~奥多摩屈指の紅葉の山~
タイトル
てんそざん(1723m)
2009年10月24日(土)曇り
調布IC-[中央自動車道]-八王子第2IC-[奥多摩街道、青梅街道、日原街道]-9:50八丁橋-10:20巡視道分岐-10:35雨量計-10:40大日神社-12:10天祖山13:00-14:05大日神社14:10-14:20巡視道分岐-14:50八丁橋-[日原街道、青梅街道他]-自宅 歩行時間:4時間15分
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晴れの天気予報に心躍らせ、車で早出した。しかし朝からどんよりとした曇り。
おまけに途中で眠気を催してきてしまい、たちまち登頂意欲減退。とりあえず古里駅近くのコンビニ駐車場で仮眠させてもらった。
1時間くらいして、少し頭がはっきりした。登らないまでも紅葉の様子は見ておきたいので、登山口近くの日原まで行ってみることにする。雲を透かして鈍い日の光が覗いてもいる。


ブナ黄葉

小川谷橋を渡って日原林道に入る。周囲は思った以上に色づいていたので、だんだんと登る気になってきた。
天祖山は昨年の同じ時期、今日と同じく車で来てこの林道を入っていったのだが、悪天のため引き返し、別の山(酉谷山)に変更した。このデコボコ林道はその時経験済みなので、ちょっとは気が楽だ。
しかし先日、会津の林道で脱輪した記憶が生々しく残っている。いつも以上に神経を集中して運転し、なんとか無事に登山口のある八丁橋に着く。すでに3台の車が停まっていた。

1,2分歩いたところの、表参道登山口から登り始める。石垣のつけられたジグザグの登りは急峻で高度感があり、今まで何件もの滑落事故が起きている。同じ日にこの場所で、2件の死亡事故が起こったこともある。

最初から急登
滑落しやすい斜面
艶やかな尾根道

下山中の事故が多いというが、登りも慎重に足元を確かめながら、ゆっくりと進む。こんな登山口が見えるところで滑落するとは、何とも無念なことである。

難所を過ぎ、孫惣谷側が見下ろせる尾根に出る。このあたりはまだ緑濃い。
決してなだらかでない登りを行くと、パイプで引かれた水場があった。水は出ていない。やがて水源林巡視道を分け、そのすぐ先で再び尾根に上がり、雨量計の立つ明るい場所に出た。
見上げると見事に紅葉したカエデの木。赤と黄色の対比が鮮やかだ。

雨量計からすぐ先に大日神社の建物がある。手入れがあまりなされていないらしく、所々板張りが外れたりしている。
建物の前の指導標には、手書きで「オオヒオオカミ」と書かれていた。オオヒとはちょっと意外な読み方であるが、本当なのだろうか。
また、登山ガイドによってはここを「大日天神」と書いているが、天神ではなく大神が正しいようである。

大日神社から先は、杉林の中の急登から始まる。
天祖山は、奥多摩の中でも急登の続く山で有名だ。登れど登れど急傾斜は続く。

やがてミズナラなど自然林が現れ始める。始めのうちは緑優勢だったが、高度を上げるにしたがって色づきがどんどん鮮やかになってきた。次第に急登が緩み、艶やかな紅葉トンネルが始まる。
樹皮が細かなうろこ状の巨木は、シオジだろうか。こちらの黄葉も見ごたえある。尾根は広がって踏み跡が判別しづらい。下りは注意が必要な箇所だろう。

尾根左右の葉の色づきを比べると、右側(東側、孫惣谷側)のほうが紅葉は進んでいる。左側はまだ緑が多い。同じ尾根でも場所によって気象条件の差がかなりあるようだ。

さらに高度を上げると黄葉真っ盛りのブナの森となる。奥多摩の紅葉で特に印象に残っているのは、2001年鷹ノ巣山浅間尾根、2004年三頭山、2005年雲取山ヨモギ尾根が上げられるが、この天祖山もひけをとらない。
山日和とは言えない空模様でも、色づきがこれだけよければあまり天候に左右されない。タワ尾根など、日原川流域の山稜は自然林が多く、やはり奥多摩の季節感溢れる自然美を満喫するなら、ここ日原がいい。

艶やかな尾根道

所々に小さい祠があり、信仰の山の名残がある。
また、右手下のほうから採掘の工事音も聞こえてくる。天祖山は奥武蔵の武甲山と同じく石灰の山。土曜日でも作業をする日もあるようだ。

さらに登ると、ダケカンバの白い幹が目立つようになる。こちらは落葉気味だ。
尾根は岩場状になる。浮き石も少なくないので注意が必要な場所だ。
樹林を透かして見上げる天祖山の頂稜部も、すぐそこまで近づいた。最後の登りはまた急登。再び紅葉のブナ、ミズナラを見る。スズタケの伸びる頂上直下の平坦地に出ると、さすがに葉の落ちた木ばかりになった。

社務所の横で登山者が数人、座っている。ここだけ樹木が刈られ、西面の見通しがよくなっていた。頂上の天祖神社までもうひと登り。9年ぶりの天祖山頂上に立つ。
広く開放的な地ではあるが樹林の中で、眺望はあまりない。適当なところで腰を下ろし、下のほうの紅葉を眺めながら小休止する。
もう10月下旬、山の上はずいぶん寒くなった。フリースを着込んでも、時たま通り過ぎる風にブルブルと体が震える。

先ほどの社務所の横まで下りる。切り開きのほうを見ると、何と富士山が見えるではないか。
こんな天気の日に見えるのも珍しいが、天祖山と言ったら、展望のない山の代名詞との印象があったので、意外な光景だった。
その富士山方向も、次第にガスが覆うようになってきた。天候はさらに下り坂である。そういえば、朝方聞いた天気予報は、夜から雨になる予報に変わっていた。

天祖神社
富士山が見える

来た道を戻ることにする。出発が予定通り早ければ、長沢背稜を回って水松山からバリエーションルートを下り周回するプランでいた。しかし10時少し前からの行動開始だったので、今日はこのまま往復コースとする。

紅葉がきれいだったと記憶していた場所を、あらためて写真に収めながら、ゆっくり下る。思いのほか長い下りだが、紅葉の美しさに慰められる。
空はさっきより一段暗くなってきたようだ。雨が降るかもしれない。朝は出ていなかった水場は、今度は出ていた。
事故の多い急勾配の場所に来る。気を引き締め一歩一歩、慎重に足を運ぶ。
たしかに、足任せでどんどん下りられるような場所ではない。今大きな地震が来たら、一巻の終わりではないか・・・そんな想像をすればするほど、姿勢はへっぴり腰になり、余計歩きにくくなってしまった。

ようやく安全な場所まで下りてこられた。八丁橋の登山口に戻る。
今日は温泉に立ち寄りせず、帰ることにする。高速が渋滞のようなので一般道を走る。予報より早く、まだ日のあるうちに雨が降ってきた。次第に運転に支障をきたすくらいのどしゃ降りとなる。
帰宅は8時を過ぎてしまった。


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