~晩秋の彩りの中を行く~ やざわりんどうからかやまる(1010m)・つりおね 2006年11月25日(土)快晴 6:26武蔵五日市駅-[バス]-7:00南郷-7:20熊倉沢出合-8:30矢沢林道終点8:40-9:20尾根の肩-9:35支尾根-9:45茅丸-10:00生藤山-10:05三国山10:20-10:40連行峰-11:35醍醐丸-12:25吊尾根途中の小ピーク12:40-13:07市道山13:15-14:05小坂志川-14:20笹平14:54-[バス]-15:20武蔵五日市駅 歩行時間:6時間35分 |
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南郷でバスを下り、矢沢林道に向かう。集落脇には赤々としたモミジの隣りで冬桜が咲いている。 15分ほど歩くと、沢が分かれ(熊倉沢出合)、林道も分岐する。熊倉沢に沿った林道を少し進み、対岸にあるはずの取り付き口を捜すが見つからない。もう少し先にあるのか。 今日登る予定の長尾(なごう)尾根は「奥多摩の尾根と沢」に掲載のコースで、生藤山から尾根続きの軍刀利山に通じている。取り付きがわからないまま結局、出合の場所に戻る。 この分岐は長尾尾根の末端でもあり、よく見ると踏み跡らしきものもついている。沢を渡って取り付こうかとも思ったが水量が多く、えいっと跳ね飛んで対岸に渡る勇気がない。夏なら靴を脱いで渡ることもいいが、今日は気温おそらく一桁台、この秋一番の寒さである。 無理はしないことにした。矢沢林道をそのまま進み、林道終点から生藤山に登るコースに予定を変更する。
沢沿いの林道は4キロほどあり、ほとんどがダートまたは簡易舗装である。春先なら山野草の楽しめそうな道だが、今日はただ寒々とした雰囲気。周辺の紅葉もいまひとつパッとしない。 左側は見上げるような崖で、柏木野から万六尾根を上がるときにまず最初に乗る支尾根だ。1箇所がけ崩れがあり、土砂の上に通路が付けられている。 猟師の2人の男性がやって来た。生藤山に登ると言ったら、こんな林道を長々と歩くコースでなくても、他にもコースがいろいろあるのにと言われた。 緩い傾斜の上りが続く。小さな小屋のある先でようやく林道終点に行き着き、ここから先は山道となる。 出だしが少々わかりづらい。沢沿いの道を行くとのことなので、正面のヤブっぽい平坦地に踏み跡を求める。数十メートルほど行くと道が現れた。 苔むした石の階段が続き、古い看板もある。昔のハイキングコースの雰囲気だ。時折り木橋を渡るが、濡れていて恐い。用心のため四つんばいで渡る。 沢が枯れ状になると道は沢筋を離れ、右手の山の斜面を上がっていく。 北側から大きく巻くようにして高度を上げ、やがて尾根の肩に着く。造林小屋らしきものが立ち、傍らに「御成婚記念事業 南郷都行造林地」との看板が立っている。 ここは地形図上の768mピークにも思えるが、もう少し尾根を上がったあたりのようだ。 ここからは植林下を一直線に進む。右に見える支尾根と合流すると周囲は自然林となり、さらに踏み跡ははっきりする。正面に見えるピークはおそらく茅丸、右折する方向は生藤山への道であろう。とりあえず直進し茅丸頂上に上がる。 茅丸(1019m)はいつも巻いてばかりで、頂上に立ったのは5年ぶり。前回は富士山がよく見えた記憶があるが、木が邪魔して見えない。5年でこうも変わってしまうものか。 続いて立った生藤山(990m)も、樹木が成長し富士山ほかの展望がやや見えにくくなって来ている。このままいくと、富士山展望が自慢のこの稜線の魅力が薄れてしまうが、それはそれでしょうがないとも思う。 樹木の伸びるのが早いのも、温暖化の影響か。
稜線をたどって三国(さんごく)山(960m)へ。今日初めて、数人の登山者と出会う。ここはさすがに好展望の地だ。丹沢や富士山、南アルプスも遠くに見える。富士山は11月末としては、多くの雪をしたためている。 今日はここで来た方向に引き返す。生藤山、茅丸は巻き、紅葉の残る尾根を歩く。大気はすっかり初冬のそれである。陽射しにキラキラ輝く木々の枝を透かして、丹沢や前道志のシルエットを眺める。 ベンチの3つある連行峰(1010m)に着く。甲武相国境稜線の最後の1000m峰だ。大岳山が眺められるがここも少し樹林が伸びている。いずれ見えなくなってしまうのか。 次第に高度を落としていく。紅葉が再び見られるようになってくる。色つきはまあまあだが、ちょうど一番いい時に当たったようだ。 醍醐丸まではいくつかの小さなコブを越えていく。モミジやコナラなどが赤や黄色に色づいていて、明るさを感じる。 和田峠への下り道を2本見た後は、短い急登を経て醍醐丸山頂(839m)となる。南側は薄暗い植林帯だが北面は開けて大岳山や御前山などが見える。 休憩は尾根の雑木林の中でしたいので、腰を下ろさずにすぐ北側の尾根を下る。
ここから市道山までのゆるい稜線は吊尾根と呼ばれる。杉林もあるのだが自然林のきれいな場所だ。コナラなどの高木が多く、頭上は柔らかな黄葉で明るい。モミジの赤もそこかしこで見られる。 右側に醍醐へ下る道を指導標は示しているが、踏み跡はほとんど認められない。 道は十字路となる。ただし左右に分かれる道は一般登山道でない。左に少しだけ進み、自然林の下で休憩する。静かで時が止まったようだ。 再び歩き出す。逸歩地の分岐にはすぐ着く。痩せた尾根の急登を頑張る。左側は自然林で黄葉がきれいだ。 やがて市道山頂上(795m)となる。立派な山頂標柱の割には地味な頂上で、展望もない。静かで落ち着ける場所である。
下山は、嫁取坂を7年ぶりに歩くことにする。なだらかな植林帯から、右側が杉・桧の植林、左が雑木の尾根に入る。 大正から昭和の初期、檜原に住む多くの人がこの道を登り、山向こうの恩方村に出稼ぎに通ったという。恩方村や八王子市は当時機織りが盛んで、各方面から季節労働者を多く雇っていたそうである。 男女がこの坂を歩くうちに何組ものカップルが誕生し、嫁取坂と呼ばれるようになった。また市道山はその市(いち)に行く道がある山、ということでそのまま名前がついたものだろう。 そうした生活のために使われた山道は総じて、なだらかにつけられているものなのだが、嫁取坂の下部は急坂である。前回登りに使ったときは出だしの急登がこたえ、嫁取坂は難路の印象が残っていた。 下りに取れば急な部分はほんの最後だけ。紅葉のきれいな雑木林がけっこうあって、そこそこ楽しめる山道だった。 小坂志川を木橋で渡って、笹平に入る。山間の集落はこの季節、日が落ちるのが早い。2時過ぎなのに周囲の半分以上はすでに日陰だ。 晩秋のハイキングは、山や尾根上よりも標高の低い登下山地のほうが寒い。こんなところにも季節の移り変わりを感じる。 |