-富士を仰ぐ2つの展望台-
タイトル
石合林道登山口-樽峠-平治ノ段-貫ヶ岳
山域安倍奥・富士川流域
地域山梨県
標高貫ヶ岳(897m)、平治ノ段(937m)
山行日2010年11月28日(日) 天気1
沿面距離9.5km
歩行時間3時間55分
標高差487m(石合林道登山口~平治ノ段)
宿泊-
温泉なんぶの湯
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2010年11月28日(日)

東京IC4:40
 東名高速道路
西富士道路
小泉IC6:20
 県道10号、国道52号、県道801号他
7:15石合林道終点7:30
8:05樽峠
8:45平治ノ段
8:50十国展望台
9:05晴海展望台
9:25焼山分岐
9:42貫ヶ岳9:55
10:10焼山分岐
10:25晴海展望台10:40
10:55十国展望台11:15
11:20平治ノ段11:45
12:15樽峠
12:40石合林道終点12:50
 県道801号、国道52号、県道10号
なんぶの湯立寄り
15:50富士川SA
 東名高速道路
19:10東京IC


関連リンク
山梨県南部町
なんぶの湯


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山梨県西部の早川町や南部町には、まだ登っていない山がいくつもある。昨年は富士見山と篠井山に登ったが、今回もその続編で付近の山に登る。

これらの山はたいてい、山頂かその近くで富士山を西側から眺めることが出来る。西側から見る日本一の山は、奥多摩・丹沢など南関東の山から眺めるそれとは趣を異にし、なかなか味わいがあるのだが、写真などで見る機会は少ない。旅行のパンフレットでは、箱根や富士五湖周辺から撮影された、女性的な優しいイメージの富士山が多くを占める。
南部町の山に登って眺める霊峰富士はいかめしく厳かで、富士山ってこんな形だったのかと、新たな発見をすることもある。


富士山を背に「最後の一葉」。十国展望台にて

早朝に自宅を出発する。東名高速と西富士道路を走り、富士宮経由で南部町に入る。
ようやく空も白んできた。

国道沿いに設置された温度計は4度を表示している。空は快晴だが、山間の田園地帯には幾層もの低い雲が垂れ込め、明るくなったり暗くなったりを繰り返している。

昨年の篠井山と同様に徳間地区の県道を走る。標高が低いせいか、きれいな紅葉がまだたくさん残っている。

石合林道に入るところで篠井山への道と分かれる。登山口までのこの林道は一車線で、片側が崖になっており運転は少し緊張する。ガードレールはなく、細いプラスチックのポールが立っているのみだ。

石合登山口
笹の道が続く
500段はある
紅葉は残っている

林道終点から少し入ったところに石合林道登山口があった。なお林道はこの先も、延伸中の工事が行われていた。
登山口にはすでにワゴンが1台停まっていた。ここはせいぜい7,8台置けるくらいか。
今日は、樽峠から貫ヶ岳を往復してくる予定だが、時間があれば高ドッキョウも往復したい。ただし日が短いので、場合によってはちょっと厳しいかもしれない。

日の長い時期にここに来れない理由がある。ヤマヒルの生息地なのだ。篠井山や十枚山とともに、この樽峠付近もすごいらしい。富士川の西にある山は要注意とのことだ。またここはマムシもよく目撃されるそうである。
11月後半になれば心配はないと思っていたので、先着の車が1台だけだったのがちょっと不思議だ。貫ヶ岳も高ドッキョウも山梨百名山であり、ここに車を置いてどちらかに登る登山者で、もっと賑わっていると思った。


とにかく支度をして出発する。念のためスパッツを着けていく。
小さな沢を木の橋で渡ってからは、薄暗い植林の中の緩い登りが続く。樽峠までは直線距離で1km足らずなのだが、大きくジグザグを切って行くためにそれなりに時間はかかった。登山道はよく踏まれている。

林道をまたいでひと登りすると、樽峠である。昔の写真では明るく開けた地なのだが、今は植林が育ち暗い。正面に、静岡県側に下る道が続いている。右は高ドッキョウへの尾根道。指導標には2時間30分と書かれているが、そんなにかかるのだろうか。

貫ヶ岳へは左の尾根を進む。なだらかな尾根は相変わらず植林が幅をきかせている。
人間の背丈まで伸びた篠竹が、場所によっては進路をふさいでいて、踏み跡をわかりづらくしている。
正面に見える高い山はこれから登る平治ノ段だろう。貫ヶ岳はこのピークを越えていくことになる。やがて「貫ヶ岳登山道入口」の標識の立つ場所に着く。ここから木の階段の急登が始ま傾斜が急なので、振り返り見ると樹林の向こうに篠井山と思われる山体が望めた。

木段の長い長い登りがついえると平治ノ段の稜線部となる。ようやくカエデなどの落葉樹も登場する。紅葉はまだかなり残っていて、植林の多い中で、赤や黄色の葉がひときわ浮き立って見える。
少し先で中沢峠への道を分けたあたりが最高点だろう。平治ノ段は南貫ヶ岳とも呼ばれ、貫ヶ岳よりも標高は高い。
平治ノ段からものの数分で今日最初の展望地、「十国展望台」に着く。富士山方向が大きく切り開かれて素晴らしい眺めである。しかしまだ、朝方の曇りがちの空模様を引きずっているようで、あたりはもやがかかったようになっている。
ここへはまた戻ってくるので、その頃はもう少しクリアな眺めになっているだろう。先を行く。

標柱は倒れていた
富士山は見えづらい
晴海展望台
平治ノ段の展望盤

いったん下って、落葉樹が多くなった稜線を進み、少し登り返すと晴海展望台である。
先客がいた。登山口に停まっていた車の主のようだ。先ほどの場所と見える方向は変わらないが、さらに幅広い眺めが得られた。先に貫ヶ岳へ登ってしまい、あとでこの展望をじっくり楽しむことにする。

いくつかのコブを上り下りして行く。樹林の間から貫ヶ岳と思われるなだらかなピーク、そして時折り富士山も顔を見せる。稜線上は笹の深い場所があるが歩きにくいところはない。
中沢公民館からの登路と合流し、さらにまだ奥地に進む。山頂は思いのほか遠く、着きそうで着かない。カエデの紅黄葉がモノトーンの稜線に明るい光を施す。
ちょっとした急登を踏ん張るとようやく貫ヶ岳山頂に到達する。山頂といっても、笹の中の小さな切り開きに簡単な山名標識があるのみだ。
おなじみの山梨百名山の標柱は倒れていた。根元から腐ってボロボロになっている。富士山も樹林の間からわずかに覗くのみ。無理に山頂をこしらえたような雰囲気だ。

あまり長居する場所ではないので、さっきの展望台に戻り休憩することにする。
引き返す途中、公民館コースから登ってきたグループと出会う。山頂は省略して展望台に行くようだ。この山はそういう人が多いのだろう。
晴海展望台に着く。先ほどまでのもやがすっかり消えて、くっきりすっきりの富士山がそこにあった。青空高く筋雲がたなびき、富士山の雪冠は冬日を浴びて光り輝いている。
晴海展望台はグループに人たちに譲ることにして、十国展望台までいって腰を下ろした。駿河湾も見えている。空気がもっと澄んでいれば伊豆諸島も見えるかもしれない。

貫ヶ岳は、この2つの展望台がなければ、ハイキングの対象としてはかなり地味なものになってしまいそうだ。ただその展望台も、富士山の方角しか開けておらず、南アルプスはほとんど見えない。富士見山、篠井山もそうだったが、身延町や南部町の山は、近いはずの南アルプスがかえって見づらかったりする。

平治ノ段まで戻り、中沢峠への道に少し入ってみた。植林帯を背にして富士山方面が開け、展望盤のあるところから富士山が見えた。そしてそこからさらに数メートル進んだところも、いい展望台になっていた。

行きに晴海展望台にいた人と再び会い、少し話をする。山梨百名山を踏破したベテランの方だった。
さっき展望台で会ってからずいぶん経つのに、貫ヶ岳山頂へも行かずにほとんど場所を移動していない。山に登っても、あくせくせっせと歩くことはせず、気の向くままに山中を行ったり来たり、ゆとりのある山歩きをする人であった。

山梨百名山のことをいろいろ聞く。特に鶏冠山・笊ヶ岳・笹山・鋸岳といった難関の山について、いろいろ聞いた。自分もこの貫ヶ岳が78座目になる。日本百名山を全部登る気は起きないのだが、山梨百名山と関東百山は出来れば完登してみたい。

樽峠まで下る。展望台で休憩したり、人と話し込んだりしたので、予定の時間をかなりオーバーしてしまった。高速の渋滞もなるだけ避けたいので、79座目となるはずだった高ドッキョウはまたこの次にしよう。春夏は来づらい山なので、再訪は同じ季節になりそうだ。

石合登山口に車は増えていなかった。なんぶの湯で汗を流してから、富士川スマートICで東名高速に乗る。
高ドッキョウをパスしたかいもなく、最大50kmという激しい渋滞に巻き込まれてしまった。