ここのところ休日になると寒いが、21日の春分の日はようやく暖かくなってくれた。
奥多摩の1500mクラスの山でも、と思っていたがまだ体力的に歩ける自信がなかったので、今日も1000m以下の低山にした。しかし距離は長く7時間近い行程となる。陣馬山から北上し市道山・臼杵山と縦走、下山は臼杵山麓の盆堀集落に下りれば、早春の山里の雰囲気を楽しめそうである。
陣馬山山頂
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陣馬山から富士山
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陣馬登山口でバスを下り、すぐに右手の簡易舗装道路を登り始める。一ノ尾根は和田集落から近道を取ることも出来るが、それでは少々物足りない。尾根の末端から登ることにした。
民家の庭先には植栽の草花、そして道脇にはスミレも見かけるが数が少ない。昨年の今頃は花が異常に早く咲き、林道歩きの時点ですでに楽しめていたのだが、今はまだ冬のたたずまいである。
やがて舗装が尽き山道となる。最初は植林だがじきに落葉樹の雑木が現れる。以降植林と雑木を繰り返す感じだ。
「頑張れば富士が見える」「私の夢を陣馬の空に」など、地元の小学校の生徒によるプレートが立つ。3年前に上州の仙人ガ岳でも見たが実にほほえましい。
急登もなく、少しオーバーペース気味に歩を進める。沢井から上がってくる道は気づかなかった。頭上には青空を背景にダンコウバイの黄花も見られるが、まだ咲き出したばかりのようで少ない。
木の枝の間から富士山も大きく望める。やがて和田からの道を2本合わせると、足元には残雪も現れ始める。いつのまにか正面に陣馬山の頂上がぐんと近づいていた。
急な木段を上がり、2年ぶりの陣馬山山頂。富士山や丹沢の山々の眺めが素晴らしい。そして悪沢岳など南アルプス、御坂山塊、奥秩父や奥多摩の山々、さらには都心や横浜方面の町並みと、360度の展望を楽しむ。最近は展望の乏しい、渋めの山が続いていたのでよけい新鮮である。
まだ時間も早く人もまばらだ。茶店もまだ開店の準備をしている。静かな早春の山頂のひとときを味わう。
吊尾根
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さあ今日はまだ、ここまでほんの小手調べだ。アップダウンのある尾根歩きがこれから長く続く。まばらに雪の残る北斜面を下り和田峠へ。車道をまたいで薄暗い植林帯に突っ込む。
醍醐丸は巻くことも出来るが、今日はしっかりと山頂を踏んで行こう。
しかし醍醐丸直下は急傾斜の鉄砲登りとなってかなりきつい。それもそのはず、今日の予定コースの最高点はここ醍醐丸(867m)で、陣馬山・臼杵山よりも高いのである。
醍醐丸山頂からは大岳山の特徴ある姿が大きく望める。ここで生藤山への縦走路を分けるが、そちらのほうは少々雪が残っているようだ。
前後にはちらほら登山者も見かけるが、今日は年齢の高い人が目立つ。距離のあるコースなので、自分の体力を推し量りたい人が好んで歩くコースなのだろうか。
やがてマラソンでやってくる人ともすれ違った。ここは奥多摩の山岳耐久レースのコースともなっている。
マンサク
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ひとしきり下ると植林から脱し、気持ちよい自然林の尾根歩きに入る。ここ醍醐丸-市道山間の稜線は吊尾根とも呼ばれているが、歩いていて一番楽しい所である。
新緑の時期もすばらしく、三国山・生藤山から縦走してくるとしてもここが一番ハイライトな場所となるであろう。
少し進むと満開のマンサクの花を目の当たりにする。木は10本ほどでマンサクのトンネルというほどのところではないが、青空に黄色の花の色が映えてとても美しい。
マンサクの花は近づいて見てしまうと、「あ、遠目で見ておけばよかった」と思えるほどパッとしない形をしているが、冬枯れの林に最初に咲く樹の花なのでひときわ輝いて見えるものだ。
潤いに満ちた尾根歩きも終わり、再び暗い杉林帯へ。小さなアップダウンをいくつもこなし、市道山への最後の急登だ。
市道山山頂(795m)は狭くて展望もない。絵に描いたような地味な山、との印象が強いが、もうこれで4度目の登頂だ。しかも必ず先客がいる。今回も3人いて、後からまた3人登ってきた。意外と人気があるのか?なんとなくミステリアスな山でもある。
市道山から臼杵山までは大方が杉・檜の植林下を行く。しかも鞍部まで落っこちるように思いっきり下り、そのあとネチネチと登り返していくという一番体力を消耗するパターンである。
指導標には市道山から60分とあるが、これはかなり早足で行った場合で、実際はもう少しかかりそうだ。展望はほとんど木に隠されているが、時たま五日市方面の眺めが覗く。
臼杵山山頂
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荷田子峠から盆堀へ
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岩がちの急な登りを何度か繰り返し、ようやく三角点のある臼杵山南峰へ。さらに5分ほど進んで、臼杵神社(小さな祠)のある北峰にたどりつく。
2つの小さな狐(と思われる)像が新しく建立されている。ここは天蚕の神様を奉っている神社と聞く。
頂上は小広く、樹林が一角だけ伐採されて富士山が大きく望める。しかしすでに昼を回っているため、日に反射してほとんど見えない。
グミ尾根を下っていく。ここも行程の8割が植林の中である。ただ意外と展望の利く箇所もあって、右下に、採石工事でむき出しになった山の斜面も見えて来る。
ビル建設のための資材調達の場としていたしかたないのではあるが、醜い姿である。祝日なのに工事の音もやかましい。
荷田子峠に着く。北東面が伐採されていて展望がある。
ここは北側へは荷田子、南は盆堀、直進は城山方面と十字路になっていたはずだが、伐採によってどうやら若干道が付け替わったようだ。盆堀への分岐は荷田子への下降点からさらに20mほど進んだところにある。
盆堀への下りは暗い樹林の道。目立たない沢をまたぎ、道幅の狭い斜面をトラバースするとやがて民家の屋根が下に見えてくる。荷田子峠からほんの15分ほどである。
盆堀の集落に下り立つ。牛がのどかに鳴くほのぼのとした風景を思い描いていたが期待外れで、どこにでもあるような里の風景だった。40分ほどで沢戸橋バス停に着く。
山を下りた(脱した)時点からすでに花粉症の症状が出ていたが、車道に出るとさらにひどくなり、鼻水はとめどなく流れ落ちるわ、目を開けていられないわでもうどうしようもない状態となった。バス停前の食堂で一休みする気もおきない。
バスの中、帰りの青梅線の電車の中もさらに花粉は飛びまくっていて、家に帰って風呂に入るまでつらい時間は続いた。
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