~緑の尾根を彩るツツジ~
|
|
奥多摩駅からのバスは満員。小河内神社あたりですくだろうと思っていたら、結局混雑のまま終点の峰谷へ。バスのなかを立ったままここまで来たのは初めてである。6月の鷹ノ巣山、石尾根は人気なのだなあと実感する。 グループの人達は比較的のんびり、靴紐を結び直したりしている。ソロの人はバスを降りるやいなや、何かに追い立てられるようにすぐ歩き出す。靴紐などの準備はバスの中でもう済ませているのだ。 峰谷集落を過ぎ、民家の軒先を縫って眺めのいい奥集落に出る。薄雲を通して降り注いでくる日差しはギラギラとして、深緑の山肌に濃淡の色付きを施している。 奥多摩の山はすっかり、初夏の装いに衣替えしていた。
登山口には何台もの車が停まっている。今日のコースは勝手知ったる道で、奥多摩で一番歩いている道である。しかし今の季節は東北など他の山に行っていることが多いので、意外となじみが薄い。 今回も、土日で北東北の和賀岳・真昼岳に行くつもりでバスのチケットも予約していたが、天気予報が思わしくなかったので直前でキャンセルした。 奥多摩の石尾根も、6月中旬はツツジが見頃となる。今回はどうだろうか。今年は全体的に開花時期が少し後ろにずれているので、ピークには早すぎたかもしれない。 浅間神社を過ぎカラマツ・ヒノキの植林帯を登り切ると広葉樹豊かな森となる。見渡す限りの緑の回廊。ところどころに真紅のヤマツツジが彩りを添えている。 浅間尾根は新緑・紅葉の時期が一番だが、今の初夏の時期も森の深さを味わえる秀逸のコースとなる。藪もなくすっきりした山の散歩道だ。
なだらかな道が少しきつめの坂に変わると尾根がやせてきて、やがて前方に日陰名栗ノ峰が見えてくる。石尾根の緑の稜線が鮮やかに、青い空とコントラストを際立たせている。 水場で水を汲み、左折する。ここから鷹ノ巣山避難小屋までの短い距離の間はかなり伐採が入り、すっかり明るくなった。避難小屋前のツツジも花を付け始めている。 鷹ノ巣山への防火帯を登る。高度を上げるほどに背後の広い眺めがせりあがっていく。大菩薩嶺、雲取山や奥秩父の山がよく見えるが、富士山は霞んで、今にも薄青の空の中に消えてしまいそう。 富士山の雪はずいぶん減り、線状になってきている。頂上直下の大木は葉のつき方からケヤキであろうか。 10名ほどの登山者が憩う鷹ノ巣山頂上に到着。浅間尾根、榧ノ木尾根ともに緑鮮やかだ。御前山や大岳山もよく見えている。春夏秋冬、どの季節も似合う山である。 さあ、今日はこれからちょっとした長丁場。避難小屋に戻って西進する。マルバダケブキの葉が伸びる稜線に乗り、急坂を登る。今日は山菜採りの人が多い。 やがて周囲は草原状態になる。振り返ると鷹ノ巣山のゆったりした姿、そして眼下には奥多摩湖が少しだけ見える。虫が多いので休憩せずさらに登り、日陰名栗ノ峰(1725m)のピークを越す。 このあたりから稜線にはツツジが多く見られるようになる。まだ蕾が多いヤマツツジは下部の樹林帯で見るよりも朱色がかっていて、別の種類のように見える。 そして鷹ノ巣山でも見られた濃紫のトウゴクミツバツツジ。こちらは開花のピークを少し過ぎているようだ。ツツジが咲いていると周囲がパッと華やぐ。特に、この朱色と濃紫色が並んで咲いているのを見るとちょっと得した気分になる。
高丸山は巻いて、次の千本ツツジ手前から再び防火帯に入る。 千本ツツジ山頂(1704m)付近もツツジが多く咲く。しかし目を見張るほどの咲きぶりではない。ヤマツツジはやはり1週間後のほうがよさそうだ。ツツジの他にはズミの白花がきれいに咲いている。 天気はどんどん悪くなり、もはや青空はない。七ツ石山に行く前にいったん巻き道のほうに下りてみる。千本ツツジ付近は巻き道のほうもツツジが多く見られる。 七ツ石山に着くと、雲取山方面には大きな黒い雲がたれこめていた。もしかしたらあちら方面は雨が降ってるのかもしれない。七ツ石山も人が多い。今日はこのまま雲取山方面へ縦走する人が多そうだ。 ふと、携帯でニュースを見てみる。すると岩手・宮城県境で大きな地震が発生したとのこと。橋の落下、道路の陥没などかなりの被害が出ているようだ。もし和賀岳に行っていたらどうなっていただろうか。 前回の新潟のこともあり、ちょっと恐ろしくなった(2003年の新潟中越地震の日は会津の志津倉山に登っていた。会津若松駅前の食堂で震度5の揺れを体験している)。 帰りのバスまで時間があるので、来た道を引き返さずに、ブナ坂のほうから鴨沢へ下山することにした。巻き道も気持ちのよい緑の回廊で、サラサドウダンを時々見かける。 七ツ石分岐を過ぎ堂所。こんな時間でも、登ってくる人が多い。今日の雲取山荘は盛況のようだ。自分も今日は泊まりでもよかった。ちょっと後ろ髪を引かれながら下っていく。 堂所から先、小袖登山口までの杉の植林下には、あちこちでフタリシズカが群落をなしている。 鴨沢には4時半の到着となった。下界に下りると山の上は涼しかったことが実感される。歩行7時間と、けっこう充実した1日だった。 |