平成・ 山と自然の重大ニュース  投票結果と皆さんからのコメント

投票結果
投票ありがとうございました。

順位項目スコアグラフ
1【事故、遭難】御嶽山噴火(2014)74
2【事故、遭難】トムラウシ遭難(2009)35
3【登山界のトレンド】平成登山ブーム34
4【社会動向】カメラのデジタル化17
5【個人】田部井淳子さん死去(2016)15
6【事故、遭難】那須の雪山で雪崩事故(2017)14
7【自然、気象、環境】山に鹿や猿が増える13
8【社会動向】山の日制定(2015)13
9【社会動向】山村の過疎化が進む13
10【登山界のトレンド】埼玉県が遭難救助のためのヘリコプター費用を有料に(2017)12


上位ニュースの解説


2014年9月27日に噴火。紅葉の見ごろと重なったため多くの登山者が山頂付近に滞在しており、58名が犠牲となる大惨事となった。
自分はこの日、山形県の月山に登っており、下山後この出来事を知った。同時に、家族や知り合いから「登ってないよね?」とのメールをもらった。
平成年間は雲仙普賢岳を始めとして各地で噴火が相次いだが、この御嶽山の噴火は大勢の登山者が巻き込まれたという点で、同じ登山を趣味とする人の心にとりわけ深く刻まれた。もし自分があの場所にいたら・・・。
他に草津白根山、有珠山、霧島新燃岳、阿蘇山が平成年間に噴火したほか、箱根山、蔵王山、浅間山など各地の山で噴煙や火山性微動を観測している。日本の火山が活動期に入ったとの見方もある。

火山噴火以外にも、平成年間で様々な山岳事故が発生した。噴火は自然のなす業、一方これら山岳事故は人間の知識や行動が起因となっている。
人が山を畏れることを忘れたところに事故が発生する、と自分では思っている。己の限界を知り、山や自然に対して謙虚であること。それをつい逸脱してしまうところにスキが生まれるように思う。


きっかけは2005年前後、ある女性雑誌に山の特集が載ったことだったと記憶している。まず若い女性が山に登り始め、それに男がついてきた感がある。
今の平成登山ブームは、かねての日本百名山ブームを源流とし、それに伴う登山道の整備維持、山小屋の充実、山岳ガイドが一般化するなど登山のインフラが整っていったことがベースにあると思われる。2000年前後、休日でも山で見かける人の大半は中高年だった。今は若い人の交流の場、そしてちびっ子ハイカーが主役の家族団らんの場として、山は今までになく活気づいている。



このサイトらしい得票数となった。デジタルカメラの一般市場への登場は1988年(昭和63年)というから、平成はデジタルカメラの進化を象徴する時代となった。
一眼レフへのデジタル化の適用も大きかったが、やはり携帯やスマートフォンのカメラ機能が需要に応じて遂げてきた進化のスピードには目を見張るものがあった。HDR機能(露出レベルの異なる複数枚の写真を1枚に合成する)など、従来のカメラでは考えられないようなことまで実現している。
一方デジタルカメラ一般で言えば、CMOSとかCCDといった画像取り込みセンサーも次々と新しい技術が開発されている。画素数は4000万を超えるものまで出てきた。登山の情報伝達のツールとしてSNSは強力なものとなったが、映像のデジタル化もまた山の状況を伝える手段として大きな役割を果たすようになっている。
ちなみに自分が1999年代後半、初めて手にしたデジカメは640×480(32万画素)、1枚のメディアの撮影可能枚数は30枚ほどだった。


女性初のエベレストおよび七大陸最高峰への登頂と輝かしい記録を持つ女性登山家。
田部井さんは福島県三春町の出身。東日本大震災の復興支援のため、自ら病魔と闘っているのに東北の子供たちと富士山登山をし、元気づける姿がTV放映され、共感を呼んだ。日本の山にも終生愛着を持ち、晩年は自宅のある埼玉県の日和田山に通うなど、一般の登山者にとっても親しみの持てる、なじみ深い人となっていた。
エベレストに立った人なのに、自分たちと近しい印象を受ける。平成年間、メディアを通じて活動を広げた登山家が多くいた中で、一般登山者の間で田部井さんの人気がなお高いのは、自分たちの目線に近い位置で山を見つめる姿があったからではないかと思える。


平成時代になって、山を取り巻く環境で一番変わったのが高山植物の衰退、そして大型動物の増加だ。鹿や猿は本来高山には住まない。温暖化により雪が減り、暖かくなって雪が苦手な鹿が山を登ってきた。
暖かくなれば動物が増える。これは自然のことで、これにストップをかけることは現実的ではない。世界が協調してCO2の増加を現状レベルで抑えたら、果たして元に戻るのだろうか。
また温暖化は今に始まったことではなく、地球誕生太古の昔から繰り返されてきた気候変動の一端に、自分たちはたまたま遭遇しているだけかもしれない。
しかし人為的な要因がないとは、決して言えない。以前読んだ本に、南アルプスの高山に鹿がどうやって麓から登ってくるのか、その経路をトレースしたという研究が載っていた。それによると、なんと多くの鹿が南アルプススーパー林道を上り下りしていたというのだ。治山目的や、登山者の足としての求めに応じて作られた林道が、実は動物も便利な食糧調達ルートとして利用していたのである。


これも登山が昨今、広く市民権を得てきたことが背景にありそうだ。1995年に海の日が制定されたとき、「次は山の日だ!」と期待した人は果たしていただろうか?自分は思いもしなかった。
山は自分にとっては身近なものになったが、当時は世間一般的には山はまだ遠い存在で、社会は山の日にいったい何をしようとするのか、どんな価値を見出そうとしているのか、皆目見当がつかなかった。今でもまだよくわからない。
8月が選ばれたのはお盆ということ、子どもが夏休みと言うことが理由にありそうで、休日の増設はひとえに景気対策の一環である。個人的には、同じ祭日のない月なら、6月にしてほしかった。天候の安定しない時期ではあるが、山が一番瑞々しく生命力を放つのは6月である。


自分も最近は車で山に行くことが多くなり、過疎に伴う路線バスの減便に何か文句を言える立場ではない。
しかし山に登って最近特に感じるようになったのは、山村の跡継ぎ不足は深刻だということだ。飯豊連峰に登山したとき、前泊地の旅館で、以前泊まった温泉宿が廃業となり経営していた家族が離散したことを聞いたときはショックだった。限界集落という言葉も最近はよく聞かれる。いずれ消滅するのではないかと考えられている町や村が、日本の山沿いにはたくさんある。
春、花がいっぱいで桃源郷のような山里を歩いているとつい、これらの土地がそういう事情と向き合っていることを忘れてしまう。都会の暮らしが便利になればなるほど、山村は貧しくなっていくように見える。


山と社会との微妙な関係について考えさせられる一件である。登山の自己責任という、永遠に答えの出ないような問題に転化しがちだが、埼玉県としては「有料化を意識して安全登山を心がけてほしい」と啓蒙することが第一目的のようだ。単に費用の問題ではないのである。
「遭難救助費用を有料化し、当事者に負担させることに賛成か?」と一般にアンケートを取れば、賛成と答える人が大半となるようだ。それならなぜ有料化が全国的な動きになっていないのだろうか。それは遭難事故の発生しやすい険しい山は県境に存在することが多く、有料化に当たっては隣りの県の動きを気にしなければならないという事情があるものと思われる。県で決められない問題こそ国が指針を示してもらいたいものだ。
ちなみに埼玉県が有料化を始めた2018年1月以降、12月までに有料で救助されたのは計6人で、徴収した救助費は計35万円だった。最高額は滑落事故に遭った60代男性を助けた際の8万円とのことである。

 

皆さんからのコメント

No投票日時一位投票コメント
1 2019/3/31
17:19:51
平成登山ブーム 昭和の終わりから平成の初めにかけて数年間だけ山歩きをしていました。平成の終わりごろ、仕事も引退する年になり、また、山歩きを開始しましたが、この30年間くらいで、山の人気は大きく増えましたね。高尾山などを歩く高齢者の方でも、靴やザックなどの用具もブランド物が多く、そのまま大キレットでも行けそうです。バブル崩壊や低成長とか言っても、平成の間に、やはり、日本はすっかり豊かになりましたね。
2 2019/2/23
17:15:32
平成登山ブーム 平成の30年間は、新潟福島豪雨と中越地震に加え、阪神淡路・東日本・熊本・北海道の大震災や広島などの大水害も発生しましたので、「大震災・大水害などの自然災害が頻発」が最も印象に残っています。
3 2019/2/6
12:08:42
山村の過疎化が進む 平成ももう終わりですね。
4 2019/2/5
13:00:03
平成登山ブーム 登山靴のソールに使用されているウレタン樹脂の経年加水分解による登山中の剥離が問題に。
5 2019/2/5
1:10:22
全国でナラ枯れ被害発生 ナラ枯れは要因が複雑に絡み合っているようで、根本的には温暖化や酸性雨による木の本来持っている抵抗力が落ちているために深刻化しているようです。高山植物の減少のほかに、雷鳥の減少も言われていますね。全体的に美しい日本の山の自然の行く末を案じる記事を選んでいます。御嶽山の噴火は火山との付合いを考えさせられました。両神山の登山道の閉鎖の件は、個人的にインパクトがありました。
6 2019/1/31
12:21:06
御嶽山が噴火 草津白根の噴火も唖然としました



平成・ 山と自然の重大ニュース一覧 (もう投票できません)
【登山界のトレンド】山登りよりも山歩き。ピークハント目的から山麓、山中をゆっくり楽しむスタイルへ(1990〜)
【登山界のトレンド】中高年登山ブーム、日本百名山が依然として根強い人気(1990〜)
【登山界のトレンド】山小屋管理者の代替わり進む(2000〜)
【登山界のトレンド】山の食の変化。フリーズドライ食品が普及し装備の軽量化に一役(2000〜)
【登山界のトレンド】「平成登山ブーム」。登山が社会現象化。女性、若年化、家族連れで賑わう。山ガールが流行語に(2000〜)
【登山界のトレンド】用具の軽量化 ゴアテックスなど新素材の普及(2000〜)
【登山界のトレンド】山小屋のトイレ事情に変化、バイオ技術導入(2000〜)
【登山界のトレンド】山小屋荷揚げのヘリ導入一般化。食事充実し生ビール、スイーツまでも(2000〜)
【登山界のトレンド】山をきれいに。ゴミ持ち帰り、登山道のゴミ拾い、清掃登山が広まる(2000〜)
【登山界のトレンド】漫画界にも登山の波 「岳」連載(2003)
【登山界のトレンド】ダイヤモンド富士が流行 (2005〜)
【登山界のトレンド】トレイルラン、山岳レースが日本でも普及。各地で大会も(2005〜)
【登山界のトレンド】登山界にIT化の波。インターネットで情報を得る時代に。SNSで共有(2010〜)
【登山界のトレンド】登山ツールのハイテク化。携帯電話、GPSなど(2010〜)
【登山界のトレンド】インバウンド消費が山岳界にも 外国人登山者の急増(2010〜)
【登山界のトレンド】長野県などの一部山域で登山届を義務化(2016)
【登山界のトレンド】埼玉県が遭難救助のためのヘリコプター費用を有料に(2017)
【社会動向】奥多摩に都民の森開設。本格的な山岳自然公園が東京に(1990)
【社会動向】白神山地が世界自然遺産に(1993)
【社会動向】屋久島が世界自然遺産に(1993)
【社会動向】「山は誰のものか」奥秩父・両神山で地権者と行政が対立。一部の登山道が廃道化(2000)
【社会動向】山村の過疎化が進む。登山に使える地元の路線バスが少なくなる(2000〜)
【社会動向】山岳への企業の参入が進む。環境、登山道整備に民間資本が使われ始める(2000〜)
【社会動向】旅行会社による登山ツアーが人気化。山奥の登山口まで入ってくれる長距離バスも(2000〜)
【社会動向】カメラのデジタル化。誰でもきれいな山の写真が手軽に撮れるようになる(2000〜)
【社会動向】中禅寺ロープウェイ、三峰ロープウェイなど古くからあった設備が老朽化で廃止に(2003)
【社会動向】湿原保護、山岳地では尾瀬、奥日光、立山弥陀ヶ原などがラムサール条約に登録(2005)
【社会動向】三つ星指定の高尾山、日本でも有数の観光スポットに(2007)
【社会動向】温泉ブーム。温泉法の改正や掘削技術の進化により各地の山麓に日帰り温泉が増える(2007)
【社会動向】南アルプスが日本ジオパークに(2008)
【社会動向】富士山ブーム、世界文化遺産指定(2013)
【社会動向】山の標高改定、南アルプス間ノ岳が3190mで日本3位に(2014)
【社会動向】山の日制定(2015)
【社会動向】クライミングが五輪正式種目へ(2018)
【交通】長野新幹線、北陸新幹線開業で都心から日帰りまたは一泊で行ける山が拡大(1998)
【交通】夜行列車の廃止、または季節運行への移行が進む。急行アルプス、急行能登など(2000〜)
【個人】野口健氏、エベレストや富士山で清掃登山(2001)
【個人】皇太子殿下が各地で登山。大菩薩嶺、雲取山へも(2007)
【個人】三浦雄一郎氏、80歳でエベレスト登頂(2013)
【個人】田部井淳子さん死去(2016)
【事故、遭難】秋の立山でハイキング客が遭難、低体温症などで8人の中高年登山者が死亡(1989)
【事故、遭難】雲仙普賢岳が噴火、火砕流事故。平成新山が誕生(1991)
【事故、遭難】岩手・宮城内陸地震で栗駒山山麓が打撃も復旧へ(2008)
【事故、遭難】トムラウシ遭難事故、登山ツアー会社の責任を巡り議論に(2009)
【事故、遭難】東日本大震災の影響が登山界にも。登山道整備予算の縮小やガソリン高騰、節電(2011)
【事故、遭難】御嶽山が噴火。日本の火山が活動期に(2014)
【事故、遭難】那須の雪山で雪崩事故、高校生など8名犠牲(2017)
【自然、気象、環境】里山ブーム、生物多様性が議論に(1990〜)
【自然、気象、環境】登山道周辺の裸地化進む。一方で修復、植生回復の試みも(1990〜)
【自然、気象、環境】記録的冷夏。梅雨明けがなく日本は米不足に(1993)
【自然、気象、環境】スギ花粉症に対して国や行政が研究、対策に動き始める(2000〜)
【自然、気象、環境】温暖化進む。高山植物の減少や台風など気象の変化(2000〜)
【自然、気象、環境】生産、水源確保の現場から癒しを求める地へ__日本の森(2000〜)
【自然、気象、環境】鹿や猿が増える。高山植物減少の一因とも(2000〜)
【自然、気象、環境】植生保護のために湿原などで木道敷設進む(2000〜)
【自然、気象、環境】全国でナラ枯れ被害発生(2000〜)
【自然、気象、環境】長野県の脱ダム宣言、行政が森林の治水機能を見直す先駆けに(2001)
【自然、気象、環境】平成16年新潟・福島豪雨(2004)
【自然、気象、環境】新潟県中越地震。長岡・魚沼地方に深刻な被害(2004)
【自然、気象、環境】笹枯れ現象広がる。数十年に一度(2010〜)
【自然、気象、環境】エルニーニョ現象で記録的猛暑(2010〜)
【自然、気象、環境】平成26年豪雪。南関東甲信越の山が登山困難に(2014)

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