-大パノラマの山頂を目指して-
東日原-稲村岩尾根-鷹ノ巣山-浅間尾根-峰谷
奥多摩
東京都
鷹ノ巣山(1737m)
2010年2月7日(日) 快晴
11.2km
歩行時間 6時間45分
1168m(東日原-鷹ノ巣山)
三河屋(立ち寄り入浴)
中央線、青梅線、西東京バス
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2010年2月7日(日)
代々木駅 5:16
中央線
5:55 立川駅 6:04
青梅線(青梅駅乗換)
7:17 奥多摩駅 7:25
西東京バス
7:50 東日原 8:00
9:05 稲村岩基部 9:20
11:20 ヒルメシ食いのタワ 11:25
12:05 鷹ノ巣山 12:50
13:30 榧ノ木尾根分岐
14:00 鷹ノ巣山避難小屋
14:55 浅間神社
15:10 奥登山口
15:55 峰谷 16:20
西東京バス
16:50 奥多摩駅 18:34
三河屋立ち寄り
青梅線(青梅駅乗換)
19:48 立川駅 19:52
中央線特快
20:19 新宿駅


奥多摩町
日原観光案内
三河屋旅館


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前週の2日は、東京都心でも1センチの積雪を記録した。東京近郊の山もようやく白くなったことだろう。

今年の冬は何とかして、新潟県中越の低い山を輪カンで歩きたいと思っている。低いといっても東京近郊の低山とは訳が違う。つい先日も猿毛岳という300m台の山で遭難があったばかりである。
好天であることが第一条件なのだが、なかなかこの地方は晴れてくれない。ましてや土日に山日和になってくれるのは、奇跡に近いかもしれない。それでもいつの日か行けることを祈って、今は奥多摩の比較的高い山に登り、輪カンに慣れておきたい。


直登が続く、雪の稲村岩尾根

雪の季節の稲村岩尾根は、下りにとったことはあるが登りはない。かなりきつい行程になることは百も承知で、登ってみることにした。

立川駅で乗った青梅線は、青梅駅で乗り換えとなる。ここから先は山間地で、乗降ドアは数年前からボタンによる個別開閉式になった。そのため、今の季節は外気の進入で寒さに震えることがなくなった。
以前は、停車駅で列車の交換待ちに5分間もドアが開きっぱなし、なんてのが当たり前だった。これが早朝の便だと、車内はそれこそ山の上より寒くなる。

稲村岩が迫る
巳ノ戸沢は薄雪
ヒルメシ食いのタワ
一気に広がる展望
白い山頂

奥多摩駅から東日原行きのバスに乗る。乗客はまばらだった。バスの中で「奥多摩の山と自然」のHgさんと偶然お会いした。今までも御坂や奥秩父の山で会っていたが、奥多摩では6年前、駅前のそば屋で会って以来である。今日は横篶尾根経由で川苔山の百尋ノ滝まで行くとのこと。さすが健脚のHgさんだ。
そういう自分も、今日のコースは久しぶりに大きなエネルギーを使うことになりそうである。

東日原バス停から正面の稲村岩目指して、車道を進む。登山口から巳ノ戸川に下っていく。体調のよさを感じ、どんどん歩が進む。しかしそういう日はオーバーペースになりやすいのでじっくり行かねばならない。
沢を高巻く道、沢沿いともすでに雪の道となる。途中でアイゼンの準備をしている人がいたが、自分はそのまま進む。
やがて稲村岩の基部に上がるジグザグの斜面に取り付く。高度を上げるにつれ積雪が増えていく。凍結はしていないのだが、雪上に足跡はひとつしかなく、それもかなり谷側についている。

さっきアイゼンを付けていた人がすぐ後ろに追いついてきた。「雪庇になっているところを踏んだらアウトだね」この言葉に緊張する。ここは急斜面で、万一滑ったら止まらない。付いている足跡を信用して足を置いたとたん、雪が崩れでもしたらおしまいだ。なるべく山側に自ら足跡を付けながら、一歩一歩行く。それでもいつの間にか谷側に体が向いてしまい、後ろの人に注意される。恐ろしくて足がなかなか前に出ない。
後ろの人に申し訳ないぐらい長い時間をかけ、なんとか稲村岩基部に到達する。緊張から解放され、大木の根元にへたり込んでしまった。やはり雪山は恐ろしい。登りはじめにアイゼンを装着しなかったのが、甘く見ていた証拠だ。
急登の続く稲村岩尾根はここからが本番なのだが、もう今日の半分くらいの体力を使ってしまった。しかし今の恐怖の斜面を引き返すのは、心理的にも技術的にも無理だ。先に進むしかない。

アイゼンをつけ、ダブルストックで歩き出す。積雪は30cm位。時折ものすごい風が雪を巻き上げ、まるで地吹雪のようになる。昨日の風はもっとすごかったらしい。さっきの急斜面で足跡があまり見えなかったのは、風が消してしまったということもあったのだろう。
初めのうちは日が差し込んでくる場所もあったが、やはり北斜面の急峻な尾根である。以後お日様を見ることもなく、寒々しい我慢の登りが続く。しかし、冬木立の雪道なので、開放的で意外と明るい。
振り返ればミズナラやブナの自然林越しに、都県境尾根の稜線が覗いていた。

富士山
大岳山もくっきり
輪カン
避難小屋を後に
樹影が伸びる
右手に見える八丁山の標高は1280m。自分のいる位置もそれとほぼ同じになった。東日原からもう700m以上の高度を稼いだことになる。しかし鷹ノ巣山まではまだ450mもある。
やがてその八丁山も見下ろす位置になり、代わって今度は、同じ稜線上のお伊勢山(1338m)、そしてその奥に頭をもたげ始めた天祖山(標高1723m)を目で追うようになる。遠くで銃の乾いた音が聞こえた。ハンターが入っているようだ。

やや傾斜が緩くなったところで一休み。上部に迫る1562mピークを越えたあたりが、ヒルメシ食いのタワだろう。しかしここからの登りが長かった。荷物の重さにめげて、何度も立ち止まり息を整える。積雪もさらに増したようだ。道はよく、さっきの急斜面のような危険な場所が全くないのが救いである。
いくつものニセピークにだまされ、ようやく1562mの先、平坦なヒルメシ食いのタワにたどり着く。
昔、仕事でこの尾根を登った人は、ここでお昼となり飯を食ったのだろう。自分の場合は、いつもならここを10時半くらいには通過しているのだが、今日は別。ここまで1時間近く余計にかかっている。

休憩ののち、ほっとするような平坦道を進む。しかしすぐに再びの急登。それでも、両側に枯れた篠竹が見られるようになると山頂は近い。
視線を上げ、鷹ノ巣山の山の形がわかるようになる頃、稜線から太陽が顔を出した。ずいぶん久しぶりの再会のような気がする。道が山をやや西側から回り込んで行くうちに、前方がパッと開ける。一面の雪原に立つ山頂標識と三角点標石。東日原から4時間、鷹ノ巣山山頂に達した。
雲ひとつない青空、前方に広がる奥多摩や御坂、大菩薩の山並み。丹沢山塊もよく見える。そしてそれらを纏め上げるかのように富士山が真正面に位置する。見慣れた眺めだが、雪の稲村岩尾根を登ってきた目には感動もひとしおである。
左(東)には御前山、大岳山の先に広大な関東平野、右にはもちろん南アルプスの白いラインがまぶしい。12時を過ぎているのに、まだこれほどすばらしい眺めが得られる日は珍しい。今までのつらい登りが一気に報われる。
登ってきた北斜面はまだ風の音が止まないが、山頂の南面は日当たりがよく、土が見えているところもある。そこに腰を下ろし休憩する。

時間が早ければ、千本ツツジの方へ輪カンを試しに行きたかったが、ちょっと時間が足りない。でもせっかく持ってきたので、鷹ノ巣山の緩やかな東斜面で使ってみることにした。輪カンを使うのは2度目で、前回は外れたりして満足に歩けなかった。今回は装着の予習をしてきたので大丈夫。
積雪30cmくらいの雪面に足を置くと、少し潜ってしまう。体重が重いのかもしれないが、やはりスノーシューのようにすいすいとはいかないようだ。

奥登山口に下りる
峰谷へ

石尾根の広々とした雪原まで下り、巻き道に入る。倉戸山方面の道を分けて戻るように巻き道をたどってから、峰谷に下山する。輪カンからアイゼンに履き替えたが、水分の多い雪で歩きにくい。もしかしたらこういうベチャベチャした雪には輪カンのほうがいいのかもしれない。もっとも南斜面は積雪量も少ないので、結局途中でアイゼンも外した。

鷹ノ巣山避難小屋から浅間尾根に入る。下るほどに雪は減り、暖かさが戻ってくる。木々の間から富士山が見える。今日は雲ももやも出ない、完璧なまでの快晴の天気だっだ。尾根がなだらかになる頃には日もだんだんと傾き始め、ミズナラの長い樹影が雪面に何本も映し出されていた。
奥集落の登山口に下り立つと何台もの車。登山者のものではなく狩猟のグループが集っているようだ。傍らに撃たれたイノシシが横たわっていた。
民家の井戸水を一杯いただき、静かな山里を眺めながら峰谷に下った。