさらに高くなってしまった。
さて、ここまでは歩きやすい道が続いてきたが、ここからにわかに道は険しくなっていく。まずは岩っぽい急登にとりつく。体のギアチェンジをしなければならない。さらに高度をどんどん上げていき、大きな岩を巻いたり木に掴まりながらの登りをこなす。
無心に、ただひたすら登ることに集中する。こういう心境は西上州の二子山以来だろうか。
きつい登りのあと緩やかな尾根道、そして再び急登の繰り返しとなる。足場を選ぶような、高度感のあるヤセ尾根が続く。
杓子山への登り
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岩尾根を通過
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穏やかな雑木の道も、地面の下は水分が凍結していてズルっと滑る。こういう所は一目見てもわからないので、岩場の道でなくとも気を抜けない。
雪もまだらに多くなり凍結箇所も出てくる。歩みが慎重になるが、岩や木の根が露出している場所も多くアイゼンをつけるタイミングをなかなか見つけられない。小広い場所で一度装着したが、すぐに外れてしまった。
かなり体力を使い1292m峰に着く。山名板などはなく、樹林の中の目立たないピークだ。杓子山までまだ標高差が300mあることを悟り呆然とする。しかしここまで来たら引き返すわけにはいかない。向原峠以降にエスケープルートはなかった。気合を入れ直す。
付近に雪は少ないがここで再度アイゼンを装着。杓子山直下の岩場に備える。やはりここからが一番の頑張りどころだ。
足のはるか下が覗けてしまうような岩尾根を通過。雪の凍結した岩尾根の急登。アイゼンの刃はしっかり雪面に噛んでいるが、スリップは絶対に禁物、慎重の上にも慎重にと自分に言い聞かせ続ける。
鎖やロープの無い岩尾根の急登はこの雪の着いた季節は登りオンリー、下りには使いづらいコースだろう。
見上げる杓子山のピークが手に取る位置にまで来た。もう少しだ。来た方向を振り返れば倉見山や1292m峰が眼下にあった。
カラマツ林に入ってようやく難路が終わる。あとは、急だが幅広くなった斜面の道を登るのみ。
人の気配がし、日のさんさんと降り注ぐ杓子山頂上へ。雪は全く無い。
杓子山頂上
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杓子山は2回目だが、それにしても素晴らしい360度の眺め。1時近くなってしまっても富士山はまだ全貌を見せてくれている。
御坂の山々、南アルプスも春霞みの中に細長い線となって横たわる。山中湖や丹沢の山、富士山の右には毛無・雨ヶ岳が意外と大きい。思わずその場にしゃがみ込み、大仕事を終えたご褒美としての展望を楽しむ。
平日でもここ杓子山には夫婦が数組登って来ている。御坂の中ではやはり人気の山だ。
下山は、バス停まで一番近い高座山への縦走路を採る。最初の急降下の斜面は前回(2002年3月)のひどいぬかるみもなく簡単に下れた。が、それ以後もけっこうアップダウンのあるコースであった。さすがに疲労が足に来る。
高座山(1304m)の下りからは、前と違って道が2本に分かれていたが、両方とも鳥居地峠に向かう林道に下りるようで、時間もあまり変わらなさそうだ。
峠から車道を下り忍野へ。目の上に聳え立つ富士山はどこまでも大きく、神々しささえ漂う。近くの忍野八海は言わずと知れた富士山撮影の名所である。
今回は久々に骨のある、充実感に満ち満ちた山登りだった。雪の少ない冬だが、それだけに例年と少し趣の異なった低山歩きが出来ていると思う。
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