この日は夕方に用事があったため、早出した。道志の森キャンプ場には7時前に着く。周囲は鮮やかな新緑の森だ。
丹沢山塊は5月下旬あたりからシロヤシオやトウゴクミツバツツジが開花し、賑わう山になる。この5月上中旬は花というよりも、ブナなどの新緑が見頃の時期である。となると菰釣山のブナを見てみたい。
以前、西丹沢から1泊行程で、畦ヶ丸を経由して登ったときは、何と深い山だろうと思った。
見上げればブナの新緑
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キャンプ場から西沢林道をしばらく歩く。沢を渡ってなおも進み、パイプの水場がある登山口となる。小さな尾根を乗っ越したあと、再び沢に出る。前ブナ沢というところらしい。
昨日はかなりの雨が降ったので、沢はある程度増水しているかと思ったが、そうでもない。前ブナ沢を渡り、その沢沿いに緩く登っていく。
白い小さな花がたくさん咲いている。ミヤマカタバミにしては葉が違うし、ニリンソウでもない、オウレンでもトウゴクサバノオでもない。よく見かける花のようでわからない。あとで調べたがシロカネソウという名前のようだ。
きつい登りのないまま、すぐに稜線らしきものが見えてきた。西丹沢から苦労して縦走したときのイメージがあったので、こんな早く稜線に立てるとは思ってなかった。少々拍子抜けである。
菰釣山は、道志の森キャンプ場から登れば本当に手軽な山に変身してしまう。
東海自然歩道にもなっている、甲相国境稜線に上がる。ここまでも木々の緑がきれいだったが、稜線ではさらにすばらしい萌黄色の森が出迎えてくれた。葉の1枚1枚が陽光にきらめき、後ろが透けて見えてしまいそうな明るい黄緑色をしている。
カエデだけでなくブナなどの高木も新緑となった。緩い坂を200mほどで菰釣避難小屋。自分が泊まったのが2000年。その後改築され、ウッディで小ぎれいな造りになった。
ここの小屋のネックは水場がないことだが、先ほどの前ブナ沢までは下りおよそ15分、登り20分。往復出来ない距離ではないことはわかった。
小屋から先も、新緑シャワーを浴びながらの緩やかな登り。今日ここを歩くのは自分が初めてのようで、蜘蛛の巣がはびこり、それだけがうっとおしい。
葉といっしょに、花をつけている木もたくさん見る。気持ちよい山道の行き着いた先は、富士山が正面に鎮座する菰釣山頂上であった。
富士山だけではない、南アルプスもよく見える。新緑の時期にこれほど天気がいいのも珍しい。もっとも朝早い時間ならではの眺めなのかもしれない。
山頂にはブナの木が多く、花をつけているのもある。ブナの花をこれほどはっきり見れたのは初めてだ。
いつまでものんびり留まっていたい山頂。さらにこの先、西に伸びる稜線も新緑たけなわのようだ。ここで来た道を戻らねばならないのが大変惜しい。
山頂を辞し、来た道を戻る。先ほどの稜線到達点からさらに東に進む。
小さなアップダウンはあるもののブナ沢の頭、中ノ丸と爽快な尾根歩きが続く。振り返れば、枝越しではあるが菰釣山を前景に白い富士山が見える。
城ヶ尾山(1199m)は頂上部が伐採され、少々雑然としている。日はさんさんと降り注いでいるが眺望は今ひとつである。
スライドシアター
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城ヶ尾山から下ってベンチのある城ヶ尾峠へ。尾根歩きもここでおしまいとなり、キャンプ場へ戻る行程のみを残す。この下り道にもシロカネソウをたくさん見る。
ヒノキ林を通り過ぎるとあっという間に林道に下りてしまった。新緑は素晴らしかったが、山深さを感じることのなかった菰釣山周回コースであった。
林道をてくてく歩き、キャンプ場に戻る。たくさんのオートキャンパーが、大小さまざまなテントを張って楽しんでいた。
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