~梯子と岩場が続く沼津の裏山~ おくぬまづアルプス 2009年12月23日(水) 快晴
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天皇誕生日は、のぞむさんの仲間で奥沼津アルプスを歩くことになった。 この山域、というか地域は今まで全く歩いたことがなく、沼津の位置はわかっていたが山がどこにあるのかを知らなかった。そもそも山というよりは、丘陵地帯といったほうがいい。標高はせいぜい300m程度。高尾山の半分くらいだ。 登山口から少し南に行けばもう海である。 しかしその小さな峰がいくつも連なり、それぞれが急激な段差や岩場で結ばれているため、アルプスと呼ばれている。
今回歩いたのはその沼津アルプスの東側末端の尾根で、奥沼津アルプスと言われる部分だ。まだ本家の沼津アルプスを歩いていないのだが、このオクヌマを歩く。 今まで登った山の中で、一番南の山は九州の霧島・高千穂ノ峰である。そのときはいかにも南国の山という印象で、植生も吹く風も関東の山のそれと異にし、地域の違いを感じたが、今回のオクヌマも程度の差こそあれ、歩いて同じような印象を得た。空気が違うのである。 九州を除けば、今回の沼津が最南端である。北の山を志向する気持ちは変わらないが、これをきっかけとして、今後、伊豆の山などにも活動エリアを広げていきたい。
東海道線を乗り継いで三島駅。修善寺行きの伊豆箱根鉄道に初めて乗る。 いつも山に行くときは、西に向かう電車に乗ることが多いので、今日は南に進んでいると思うと、それだけで何となく暖かくなるイメージがある。気のせいかもしれないが。 原木(ばらき)駅でメンバーが集合する。コンビニも商店街もない、静かな住宅街。 西に向かって歩くと、すぐ川に突き当たる。あたりが開けて、右手に秀麗な富士山を望む。北西からの風が山頂を越え、南東、つまり東側に多くの雪を落としている。この角度から見る富士山は新鮮である。 橋を渡って地元の方と合流する。奥沼津アルプスの最初の山は標高191mの日守山だ。川を渡ったすぐの尾根末端から登ってもたいした距離はなさそうだが、今回は一般コースの北側の登山口から登る。 サザンカの咲く、階段状態のジグザグを登っていくと、30分ほどで日守山である。山頂は園地化されていて、展望台や滑り台まである。 眺めは広い。三島地区の広い平野を縫うように、狩野川が蛇行して流れている。その先に愛鷹連峰に下部を隠された富士山。冬日に照らされた雪の頂は明るい。 こういう場所が家の近所にあったら、休日に時間がなくて遠くの山に行けなくても、きっと楽しい1日が過ごせるだろうと思う。里山、裏山のある地域がうらやましい。 「おらが町」の裏山で今まで登って楽しかったのが、八王子の高尾山、埼玉県寄居の鐘撞堂山、遠くは新潟県六日町の坂戸山あたりである。自分の家(西五反田)の近くの「林試の森公園」もなかなかよい森の中の散歩を楽しめるのだが、やっぱり眺望があってほしいし、それにそよと吹く風が、森の中ならあってほしい。 日守山から西に伸びる尾根を進む。歩道を仕切る柵に一箇所切れ目があって、そこが奥沼津アルプスの入口となる。 一般道ではないが踏み跡は明瞭。やがて下りの続く道となる。標高191mの日守山から100m近く下ってしまう。 最低鞍部からは少しずつ、高度を取り戻していく。左手が切れ落ちたガレ場があり、ロープを頼りに進む。低い山でも通過困難な箇所の通過の仕方は高い山と変わりない。
周囲にはアオキという常緑樹の木が多いので、眺めが全方位開ける場所は少ない。やがて細尾根の1ピークらしい場所に着く。ピンク色の木芽はマユミらしい。判読不能の指導標が木にかかっている。 ここが地形図上の219mピークかと思われたが、まだ先に高いところがある。さらにアップダウンを繰り返し、当面の最高点である219mピークに着く。樹林の中で眺めはなく、単なる通過点にしかすぎない場所だ。 やがて、新城地区からの道が右から上がってきた。指導標も立ち、この稜線で初めて、自分のいる位置がはっきりと確認できた。 奥沼津アルプスの核心部といえば、この新城分岐から大平山の間にある岩場となるだろう。ほぼ垂直の岩場を梯子で下り、落ち葉で埋め尽くされた危なっかしい斜面をトラバースする。 本場の日本アルプスのような、高度感満点の場所こそないが、岩場の切れ落ち方だけみればそう変わらない。中高年登山者は、ともすれば冬はなまけがちになるものだが、こういう場所を歩いて山を歩くときの緊張感を体で忘れないようにしておくのもいいだろう。 また、このあたりはいろいろな通過ルートがあり、梯子を降りずにそのまま前方の大岩をへつって下るコースもあったようだ。 難所が過ぎると、展望地に出る。目の前に大平山が高い。300m程度の山をこんなに高いと感じるのも珍しい。 富士山の眺めのいいこの場所でお昼休憩とする。原木駅から大した距離ではないのに、歩き始めからもう3時間以上経っている。でも明るく陽気な人たちと和気あいあいで歩いているので、楽しくて時間の経つのを感じない。その上随所にある岩場や梯子がいいアクセントになっていて、疲れもほとんどない。 大平山方面から数人、歩いてきた。いよいよその大平山への急登となる。ここから先、今までのような岩場は出てこない。 急斜面が続き、足元にもスズタケのようなものが出てきた。ここに来てようやく、いつも見かける山道の風景、といった印象になる。 「これより奥アルプス」という標識を見ると、ほどなく大平山(356m)である。 樹林の中で眺めは乏しいが、一部切り開かれている。そちらのほうに足を向けると、キラキラ光るものが見えた。川?と思ったら海だった。 大平山から先、ここからが「奥」の取れた沼津アルプスとなるが、この尾根は相模湾の海岸線とほぼ平行に走っている。尾根と海との距離は、1kmから2kmもない。 こんな海に近い山を歩くのは、新潟の米山以来である。米山も、青森の白神岳にしても、面している海は日本海だったので、冬でもないのに、寒々とした寂しい雰囲気がどこか漂っていた。 太平洋を見渡す山はやはり違う。太陽と青空が似合う、明るく暖かい山である。 大平山から下山する。すぐ先の展望場所でここから続く沼津アルプスの稜線、そして富士山に別れを告げる。 多比口峠で尾根を外れ多比登山口に下る。最後の林は紅葉がまだかなり残っていた。この紅葉はもしかしたら、越年するかももしれない。 大平山から多比登山口まで30分もかからない下山コースだった。登山口には早くもスイセンの花が咲いていた。山里、というより海辺の町といったほうがいい住宅街を歩いて、多比バス停に着く。 この後、路線バスで移動し、沼津港に造られた展望水門「びゅうお」に立ち寄る。太平洋の大海原と、反対側には富士山。そして沼津アルプスのデコボコの稜線もよく見えた。 近くのイワシ料理屋で舌鼓をうち、会はお開きとなった。 [参加の方のサイト] のぞむさん sanpoさん damachoさん かずさん |